2013年8月17日土曜日

バルートまたはアラビア版ブロート

ブロートは,サウジアラビアでは“バルート”と呼ばれ,同国の文化の一部だと言われるほど
盛んです.先月書いたフランス版とは,切札の決め方と役の点数が少し違い,切札なし (サン・アトゥー/ザトゥー) に相当する“スン”を体系的に優遇します.また,コアンシュのようなダブルの役割も面白いルールです.

(2016.7.13)別の情報源の記述と,フランスのルールとあまり変わらないと言っている人がいたのを根拠に,切札を指名したチームの得点が相手より少ないときは,ダブルがなくても相手に点を渡すと改めました.

人数とカード


ペア 2 組の 4 人.ペアは向い合って座ります.4 つの印ごとに A, K, Q, J, 10, 9, 8, 7 の 32 枚.

 

カードの強弱と点数


切札の J と 9 を特別扱いします.

カードの強さの順は,強い順に,切札は,J,9,A,10,K,Q,8,7,切札以外は,A,10,K,Q,J,9,8,7 です.

カード勝負で取ったカードの点数は,切札の J が 20 点,切札の 9 が 14 点,A が 11 点,10 が 10 点,K が 4 点,Q が 3 点,切札以外の J が 2 点,切札以外の 9 が 0 点,8 と 7 が 0 点です.この他に,手の最後の 8 回目のカード勝負に勝つと 10 点をもらえます.

 

目標


目標は,152 点です.他のブロートの 1520 点に相当します.

 

カードを配り切札を選ぶ


最初にカードを配る人は好きな方法で決め,以後は反時計回りに交代します.

配り手の左隣りの人は,カードを配る前に,カードをカットする,何もしない,先頭のカードを表向きにする,底の 3 枚を自分のパートナーに渡すのどれかを選びます.

配り手は,右隣の人から反時計回りに,1 周目は 3 枚ずつ,2 周目は 2 枚 ずつで各人 5 枚の手札を配り,次のカードを 1 枚表向きにして机の上に置きます.

ここで切札を決めるせりを行います.1 周目は,表向きのカードを手札にし,切札なしで戦う“なし (スン)”,表向きのカードを手札にし,その印を切札にして戦う“切札 (ホクム)”,表向きのカードを取らない“パス” のいずれかを,配り手の右隣から順に,反時計回りに言います.誰かが“なし”を言ったら,配り手の右隣の 1 番手から“なし”を言った人の手前までの人が順に,代りに“なし”で出るかパスするか言い,せりを終えます.誰かが“切札”を言ったら,他の全員が 1 番手から順に,代わりに“なし”で出るかパスするか言い,全員がパスしたら,“切札”を言った人は,“切札”を“なし”に変えるか“切札”のまま戦うかを言い,せりを終えます.3 番手と 4 番手は,このほかに,“アシュカル”と言えます.これは,表向きのカードをパートナーに取らせた上で,切札なしで戦います.表向きのカードが A のときは,アシュカルを認めない人がいます.1 番手と 2 番手が間違って“アシュカル”を言ったら,“なし”を言ったものとみなします.手札に 7,8,9 しかない場合,切札決めの 1 周目なら,配り手を交代して手を配りなおしにできます.

1 周目に全員がパスしたら,2 周目に入ります.“なし”なら,せりは終わり,1 周目と違い,他の人は代りに出られません.“切札”なら,2 周目の順番が来ていない人が,代わりに“なし”で出るか“パス”かを言い,残りの全員がパスしたら,“切札”のままで行くか,“なし”に変えるかを言います.切札の場合,表向きのカードの印以外の印を指名しなければなりません.切札を指名する前に,あとから配られる 2 枚の手札をみたら,切札なしになります.2 周目には“アシュカル”は言えません.

2 周目も全員パスしたら,配り手を交代して,手を配りなおします.

切札が決まったら,配り手は,表向きのカードを取った人には 2 枚,その他の人には 3 枚ずつ手札を配ります.

