2013年7月26日金曜日

プレフェランス (3)

1971 年にモスクワ国立大学のプレフェランシスト総会が承認したと銘打った“プレフェランス: ルールとバリエーション (Преферанс: правила и разновидности)”を参考資料として,“クラシック”のルールを現代ルールとの違いを中心に解説します.同文書は,当時の主流はソチ風だと書いているにもかかわらず,クラシックを中心にルールを解説しています.

席決め


席決めで最上位のカードを引き最後に着席した人が,1 人 1 枚ずつカードを表向きに配ります.最初に A が来た人が最初の配り手で,この人に配り手が移るときに最終周が終わります.

ゲームの構成


ゲームは,せりなしに規定された手を行う前半戦と,せりで自由に手を決める後半戦からなります.その間のハーフタイムに,2 周,4 人なら 8 手のラスパシーがあります.

前半戦が終わったら,そのとき失点が一番多い人が,ゲームのレートと後半戦の終了条件を決めます.他の人は,失点が一番多い人に助言しても構いませんが,意見を押し付けてはいけません.レートは,授受点 1 点がいくらか,終了条件は,目標点と制限時間です.目標点は,そのとき失点が一番少ない人の失点以下でなければなりません.制限時間になったら,最終周が始まります.

配り手


配り手は,1 手ごとに交代します.例外は,後半戦のラスパシーで,同じ配り手で 3 手連続でラスパシーになるまでは,ラスパシーの後は配り手を交代しません.ラスパシー中の有利を打ち消すために,3 手続けて配り手を務めた人に,最大 10 点失点させる人がいます.

せり


前半戦には,せりがなく,1 番手と 2 番手のどちらを親にするか,事前に決めます.ハーフタイムには,全員がパスしかできない名目的なせりがあります.後半戦は,だれが親になるか,せりで決めます.

せりでミゼールの上に来るのは,山札なしの 9 の代です.ミゼールに対して山札なしの 9 の代を言われたら,山札なしのミゼールを言えます.山札なしのミゼールに対抗できるのは,山札なしの 10 の代だけです.

同じせりで手札を見てせりに出た人がいない限り,手札を見ないでせりに出る見ず出が認められます.手札を見た人が見ず出にせりで対抗するには,印が同じで勝ち数が 1 つ上の目標を言わなければなりません.見ず出した人は,手札を見た目標を言われたとき,自分の手札を見てせりを続けられます.

同じせりに出た人がいないかぎり,手札を見ないで下りる見ず下りが認められます.見ず下りがあったとき,せりに出られる最低の目標は,同じ配り手が,直前に何手連続見ず下りを伴うラスパシーを配っているかで変わります.0 手なら見ず出の 6 の代か見ての 7 の代,1 手なら見ず出の 7 の代か見ての 8 の代,2 手なら見ず出の 8 の代か見ての 9 の代です.

親の宣言


親が山札なしの目標でせりに勝ったときは,山札と親の手札の交換を行いません.

親は,山札を表にしたあと,山札を取らないで放置できます.

親が見ず出のまませりに勝ったら,ミゼールを言っていなくても,ミゼールを宣言できます.まれですが,見てのせりでも,ミゼールを言わなかった人にミゼールの宣言を認める人がいます.

前半戦では,指定されている席順の人が,せりなしに親になります.親は,自分の一覧にある目標をすべて 1 回ずつ宣言します.宣言の順番は自由です.一覧は,6 の代 1 回,7 の代 1 回,8 の代 1 回,9 の回 1 回,10 の代 1 回,ミゼール 1 回の 1 人あたり 6 手です.勝ち数は山札を公開する前に,切札は,2 枚のカードを捨ててから言います.

4 人で遊ぶ場合,親は,ハイリスクな手で,配り手を招待できます.招待を受け付けたら,配り手は,親とその手の損得を半分ずつ分け合います.


子の宣言


10 の代には,子の目標はなく,ミゼールと同じルールでカード勝負を行います.

“半分出る”はありませんが,6 と 7 の代で,子が 2 人とも下りたら,“下りる”-“半分出る”-“下りる”とまったく同じように扱います.

宣言が 6 スペード,あるいは見ず出がせりに勝った場合,せりと同じ印で勝ち数が 1 つ上の宣言までは,子は必ず出なければなりません.

前半戦では,1 人目の子は必ず出て 2 人目の子は必ず下りるか,2 人とも必ず出るかを事前に決めます.手を常に明かすか,隠してもいいかも決めます.

カード勝負


親が 1 番手でないときは,ミゼール,10 の代と手を明かす場合,カード勝負が始まる前に,子 2 人の手を公開します.
親が 1 番手のときは,ミゼールと 10 の代の場合に限り,親が最初の手札を出した後に,子 2 人の手を公開します.

ラスパシーは,山札を使います.

