2013年7月27日土曜日

バルカン半島のプレフェランス

セルビア,クロアチアなどで遊ばれています.プレフェランスの原型に近いという説があります.情報源は,“pravila preferansa (プレフェランスのルール)”の検索結果のうちセルビア語,クロアチア語のページの機械翻訳,および ipref (www.ipref.com) のクライアントの挙動なので,セルビアのルールに偏っているかもしれません.

人数とカード


3~4 人.4 人の時は,カードを配る人が抜けます.

4 つの印ごとに 8 枚の 32 枚組.セルビアではフランス風とハンガリー風の両方を,クロアチア北部では,ハンガリー風のトランプを主に使います.アドリア海沿岸では,イタリア風のトランプを使います.印は,上から順に,ハンガリー風では,どんぐり,赤(ハート),かぼちゃ(鈴),緑(葉),フランス風では,クラブ,ハート,ダイヤ,スペード,イタリア風では,棒,剣,金貨,杯です.カードの強さは,強い順に,ハンガリー風では 2,王,上,下,10~7,フランス風では 1,王,妃,召使,10~7,イタリア風では 1,王,馬,召使,7~4 です.

カードを配る


最初にカードを配る人は好きな方法で決めます.そのあとは反時計回りに交代で務めます.

配り手は,カードをシャッフルし,左隣の人にカットしてもらってから,手札 10 枚,山札 2 枚を,右隣の人から反時計回りに,手札を 5 枚ずつ,山札 2 枚,手札 5 枚ずつの順で配ります.席順は,配り手の右隣が一番早い 1 番手で,ついで反時計回りに 2 番手,3 番手となります.

せり


せりでは,ゲームの目標を言います.目標は,下から上の順に,
  • “2 (dva)”: 緑/スペード/杯を切札にして 6 勝以上する.
  • “3 (tri)”: かぼちゃ/ダイヤ/金貨を切札にして 6 勝以上する.
  • “4 (četiri)”: 赤/ハート/剣を切札にして 6 勝以上する.
  • “5 (pet)”: どんぐり/クラブ/棒を切札にして 6 勝以上する.
  • “6 (šest)”: 切札なしで全敗する.“ベトル (betl)”といいます.
  • “7 (sedam)”: 切札なしで 6 勝以上する.親の左隣が最初の先手.セルビアでは“サンス (sans)”,クロアチアでは“サナツ (sanac)”といいます.
  • “プレー (igra)”: 山札を使わない.他の目標を言ったら言えず,これを言ったら他の目標は言えないので,最初の機会にいう必要があります.igra は,セルビア語,クロアチア語で (ロシア語でも) “遊び,遊ぶこと”の意味です.

1 番手がせりを始めます.ここで言えるのは“2”,“プレー”,“パス”のいずれかです.目標が手にあわなくても,せりに勝った後で言い直せます.

ついで,反時計回りに,残りが 1 人になるまで,せりをつづけます.せりに残るためには,最新の目標を後の番手が言った場合,それを繰り返して,“自分も何々”,“同じく…何々(moje …)”と言い,前の番手が言った場合,それより 1 つ上の目標を言います.“プレー”だけは,順番を飛び越してもよく,また番手に関係なく前の人が“プレー”でも言えます.ただし,“2”の“プレー”を目指している人は,先に“プレー”を言われたらせりから下りるべきだという人もいます.せりに残る目標が言えないときは,“パス (dalje)”と言って,せりから下りなければなりません.

“プレー”に対しては,数字を言っていなければ“プレー”と言えます.複数の人が“プレー”を言ったら,ゲームの種類を順番に言い,目標の順で上の人がせりに勝ちます.先に言われた種類に勝てなかったら,“パス”を言わなければなりません.2 人以上が同じ種類を言うのはまれなので,この場合のルールは定説がありません.先の人の勝ちとする人も,後の人の勝ちとする人もいます.“プレー”の“6”,“7”は,最初から“プレー”でなく,“ベトル”,“サンス” (セルビア語.クロアチア語では“サナツ”.以下同様) と言います.

