(2013.8.14) 発祥が比較的新しい1910~20年代と考えられているのに,言語が互いに通じない国に,記録もなく国際的に普及した不思議なゲームなので,分布の不思議さについて書き加えたくなりました.
(2013.8.15) カードの出し方のルールがわかりづらいと感じたので,書き方を変えました.
(2013.8.16) 目標点がいろいろあることを分かるようにしました.
(2013.8.17) カポと同点の扱いに関するバリエーションを追記しました.
(2013.8.18) ブロートと同点が同時にあった場合の扱いを明記しました.
(2013.8.21) コアンシュのルールを詳しくするとともに,全体の構成を見直しました.
(2013.8.24) カードを決してシャッフルしないことを強調しました.切札なしの場合の手役の扱いを追記しました.
(2013.8.29) “すべて切札(トゥ・タトゥー,tout atout)”のルールの誤りを修正しました.
(2013.9.3) コアンシュの切札なしとすべて切札のカード点計算を修正しました.
(2013.9.19) カードをシャッフルする場合について追記しました.
(2013.9.20) 表題に複数のゲーム名を挙げているので,少し,その背景を書き加えてみました.
(2013.9.21) 切札なしと手役を認める場合,9の4枚組を手役と認める人もいることを書き加えました.
人数とカード
2人のチーム2組の4人.チームは向かい合って座る.印ごとに,1(A),R(K),D(Q),V(J),10,9,8,7の8枚がある32枚のカード.
ゲームの目標
目標点を超えること.目標点は,1000点,500点などがよく使われます.
カードの強弱と点数
カードの強弱と点数は,切札と切札以外で違います.切札以外のカードは,強い順に,A,10,R(K),D(Q),V(J),9,8,7 で,点数は,Aが 11点,10が10 点,R(K)が4点,D(Q)が3点,V(J)が2点,それ以外が0点です.切札は,強い順に,V(J),9,A,10,R(K),D(Q),8,7 で,点数は,V(J)が20点,9が14点,他は切札以外と同じです.
配り手を決める
1人1枚ずつカードを引いて一番小さいカードを引いた人が,最初にカードを配ります.このときのカードの順序が強弱順か手役順かは,事前に決めてください.そのあとは,前の手でカードを配った人の右隣の人が配ります.
カードを配る(1)
最初にカードを配るときは,配り手が,シャッフルなどで,カードをよく混ぜます.普通は,このとき以外は,カードを混ぜないで,2組のチームが取ったカードの山を重ね合わせるだけです.切札を決めるときの判断には,配られるカードが直前の手のカード勝負で出されたように並んでいることを活用して構いません.
4手連続で誰も切札を指名しなかったときは,カードをシャッフルすることがあります.
配り手は,カードの山を左隣の人に渡します.左隣の人は,カードの山を2つに分けます.配り手は,2つの山を,分ける前と上下が逆さになるように重ねて1つに戻します.
配り手は,自分の右隣の人から順番に,反時計回りに,3枚ずつ,ついで,2枚ずつ伏せて配ります.その次のカードを表向きにして場に置きます.
切札を決める
全員が,5枚の手札を手に取り,配り手の右隣の人から順に,反時計回りに,表向きのカードの印を切札にするかパスするか言います.4人全員がパスしたら,2周目は,表向きのカードの印以外で切札にしたい印を言うかパスします.2周目も全員がパスしたら,カードを集め,配り手を交代して,配りなおします.誰かが切札を決めたら,後の人の発言を待たずに,残りの手札を配ります.
2周目に切札の種類として,4つの印の他に,“切札なし (サン・ザトゥー,sans atout)”,“すべて切札 (トゥ・タトゥー,tout atout)”を認めることがあります.
2周目に誰も切札を選ばなかったら,配り手が切札を選ばなければならないとすることがあります.これを“ヴァシュ(la vache)”といいます.
カードを配る(2)
切札を決めた人は,表向きのカードを自分の手札に加えます.配り手は,自分の右隣の人から順番に,反時計回りに,切札を決めた人には2枚,他の人には3枚のカードを1度に配ります.
主なバリエーションの中には,コアンシュ(coinche)のように,切札をせりで決めるものがあります.この記事の末尾をみてください.
カード勝負
8枚の手札で8回のカード勝負を行います.1回目のカード勝負は,配り手の右隣,残りの 7回は,直前のカード勝負に勝った人が先手です.先手は,好きな手札を1枚表向きにして,場に出します.残りの3人は,先手の右隣から順に,反時計回りに,次のルールに従って,手札を1枚場に出します.
- 先手と同じ印のカードが手にあれば出す.
- 先手と同じ印が手になく,相手のカードが勝っているなら,切札があれば出す.
- 先手と同じ印が手になく,味方のカードが勝っているなら,好きなカードを出す.
- 切札を出す義務がある場合,勝っているカードに勝つ切札があれば出す.
すべて切札では,切札は他の印に負けないので,カードの強弱が切札順になり,勝っているカードに勝つカードを出す義務があることを除けば,“切札なし”と同じで,先手の印で一番強いカードが勝ちます.