得点計算


ゲーム点は,爆弾がなければ,ソチと同じです.親の得点欄に爆弾があるときは,ゲーム点を 1 重爆弾なら 2 倍,2 重爆弾なら 4 倍,3 重爆弾なら 8 倍します.親が見ず出のまませりに勝ったら,さらに 2 倍します.得点欄に複数の爆弾がある場合,一番古い爆弾を使います.使った爆弾は,親が目標を達成したときは消え,そうでないときは消えずに残ります.

親が宣言を達成したら,ゲーム点の半分を得点し,残り半分を失点から引きます.失点に手をつけないで,全額を得点してもかまいません.

後半で宣言を達成した手数が,前半戦の手数かラスパシーの手数を超えたら,宣言を達成した親は,ゲーム点の半分を失点します.この失点は,後半戦の成功した手数が,前半戦またはラスパシーの手数以下でなければならないというルールを満たすための架空の手です.

親は,宣言を達成しなかった場合,ミゼール以外では,“不足勝ち数×ゲーム点”を失点し,また祝儀として,同じ点を下りた子を含む子と抜けている配り手 1 人ずつに渡します.ミゼールでは,“勝ち数×ゲーム点”を失点します.

出た子は,目標を達成してもしなくても,“勝ち数×ゲーム点”を親からもらいます.出た子が 1 人のときは,勝ち数として,子 2 人の勝ち数の合計を使います.どんな場合も,この点を下りた子と分け合いません.

この採点方法は,“欲張りな”出た子ですが,参考資料は,“通常の”出た子と呼び,他に,“紳士な”出た子と,“捕食者な”出た子を紹介しています.紳士な出た子は,現代の同名のルールとは違い,出た子以外には,祝儀も勝ち数の点もありません.捕食者は,下りた子も抜けている配り手も出た子と同じ点をもらいます.

出た子は,子 2 人の勝ち数が目標より少なく,自分の勝ち数が個人目標より少なかった場合,“個人目標への不足勝ち数×ゲーム点”を失点します.

4 人のとき,山札に次のカードがあり親が山札を拒まなかったら,配り手は親から点をもらいます.A  1 枚は 1 勝分,同じ印の K と Q は 1 勝分,同じ印の A と K は 2 勝分,A 2 枚は 3 勝分です.親が山札を取らなかったら,配り手は 1 勝不足分を失点します.

親の得点が目標に到達したら,あふれた点は,得点欄の空きが一番少ない人に書きます.ただし,出た子と抜けている配り手には書けません.全員の得点が一杯なら,自分,ついで他人の失点を減らします.点を他人の得失点欄に書いたときは,書いた点の 10 倍の点をもらって相殺します.

ラスパシーでは,1 勝あたり 1 点を失点します.1 勝もしなかった人は 1 点失点を減らします.配り手を変えない 2 手目,3 手目のラスパシーでは,これらの点をそれぞれ 2 倍,4 倍にします.1 人でも見ず下りしたら,さらにこれらの点を 2 倍にします.ラスパシーの点は,自分の失点欄にしかつけられません.したがって,失点がないときに 1 勝もしなかったら,得られたはずの点は消えます.

せりで全員がパスし,そのうち少なくとも 1 人が見ず下りだったら,見ず下りした人は,爆弾を得ます.全員が見ず下りなら,抜けている配り手も同じ爆弾を得ます.手札を見た人がいたときは,手札を見た人と抜けている配り手は,ひとつ下の爆弾を得ます (1 重のときはなしです).爆弾の種類は,配り手が交代しないで,見ず下りのラスパシーを何手連続で配ったかで変わります.1 手目は 1 重,2 手目は 2 重,3 手目は 3 重爆弾です.爆弾を手にした人は“∧”の記号を得点欄に書き込みます.2 重,3 重の場合,この記号を垂直に重ね合わせます.

罰則


配り手は,山札を最初や最後に配る,枚数が違うなどの配り間違いがあったら,1 点を失点して,配りなおします.

親は,山札を手に加えたあと,2 枚捨てずにカード勝負をしたら,3 勝不足分の失点を払って手を終えます.

先手と同じ印,あるいは切札を出すルールを破ったら,反則を犯した人は,ラスパシー以外では,3 勝負不足分の失点を払って,手を終えます.この手は,目標達成とはみなしません.ラスパシーでは,正常にラスパシーが終わったものとみなし,反則を犯した人が 10 回全勝したものとして,採点します.

子同士でゲームのアドバイスとみなせる会話があったら,アドバイスした人は 1 回につき 1 点を失点します.抜けている配り手が山札か 1 人の子の手を見たあとで,ゲームのアドバイスとみなせる発言をしたら,1 回につき 1 点を失点します.

その他の反則は,事前に話し合って決めます.参考文献は,親が勝てることが自明な回数を下回って宣言したときと,子が勝つことが自明な回数勝たなかった場合を反則とみなしています.

終局


最終周に入った後で,最初の配り手に配り手が変わるとき,終局になります.それより前でも,全員の得点が一杯になり,失点がなくなったら終局です.

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