2013年7月29日月曜日

ウルティ

ハンガリーを代表するゲームです.強力な手を作れる反面次の人を利さないように注意する必要がある手札交換,自由度の高いせりのシステム,組み合わせ目標を個別に採点する得点システムなど魅力的な要素が多いです.参考資料は,次の 3 つです.
  • 英語とハンガリー語の Wikipedia の記事 (ハンガリー語は読めないので得点表だけ見ました)
  • "Rules of Ulti (Modified 4M standard) Recorded by Csaba Biro"
  • www.pagat.net の記事. 

(2013.7.30) パスしてもせりに参加できることがわかりやすい書き方に改めました. 配り方の表現が断定的すぎたので,さまざまなバリエーションがあることがわかる表現に改めました.スブコントラより上のコントラの間違いを直しました.

人数と道具


3 人.ハンガリー風の 32 枚組のカード.手に入らないときは,4 つの印ごとに A, K, Q, J, 10, 9, 8, 7 の 32 枚で代用できます.

ハンガリー風のトランプは,もともと同じ国だったオーストリア,旧ユーゴスラビア,ルーマニアの一部などでも広く使われています.4 つの印は,ハンガリー語では,ハートの型が赤,鈴の形がかぼちゃ,葉の形が緑,どんぐりの形はそのままどんぐりを意味する言葉で呼びます.カードの位は,強い順に,切札があるときは,2 (A),X (10),王 (K),上 (Q),下 (J),IX (9),VIII (8),VII (7),ないときは,2 (A),王 (K),上 (Q),下 (J),X (10),IX (9),VIII (8),VII (7) です.切札があるときは,カード点があり,2 (A) と X (10) が各 1 枚 10 点,10 回目のカード勝負に勝つと 10 点,手札に同じ印の王 (K) と 上 (Q) のペアがあると,切札は 40 点,それ以外は 20 点です.

カードを配る


最初にカードを配る人は,好きな方法で決めます.以後は,反時計回りに順番に交代します.配り手は,カードをシャッフルし,左隣の人に渡します.左隣の人は,カットするか,カードの山に軽く触れます.右隣のひとから反時計回りに,全員に 5 枚ずつ,右隣りに 7 枚,後の 2 人に 5 枚ずつと配ります.カットしたときは,12枚,10枚,10枚,しなかったときは,はじめだけ 7 枚,あとは 5 枚ずつという配り方もあります.1〜2枚に細かく分けて配ることを勧める人もいます.

せり


せりでは,カード勝負で達成する目標をいいます.目標は組み合わせられます.また,最後に言われたものより上なら何でもよく,VII (7) を持っていないときのウルティなど,達成不可能な目標を言うことも,目指す目標と無関係なことを途中でいうことも認められます.

配り手の右隣の人は,12 枚の手札から 2 枚の不要札を伏せて場に捨ててから目標とするゲーム種別をいいます.ついで,反時計回りで順番に,目標を言いたければ,伏せられた 2 枚のカードを手に入れ,不要な 2 枚を伏せて捨ててから,先に言われたものより上の目標をいいます.目標を言いたくなければ,伏せられた 2 枚の札を次の人に伏せたまま渡します.目標を言わなくても,せりが続く限り,後の自分の順番に言えます.3 人が続けて目標を言わなかったら,せりは終了です.最後に目標を言った人が,それを自らの宣言として親になり,残りの 2 人が子になります.親は,赤以外を切札にする場合,切札にする印を言います.

最低の目標である赤以外のゲーム (パス,パルティ) で立った親は,この時点で,勝負せずに下りることができます.このとき,親は,2 人の子に 2 点ずつ渡します.この下りを任意でなく強制にする人もいます.

目標


せりで言える目標と点数は,次のとおりです.“40-100”と“ゲーム”のように,ある目標を達成すると必ず達成できる目標や,切札ありと切札なしのように相反する目標でなければ,自由に組み合わせられます.せりでの上下は,合計点の大小で比べ,同点の場合,目標数が少ない方を上とします.例外として,“40-100 とドゥルヒマルシュ (4+6=10)”と“ウルティとドゥルヒマルシュ (4+6=10)”は,“赤のウルティ (8+2=10)”と“赤の 2 (A) 4 枚 (8+2=10)”と同点でなく上とみなす人がいます.また,目標数を比べないで合計点だけを比べる人もいます.目標数を比べず,“ゲーム”の 1~2 点を除いた合計点だけを比べ,同点の場合,“ゲーム”の点を足して比べる人もいます.