手札が配り手のミスで表向きになっても,それが A でなければ,ゲームを続けます.A なら,配り手を変えないで配り直します.

ダブル


切札を決めてからカード勝負に入るまでの間に,ダブルをいえます.ダブル,トリプルなどには,点数を倍にするだけでなく,手に勝ったチームがその手の両チームの得点を独り占めする効果があります.

切札がある場合,切札を指名したチームの相手は,点を倍にするダブルを言えます.ダブルを言われたら,表向きのカードを取った人は,点を 3 倍にするトリプルで応じられます.トリプルを言われたら,ダブルを言った人は,点を 4 倍にできます.4 倍を言われたら,表向きのカードを取った人は“勝負 (ガハワ)”といえます.勝負は,ゲーム全体の勝敗をこの手の勝敗で決めます.

ダブルと 4 倍では,切札の封印をあわせて指定できます.切札を封印すると,手札に切札以外のカードがある場合,先手で切札を出せません.

切札なしの場合,一方のチームが 100 点を超えていて,もう片方が 100 点以下の場合に限り,切札を指名したチームの相手はダブルを言えます.切札なしには,トリプル以上の倍はありません.

手役の宣言


手札に手役がある場合,1 回目のカード勝負に手札を出すとき,得点したい手役の種類をいいます.最強の手役を持つチームは,2 回目のカード勝負の前に,手役を公開します.同じカードは,1 つの手役でしか使えません.

手役は,弱いものから順に,次の通りです.同じ手役のなかでは,最上位のカードが上の方が強いです.手役のカードの順は,カードの強弱とは違い,上から下へ A, K, Q, J, 10, 9, 8, 7 です.続き役も,この順での続きをみます.
  • 同じ印の 3 枚続き.20 点.
  • 同じ印の 4 枚続き.50 点.
  • 10,J,Q,K,A の 4 枚組.100 点.A は切札があるときだけです.
  • 同じ印の 5 枚以上の続き.100 点.
  • 切札なしのときの A の 4 枚組.400 点.

カード勝負


8 枚の手札で 8 回のカード勝負を行います.最初は配り手の右隣,以後は直前のカード勝負の勝者が先手になります.先手は,好きな手札を 1 枚表向きに場に出します.ついで,反時計回りに順番に手札をひとり 1 枚表向きにして出します.このとき,次のルールに従います.先手と同じ印がなかったら無条件に切札を使わされるのが気に入らなければ,フランス風のルールを使ってもいいでしょう.
  • 先手と同じ印があれば出す.
  • 先手と同じ印がない場合,切札があれば出す.
  • 先手が切札の場合,勝っているカードに勝てるカードがあれば出す.
切札が出た場合,一番強い切札,そうでなければ,先手の印で一番強いカードを出した人の勝ちです.カード勝負に勝った人は,出された 4 枚のカードを取ります.取ったカードは,チームでまとめて置きます.

バルート


切札の K と Q が手札にある場合,手からこのペアの 2 枚目を出すときに“バルート”というと 20 点を得られます.K と Q の一方が手役にある場合と,2 枚とも 5 枚続きの役にある場合は,バルートになりません.

得点計算


点数は,チームごとに,10 点単位で記録します.
  • 切札なしの場合,10 の桁で 4 捨 5 入 した点を 10 で割り 2 倍する.
  • 切札ありの場合,10 の桁で 5 捨 6 入 した点を 10 で割る.
  • 切札なし専用の手役 400 点は,例外的に切札なしの 2 倍がつかない.

バルートの点には,ダブル,トリプルなどの倍はつきません.

切札を指名したチームの点数が,相手のチームと同じか多いなら,両チームとも自分のチームの点を得ます.

切札を指名したチームの点数が,相手のチームより少ないなら,相手のチームが両チームの点を合わせて得ます.このとき,バルートの点は相手に渡しません.

ダブル,トリプルなどの場合は,その手の点数の多いチームが,バルート以外の相手の点も含む点を得ます.チームの点数を比べるとき,役の点を含めるかカード勝負の点だけ比べるかは,事前に決めてください.

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