先手と同じ印が手になく,相手のカードが勝っているとき,それに勝つ切札がないなら,切札に限らず好きなカードを出してよいとすることがあります.
ブロート(belote)・ルブロート(rebelote)
切札のR(K)とD(Q)が手札にあるとき,1枚目を出すときブロート,2枚目を出すときルブロートということで,20点をもらえます.ルブロートは言わなくてもよいとする人と,ブロート,ルブロートのどちらか一方でも言い忘れると,この点はもらえないとする人がいます.
“切札なし”にはブロート・ルブロートはなく,“すべて切札”では,最大4組のブロート・ルブロートがあります.
ブロート・ルブロートでは,先にR(K)を出さなければならないとすることがあります.
手役 (アノンス,annonces)
手役は,認める人と認めない人がいます.1回目のカード勝負に手札を出すとき,あるいは,8枚の手札を手にしたら,手札にあり得点したい組み合わせの種類をすべていいます.続きは,強さと違い,A,R(K),D(Q),V(J),10,9,8,7の順で続いているかをみます.同じカードは,2つ以上の手役に使えません.
- V(J)の4枚組: 200点
- 9の4枚組: 150点
- A,10,R(K),D(Q)の4枚組: 100点
- 同じ印の5枚以上の続き: 100点
- 同じ印の4枚続き: 50点
- 同じ印の3枚続き: 20点V(J) の 4 枚組: 200 点
最強の手役を持つチームは,申告して公開した手役の点をもらえます.手役の公開は,2回目のカード勝負の前,あるいは手役を申告するとき直ちに行います.役の強弱は,次のように判定します.得点の多い役が強く,100点どうしは,4枚組の方が強く,同じ役どうしは,一番上のカードが上の方が強く,一番上のカードが同じときは,切札が強いです.同じ役で一番上のカードが同じで,どちらも切札でないときは,両チームの手役とも無効です.役の上下を比べるときのカードの上下は,続き役には続き用の順序,4枚組には切札の強弱順を使います.
切札なしのときは,Aの4枚組を200点,10の4枚組を150点,R(K),D(Q),V(J)の4枚組を100点にし,9の4枚組は100点役と認める人も認めない人もいます.
点数計算
両チームが,カード勝負で取ったカードの点数の合計を計算します.このとき,取ったカードの順番を変えないようにします.手の最後の8回目のカード勝負に勝ったチームは,それに10点を加えます.8回全勝したチームは,10点の代わりに100点を加えます.
どの点をどのチームが得るかは,切札を選んだチームが成功したか,失敗したか,同点かによって変わります.切札を選んだチームの成功・失敗・同点の判定には,カードの点数だけを使う,カードの点数とブロート・ルブロートの点を使う,カードの点数とブロート・ルブロートの点と手役の点を使うという3つの流儀があるので,事前にどれにするか決めてください.
切札を選んだチームの点数が,そうでないチームより多いときは,切札を選んだチームの成功(勝ち)で,両チームとも,それぞれ得た点を記録します.切札を選んだチームの点が,そうでないチームより少ないときは,切札を選んだチームの失敗(負け)で,切札を選んだチームの点は,ブロート・ルブロートを除いて相手の点になります.同点のときは,切札を選ばなかったチームは,直ちに点を記録しますが,切札を選んだチームの点は,次の手の勝者に持ち越されます.このときも,ブロート・ルブロートの20点は例外で,切札を選んだチームでも直ちに記録できます.
同点の扱いは複雑なので,例を示します.判定にブロート・ルブロートの点を含めるとして,Aチームが切札を選んで,カードで71点,ブロート・ルブロートで20点の計91点,Bチームがカードで91点を得たとすると,同点です.この手では,Aチームは,ブロート・ルブロートの20点を記録し,残りの71点は次の手に持ち越します.Bチームは,この手で91点を記録します.
切札なしの場合,最後の10点を含むカード点が130点しかないので,カード点を2倍にすることがあります.すべて切札の点も2倍にすることがあります.
カード勝負に1勝もできなかったら,手役の点を,全勝した相手に渡すことがあります.
ブロート・ルブロートの20点を宣言したチームに保障しないで,同点のときの持ち越し,失敗のときの明け渡しの対象にすることがあります.
点数の記録と勝敗
電子的な手段を使わないときは,手ごとに点数を10点単位に丸めて記録することが多いです.10点単位に丸める場合,五捨六入します.五捨六入だと,末尾が6のとき合計点が170になるのを嫌うなら,五捨七入し,6は点の高いチームを切り上げ,低いチームを切り下げます.
紙を使う場合,誰か1人が点数の記録を担当します.スコアシートは,自分のチームと相手のチームの2つの欄に分けます.縦線で2つのチームを分け,左側に自分たちのチーム名(フランス語だとnousのNを使うことが多い),右側に相手チームの名前(同じくeuxのE)を書いて,その下に累計点を書き加えていきます.
チップを使う場合,10,50,100点用のチップを使います.500点のチップも使うと,卓上のチップ数が減らせて,点数が分かりやすくなります.
先に目標点を超えたチームが,ゲームに勝ちます.両チームが同じ手で目標点を超えた場合,点の多いチームを勝ちとします.同点の場合,1手延長戦を行います.