(1) 切札ありの目標


切札がある目標は,赤を切札にする“赤の(目標名)”と,それ以外を切札にする“(目標名)”があり,“赤の”は点数が倍になります.目標の組み合わせをいうとき,目標ごとに“赤の”を繰り返す必要はありません.

  • ゲーム (パス,パルティともいう).1 点.カード点で子に勝つ.ペアのカード点だけで勝つことは認められず,少なくとも 1 回はカード勝負に勝たなくてはいけません.親が捨てた 2 枚のカードの点は子のものです.“ウルティ”,“2 (A) 4 枚”以外の目標がある組み合わせとは複合しません.
  • ウルティ (ウルティモ).4 点.10 回目のカード勝負に最低の切札 VII (7) で勝つ.単独では言えません.“2 (A) 4 枚”を認める場合,ともに単独で言えない“2 (A) 4 枚”との組み合わせでは,他の目標も組み合わせる必要があります.“ゲーム”との組み合わせは,省略して“ウルティ”といいます.ウルティを宣言した親は,ルールの許す限り,切札の VII (7) を手に持ち続けなければなりません.ウルティに失敗した場合,この 4 点の他にペナルティとして 4 点を失います.このペナルティには,赤の倍は適用されますが,ウルティへのコントラの倍は適用されません.
  • 40-100 (しじゅうひゃく,よんじゅうひゃく).4 点.切札のペア 40 点以外のペア点を認めないで,カード点を 100 点以上取る.
  • 20-100 (にじゅうひゃく).8 点.親の 20 ひと組以外のペア点を認めないで,カード点を 100 点以上取る.
  • ドゥルヒマルシュ.6 点.全勝する.切札ありの場合,他の目標と組み合わさないといけないとする人もいます.7 点にする人もいます.
  • オープンドゥルヒマルシュ.赤でも赤以外でも 24 点.1 回目のカード勝負が終わったら,全員が手札を公開する条件で,全勝する.なお,2 人の子は作戦を議論してはいけません.赤以外が切札のときは 12 点にする人もいます.切札ありの場合,他の目標と組み合わさないといけないとする人もいます.手札を公開するのは親だけにする人もいます.

つぎの目標を認める人もいます.

  • 2 (A) 4 枚.4 点.4 枚の 2 (A) をとる.単独では言えません.ともに単独で言えない“ウルティ”との組み合わせでは,他の目標も組み合わせる必要があります.“ゲーム”との組み合わせは,省略して“2 (A) 4 枚”といいます.ドゥルヒマルシュとは複合しません.

(2) 切札なしの目標

全勝または全敗を目指します.同じ内容で点数が倍になる目標があります.倍の目標は,切札がないにも関わらず“赤の”と言う人がいます.また,切札ありのドゥルヒマルシュと同じように,手札の公開が選べます.手札を公開すると,点数が 4 倍になります.

  • ベトリ.5 点.全敗する.
  • レベトリまたは赤のベトリ.10 点.全敗する.ベトリと点数以外の違いはありません.点数が倍になるので,切札がないのに“赤の…”と言うことがあります.
  • オープンベトリ.20 点.1 回目のカード勝負が終わったら,全員が手札を公開する条件で,全敗する.なお,2 人の子は作戦を議論してはいけません.手札を公開するのは親だけにする人もいます.
  • ドゥルヒマルシュ.6 点.全勝する.
  • レドゥルヒマルシュ.12 点.全勝する.ドゥルヒマルシュと点数以外の違いはありません.
  • オープンドゥルヒマルシュ.24 点.1 回目のカード勝負が終わったら,全員が手札を公開する条件で,全勝する.なお,2 人の子は作戦を議論してはいけません.切札ありのオープンドゥルヒマルシュを 12 点にする場合,せりで,切札の有無を言わなければなりません.手札を公開するのは親だけにする人もいます.