せりで全員がパスしたら,配り手を交代して配り直すだけでなく,帽子の下に入った人がいなければ,各人のスコアシートの自分の欄に 1 つずつ,レファという欄を横断する横線を書き込みます.レファを持つ人が親になると,すべての点数が倍になります.レファで点数を倍にしたときに,短い斜線でレファを消します.レファの回数には,はじめの点数 30 点につき 1 回などの上限を設定します.

親と子の宣言


最後までせりに残った人が,親になります.残りの 2 人は子となり,協力して子の目標を目指します.2 人の子の利害が合わなくても,子の協力を優先しなければなりません.例えば,次が親のときは弱いカード,子のときは強いカードを先手で出す,もうひとりの子が勝っている勝負を奪わないなどのマナーがありますが,ルールではありません.

親は,せりで“プレー”を言わなかったときは,2 枚の山札を公開してから手札に加え,不要札を 2 枚伏せて捨てます.ついで,“プレー”でゲームの種類を言った場合を除き,親は,せり落とした以上 (最後に言ったゲームの種類も含みます) のゲームの種類を宣言します.切札は数字,それ以外は名前で言います.セルビアでは,“プレー”でせりに勝った人は,“ベトル”,“サンス”は宣言できません.クロアチアでは,“プレー”でせりに勝った人が,“ベトル”,“サンス”を宣言することを認める人もいます.

宣言が切札か“サンス”の場合,子は,親の右隣から順に,カード勝負に“出る (dođem, pratim)”か“下りる (ne dođem, ne pratim)”か言います.出る子は,子が 2 人なら 4 勝,1 人なら 2 勝を目指します.2 人とも下りた場合,カード勝負なしに親が 10 回全勝したものとして,点数計算を行います.1 人しか出ない場合,出る子は,1 人で出て ([idem] sam) 親と 2 人でカード勝負を行うか,下りた子を連れて出て (idemo zajedno) 3 人でカード勝負を行うか選べます.連れられて出た子には,点数の授受はありません.

出た子が親の目標達成を阻止できると考える場合,子が出る下りるを言い終わった後,1 回目の手札が出る前に“コントラ”といえます.2 人とも出たときは,親の右隣から順に,コントラする (kontra) かしない (može) か言います.コントラをいった子は,もう一人の子が出たか下りたかに関わらず,もう一人の子を連れて出た扱いになります.コントラは,すべての点数を 2 倍にします.

コントラを言われたとき,目標を達成できると考える親は,コントラ後 1 回目の手札が出る前に“レコントラ”といえます.レコントラは,すべての点数を 4 倍にします.レコントラを言われても,コントラを言った子は,もう 1 人の子を連れて出たことになります.レコントラ以上の子と親の倍の掛け合いも認められます.参考までに,レコントラに対抗する子は“スブコントラ”,それに対抗する親は“モルトコントラ”と言います.

“プレー”でない“2”にレファもコントラもないときは,カード勝負を行わない人がいます.例えば,セルビアでは,レファが配れる状態なら,レファを配り,配り手を交代して配り直します.レファが配れない場合,親が帽子の下なら,親が 10 回全勝したものと見なして点数計算し,そうでなければ,何もせずに配り手を交代して配り直します.レファが配れない場合,親の帽子の状態に関係なく,親を 10 回全勝とみなす人もいます.

カード勝負


10 枚の手札で 10 回の勝負を行います.最初の回は 1 番手,2 回目以降は直前の回の勝者が,先手になります.サンスの場合,親の左隣の人が最初の回の先手です.先手は,手札から 1 枚を表に向け場に出します.先手の右隣から順に,反時計回りに,全員が 1 枚ずつ手札を表向きに場に出します.このとき,先手と同じ印の手札があるなら,出さなければなりません.先手と同じ印の手札がなく,切札がある場合,切札を出さなければなりません.一番強い切札,切札がでなかったときは,先手の印で一番強いカードを出した人が,1 回の勝負に勝ちます.