カポされた手で得た点での勝ちを認めないことがあります.この場合,1手延長戦を行います.
サイン(アペル, appels)
捨て札で,出して欲しい印,出して欲しくない印を相手に伝えることが認められます.事前にパートナーとどのサインを使うか相談します.
- 長さのサイン(la longue).Aを捨てると,その印に,複数の勝てるカードがあることを示します.
- 直接サイン(appel direct).ある印の弱いカードを捨てると,その印にAなどの勝てるカードがあることを示します.
- 間接サイン(appel indirect).ある印のカードを捨てると,同じ色のもう1つの印にAなどの勝てるカードがあることを示します.
- クロスサイン(appel indirect croisé).間接サインを同じ色の印でなく,ハートとクラブ,スペードとダイヤで出します.
- 逆サイン(appel négatif).ある印のカードを捨てると,その印を先手で出して欲しくないことを示します.
- モダンサイン(appel moderne).先手と同じ色の印を捨てると捨てた印がよいことを,違う色だと捨てた印が悪いことを,それぞれ示します.
- 絵札を捨てたら,その印が悪いことを示します.
- ブロート.切札の先手に,ブロートでR(K)を出すと,R(K)とD(Q)以外の切札がないことを示し,D(Q)を出すと少なくとも3枚の切り札があることを示します.
- 切札のA.パートナーの切札のV(J)に対して,切札のAを出すと,切札の9が手にないことを示します.
次の2つは,サインというより,定石的なカードの出し方という方がよいかもしれません.
- 切札を選んだ人が,最初の先手で,切札以外のAを出すと,切札のV(J)が手にないことを示します.
- 切札を選んだ人が,最初の先手で,切札以外の7~9を出すと,V(J)以外の切札がほとんどないことを示します.
コアンシュ(coinche)
せりで切札を決めるバリエーションです.コントレ(contrée)とも呼ばれます.手役を認めるものをコアンシュ,認めないものをコントレと区別することもあります.
8枚の手札を,3枚,2枚,3枚で一度に配り切ります.
全員が8枚の手札を手にしたら,配り手の右隣の人から順に,反時計回りに目標点数をせり上げます.点数は,80~160点の10点単位の点または最大の目標であるカポです.点数とあわせて,切札の種類をいいますが,切札はせりの比較対象にはなりません.せりに出られないか,せり上げられない人はパスします.パスしても,せりに戻れます.
相手チームの目標に対して,達成を阻めると考えるなら,“コアンシェ (coinchée)”といえます.コアンシェは,点を倍にします.相手チームに“コアンシェ”を言われたら,“シュール・コアンシェ (コアンシェ返し)”といえます.これは,点を4倍にします.
3人が続けてパスするか,コアンシェ,シュール・コアンシェ,カポが言われたら,せりは終わります.なお,カポ(ジェネラルも)にも,コアンシェを言えるとする人と,言えないとする人がいます.
切札なし(サン・ザトゥー),すべて切札(トゥ・タトゥー)のカードの合計点が162点でないのは,不都合なので,次のようにします.
- 切札なしの場合,Aを19点にするか,点数に162を掛けてから130で割る.
- すべて切札の場合,Jを14点,9を9点,Aを6点,10を5点,Kを3点,Qを1点にするか,点数に162を掛けてから258で割る.
成功するには,点数が,せり落とした点以上でなければなりません.同時に,相手の点より多くなければならないとする人もしない人もいます.相手の点より多いことを求めない場合(contréeではこれが普通です),80点でせりに勝ったら,80対82でも成功です.
点数計算の方法は,複数の記述が一致することがないぐらい多様です.ここでは2つの方法を紹介します.
ひとつは,手に勝ったチームが,ボーナス点だけを記録する方法です.ボーナス点は,せり落とされた点です.カポ宣言は,250点です.コアンシェ,シュール・コアンシェがあったら,ボーナス点をそれぞれ2倍,4倍にします.
もうひとつは,ブロート風の点数に,手に勝ったチームがボーナス点を足して記録する方法です.コアンシェの倍はボーナス点だけに付きます.この場合,目標点は2~3倍にします.コアンシェ,シュール・コアンシェのときは,負けたチームは勝ったチームに引渡し対象の(普通はブロート・ルブロートの20点は渡さない)点を渡します.カポに失敗したときは,成功したときと同じ250(252)+250=500点を相手が記録します.
1 人で全勝する“ジェネラル”をせりでいうのを認める人がいます.ジェネラルはカポより上で,ボーナス点は,350,500,700,1000 などがあります.
切札の印をせる
ブリッジ・ベロートは,ブルガリアで盛んなルールです.8枚の手札を配り切ってから,点数でなく切札をせります.切札の順位は,ブリッジ順で,下から上へ,クラブ,ダイヤ,ハート,スペード,なし,すべてです.コアンシェ,シュール・コアンシェに相当するコントラ,レコントラも言えます.
キプロスのピロータは,同じく切札をせります.切札の順位はプレフェランス順で,スペード,クラブ,ダイヤ,ハート(,なし,すべて)です.
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