カード勝負


10 枚の手札で 10 回のカード勝負を行います.1 回目は親が,2 回目以降は,直前のカード勝負の勝者が,先手になります.先手は,手札を 1 枚表にして場に置きます.ついで,反時計回りに順番に 1 枚ずつ手札を表にして場に置きます.このとき,先手と印が同じ手札があれば出さなければなりません.そうでない場合,切札があれば出さなければなりません.さらに,このルールが許す範囲で,すでに場に出てるカードに勝てる手札があれば出さなければなりません.一番強い切札,切札が出なかった場合,先手の印で一番強いカードを出した人がその回のカード勝負に勝ちます.勝った人は,カード勝負に出された 3 枚のカードを自分の手元にまとめておきます.切札がある場合,勝った人は,カード勝負に出た 2 (A) と X (10) 1 枚につきカード点 10 点を得ます.10 回目のカード勝負に勝った人は,10 点のカード点を得ます.

ペアの宣言


切札があり,100 か全勝系の目標が宣言されていない場合,同じ印の王 (K) と上 (Q) のペアを持っている人は,1 回目のカード勝負にカードを出すときに,切札のペアなら“40”,切札以外のペアなら“20”ということで,言っただけのカード点を得ます.ペアを構成するカードを公開する必要も,場に出す必要もありません.なお,複数のペアがある場合,点数を足しあわせず,“40 と 20”,“20 ふた組”のようにいいます.

コントラ


子は,1 回目のカード勝負に手札を出すとき,親の宣言のうち破れると思う目標に対してコントラと言えます.例えば,“40-100 とドゥルヒマルシュにコントラ”です.親は,1 回目のカード勝負に 3 人がカードを出し終わったとき,コントラを言われた目標のうち対抗できると考えるものに対してレコントラと言えます.例えば,“40-100 にレコントラ”です.実戦ではまれですが,レコントラより上の応酬も認められ,子のスブコントラ,親のモルドコントラ,子のヒルシュコントラ,親のフェダーク・シャーリなどと続きます.最後のフェダーク・シャーリは有名なオペラ歌手の名で,その場で思いついた言葉を言ったのが定着したらしいです.これらを言うたびに,コントラは 2 倍,レコントラは 4 倍,スブコントラは 8 倍,ヒルシュコントラは 16 倍のように,指定した目標に関する点数が倍になります.この倍は,切札ありの場合,どちらの子が言っても両方の子と親の間に,切札なしの場合,言った子と親の間の点数授受に適用されます.

1 回目のカード勝負の勝者は,レコントラやそれ以上の倍が終わるのを待ってから,場に出たカードを回収し,2 回目のカード勝負に入ります.

出来役


ベトリ以外の手で,親が宣言していない目標を親か子が達成したら,達成した側が以下の点を得ます.赤が切札のときは倍になります.ベトリの他に,ドゥルヒマルシュでも認めない人がいます.

  • 黙ってウルティ.2 点.10 回目のカード勝負に切札の VII (7) を出して勝ったとき.また,10 回目のカード勝負に切札の VII (7) を出して負けたら,その人が他の 2 人に対して 1 人あたり 4 点を払います.子が失敗した場合,精算を親子間でなく,失敗した子と他の 2 人で行うことに注意してください.
  • 黙って 100.2 点.カード点で 100 点以上取ったとき.ペアによる 40,20 の点がいくつあっても構いません.“ゲーム”の点を置き換えます.ゲームへのコントラが効くとする人がいます.
  • 黙ってドゥルヒマルシュ.3 点.全勝したとき.親の“ゲーム”の点を置き換えるという人も,“ゲーム”の 1 点に加算して 4 点にする人もいます.ゲームへのコントラが効くとする人がいます.

2 (A) 4 枚を認めるとき,黙って 2 (A) 4 枚に 2 点を認める人がいます.

点数計算


宣言の目標ひとつずつと出来役を,別々に採点します.目標の一部が失敗しても,成功した目標の点を得られます.
  • 親が達成した目標と出来役に対し,それぞれの子は,目標か出来役の点数を親に払います.親子間に目標へのコントラがあれば,コントラ,レコントラなどに応じて点数を倍にします.
  • 親が達成できなかった目標と子の出来役に対し,親は,目標か出来役の点数を子ひとりずつに払います.親子間に目標へのコントラがあれば,コントラ,レコントラなどに応じて点数を倍にします.