子が 5 回勝ったら,手を直ちに終了し,子が 5 勝したものとみなして点数計算を行います.

点数計算


1 人に 1 枚ずつスコアシートを用意します.スコアシートには,全員分の欄を作成します.中央は自分の欄で,目標達成/失敗に伴う点を,左右は他人の欄で,左右に座る人からもらった点を記入します.欄は縦長にし,点数を更新するときは,最新の値を下に書き加えます.

ゲーム開始前に,全員の自分の欄に,30 点,60 点,100 点,120 点,150 点など事前に決めた点数を記入します.3 人の 100 点のゲームは,約 2 時間かかります.3 人の自分の欄の合計が 0 点になったらゲームを終了します.

点数計算には,ゲーム点を使います.ゲーム点は,親が宣言したゲームの種類の数字の倍で,緑/スペードから順に,4,6,8,10,12,14 となります.“プレー”の場合,2 を加えます.これに,コントラ,レコントラなどと親のレファによる倍をすべて掛けあわせます.例外として,親も子も目標を達成し,全員の自分の欄の合計がゲーム点より低い場合,ゲーム点を全員の自分の欄の合計まで切り下げます.

親が宣言した目標を達成したら,スコアシートの自分の欄からゲーム点を引きます.この結果自分の欄がゼロ以下になったら“∩”(帽子) を書いてから,その下に点を符合なしに書きます.帽子の下では,自分の欄へのすべての足し引きを逆にします.親が宣言した目標を達成しなかったら,スコアシートの自分の欄にゲーム点を足します.この結果,帽子の下の値がマイナスになったら,プラスに戻って帽子が外れたことを示すために“∪”(逆さの帽子) を書いてから,その下に点を符号なしに書きます.

切札ありかサンスの場合,出た子が 2 人の場合,子 2 人で合計 4 勝未満なら,2 勝できなかった子は,スコアシートの自分の欄にゲーム点を足します.出た子が 1 人の場合,他の子を連れなかったら 2 勝未満,連れたら子側で合計 4 勝未満なら,出た子は,スコアシートの自分の欄にゲーム点を足します.

切札ありかサンスの場合,出た子は,“ゲーム点×勝ち数”をスコアシートの親の欄に足します.下りた子を連れて出た場合,子 2 人の勝ち数は,連れて出た子 1 人のものになります.ベトルの場合,親が失敗したときに限り,子 2 人が,それぞれのスコアシートの親の欄に“ゲーム点×5”を足します.

成績は,帽子の下なら“もらった点の合計-あげた点の合計+自分の欄×10”,そうでなければ“もらった点の合計-あげた点の合計-自分の欄×10”です.全員が途中でゲームをやめることに合意したときは,自分の欄の合計が 0 になるように全員の自分の欄から同じ点数を引いてから,成績を計算します.全員の自分の欄の合計が人数で割り切れないときは,自分の欄が大きい人が端数を分け合います.3 人の場合,端数が 1 なら,自分の欄が一番大きい人から 1 点引き,2 なら,自分の欄が一番大きい人と 2 番目に大きい人から 1 点ずつ引きます.

バリエーション


子が 1 人で出るとき,何勝できるか見込みを言い,親がそれを認めたら,カード勝負なしに点数計算を行う人がいます.

コントラがあったベトルに親が成功したとき,コントラを言った子は,親が自分の欄から引いたのと同じ点を自分の欄に足すとする人がいます.

最後の手に親が失敗したら,親が自分の欄に足す点を倍にする人がいます.このとき,他の点は倍にしません.

主にセルビアで,“7”の上に,親の左隣を最初の先手にして,切札なしで全勝を目指す“8 (osam)”という目標を認める人がいます.“プレフェランス”といいます.“プレー”の場合のせりと宣言のルールは,ベトル,サンスと合わせます.ゲーム点は 16 点,“プレー”なら 18 点で,子は親が失敗したとき,親の欄に“ゲーム点×5”を足します.

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