例えば,親が赤のウルティを宣言し,ウルティにもゲームにもコントラがなく,ゲームは未達成,ウルティは達成したら,赤のゲームで 2 点を失うので,子ひとりにつき 2 点ずつ計 4 点を払い,赤のウルティで 8 点を得るので,2 人の子から 8 点ずつ計 16 点をもらいます.

(参考) せりの階層


せりで指定できる組み合わせとその順位は複雑なだけでなく,人により異なるので,表にして全員が見えるようにしておくとよいでしょう.“2 (A) 4 枚”なし,“オープンドゥルヒマルシュ”は常に 24 点で目標数を比較する例を示します.

(1) 1 点: ゲーム
(2) 2 点: 赤のゲーム
(3) 4 点: 40-100
(4) 5 点 (2 目標): ウルティ
(5) 5 点 (1 目標): ベトリ
(6) 6 点: ドゥルヒマルシュ (切札ありは認めない人もいる)
(7) 8 点 (2 目標): 40-100 とウルティ
(8) 8 点 (1 目標): 赤の 40-100,20-100
(9) 10 点 (2 目標): 赤のウルティ
(9') 10 点 (2 目標,(9) より上にする人あり): 40-100 とドゥルヒマルシュ,ウルティとドゥルヒマルシュ
(10) 10 点 (1 目標): レベトリ (赤のベトリ)
(11) 12 点: レドゥルヒマルシュ,赤のドゥルヒマルシュ (認めない人もいる)
(12) 14 点 (3 目標): 40-100 とウルティとドゥルヒマルシュ
(13) 14 点 (2 目標): 20-100 とドゥルヒマルシュ
(14) 16 点 (2 目標): 赤の 40-100 とウルティ
(15) 16 点 (1 目標): 赤の 20-100
(16) 18 点: 20-100 とウルティとドゥルヒマルシュ
(17) 20 点 (2 目標): 赤の 40-100 とドゥルヒマルシュ,赤のウルティとドゥルヒマルシュ
(18) 20 点 (1 目標): オープンベトリ
(19) 24 点 (2 目標): 赤の 20-100 とウルティ
(20) 24 点: オープンドゥルヒマルシュ
(21) 28 点 (3 目標): 赤の 40-100 とウルティとドゥルヒマルシュ
(22) 28 点 (2 目標): 赤の 20-100 とドゥルヒマルシュ,40-100 とオープンドゥルヒマルシュ,ウルティとオープンドゥルヒマルシュ
(23) 32 点 (3 目標): 40-100 とウルティとオープンドゥルヒマルシュ
(24) 32 点 (2 目標): 赤の 40-100 とオープンドゥルヒマルシュ,赤のウルティとオープンドゥルヒマルシュ,20-100 とオープンドゥルヒマルシュ
(25) 36 点: 20-100 とウルティとオープンドゥルヒマルシュ,赤の 20-100 とウルティとドゥルヒマルシュ
(26) 40 点 (3 目標): 赤の 40-100 とウルティとオープンドゥルヒマルシュ
(27) 40 点 (2 目標): 赤の 20-100 とオープンドゥルヒマルシュ
(28) 48 点: 赤の 20-100 とウルティとオープンドゥルヒマルシュ

(参考) UltiNet.hu の点数


目標と点数は,人により大きく異なります.例えば,オンラインサイトの UltiNet.hu では,次の通りです.組み合わせは合計点だけを比較しますが,ウルティ,2 (A) 4 枚,X (10) 4 枚 と複合するパルティの点は数えません.
  • パルティ (ゲーム): 1 点
  • 2 (A) 4 枚: 3 点
  • 40-100: 4 点
  • ウルティ: 4 点
  • ベトリ: 5 点
  • 20-100: 6 点
  • ドゥルヒマルシュ: 7 点,切札ありのドゥルヒマルシュは,他の目標との組み合わせを要します.
  • X (10) 4 枚 (切札ありで X (10) を 4 枚取る): 9 点

出来役は,黙って 100 が 1 点,黙ってウルティが 2 点,黙ってドゥルヒマルシュが 4 点です.黙ってドゥルヒマルシュは,ドゥルヒマルシュだけでなく,2 (A) 4 枚,X (10) 4 枚の宣言があっても認められません.これより,X (10) 4 枚は,2 (A) 4 枚,ドゥルヒマルシュと同系列の目標であることがわかります.したがって,これらは互いに複合しません.

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