2018年10月6日土曜日

武漢の「紅中頼子槓」麻雀

ルール名は,ホンチュン・ライツカンと読みます.得点計算がユニークで,「頼子(ライツ)」というワイルドカードがある麻雀です.高い手を目指す人は高いリスクを負う公平なインフレシステムが魅力です.ワイルドカードは一般的には「混(ホン)」,北京では「混兒(ホワール)」と呼ばれ,ワイルドカードを使うルールは,北京や浙江・福建・江西省各地などにも分布しています.なお,頼子は癩子と表記する方が多いかもしれませんが,画数も多く,字義も良くないのであえてこうします.

主な参考資料は,「武漢麻將紅中頼子槓超詳細入門教程」です.この資料は,「紅中頼子槓」のインフレ版「紅中發財頼子槓」を解説しているので,上限の点数,大役複合時の点数は他の資料も参考にしました.

道具

麻雀牌136枚.萬子,索子,筒子と東南西北白發中.花牌は使いません.
サイコロ2つ.

席決め

伝統的な方法と,電動卓向けの新しい方法があります.
伝統的な方法は,東南西北1枚ずつ4枚を伏せてよく混ぜ,1人1枚ずつ好きな牌を取ります.東を引いた人がサイコロ2つを振って出た目の合計の席が東の席です.反時計回りに東南西北の順になるように席を変えます.
新しい方法は,自分の目の前の山から牌を1枚とり,数字の大きい順に東南西北にします.字牌は数牌より下で,上から順に東南西北中發白です.数が同じ場合,種類を比べます.上から筒,索,萬の順です.同じ牌を引いた人は,もう1枚自分の山から牌を引いて,同じように比べ,同点だった人の間の順位を決めます.東がサイコロを振る以降は伝統的な方法と同じです.

配牌

サイコロは2つで,牌を取り始める山は2つの目の合計で決めますが,山を分ける位置は,合計でなく小さな方の目だけを使います.例えば,2-5なら,合計の7にあたる親の対面が,小さい方の目が2なので右から2列目と3列目の間に切れ目を作り,親は3列目と4列目を取ります.親がチョンチョンして残った下段の牌を表向きにし,牌の山の上にのせます.山の末尾近くに置くことが多いですが,カン補充牌を多く使うルールなので,特にどこに置くという決まりはなく,全員に頼子が何か分かればよいです.この牌が「頼子」表示牌です.この牌が数牌なら,同じ種類で数が1つ大きい牌,9のときは1,字牌なら,東南西北中發白の順で次の牌,白のときは戻って東が頼子です.風と三元牌を分けないことと,三元牌の順番が日本語と逆なことに気をつけてください.なお中は決して頼子になれないので,表示牌が北のときは,發が頼子です.(決め方が似ている頼子があるので書いていませんでしたが念のため.ドラはありません)

進行

最初の親は,席ぎめで東になった人です.流局か親が上がると連荘です.子が上がると,親の下家(右隣)が次の親です.流局するのは,牌の山を使い切って誰も上がらなかったときだけです.
1回のゲームは,親4周(一荘戦)です.続けるときは,席決めからやり直します.
参考までに,“一分(点0.1元)”のレートで“紅中發財頼子槓”の開口飜の一荘戦を行うと,普通の勝敗は200〜300元,荒れると1000元近くになります.一荘戦を3回すると,普通は500元前後,荒れると800元から1200元,おとなしいと200元前後です.
捨て牌は,誰が何を捨てたか覚えておかないと分からないように,机の中央に乱雑に置きます.
チー・ポン・カンした牌と,1枚でカンするか捨てた中・頼子は,左手側の隅から1列または何列かに分けて並べます.自分に面した縁に沿って並べる人もいます.
チー・ポン・カンで,誰からどの牌をもらったかは示しません.
カンを何回しても,流局になりません.

暗槓は4枚を伏せてさらし,手が終わったときに公開します.
中は,ポンも4枚揃えてのカンもできません.中が手にあるか山から引いたら,1枚でカンのようにさらし,山の末尾から補充牌を引けます.また,中を捨てても構いません.カンしても,捨てても,紅中槓となります.
頼子は,中を除くどんな牌の代わりにもなります.頼子を含むメンツは,チー・ポン・カンできません.上がるときは頼子入りのメンツや頭を捨て牌で完成できますが,捨てられた頼子では上がれません.また頼子は,中と同じように1枚でカンできます.頼子を捨てても構いません.カンしても捨てても頼子槓となります.
牌の山が残り14枚(7列)になったら,1人1回1枚ずつ,順に山からツモるだけで,牌を捨てません.このときカンはできません.牌の山が残り10枚になっても誰も上がらなければ,流局です.これ以外の流局はありません.
武漢での10000人麻雀大会の写真も参考にしてください.中だけでなく發もカンしている人がいるので,“紅中發財頼子槓”であることがわかります.また,牌をさらす場所が人によって違うこと,頼子表示牌を山の中の牌を表に返して決めている卓が1つあるなど,作法の細かい違いにも気づけると思います.

上がり

上がるには,次の条件を満たす必要があります.
  • 手に中がなく,あった中はすべてカンするか捨ててある.
  • 少なくとも1つ“開口(カイコウ)”している.“開口”は,食い,泣きのことで,チー・ポンまたは明槓のどれでもよい.暗槓,紅中,頼子のカンは開口に数えない.
  • 風一色でも将一色でもない場合,4つのメンツと1つの頭がある.
  • 対対胡,風一色,将一色,清一色のどれでもない場合,頭が2か5か8.頼子2枚の頭は,額面が2,5,8でなければ認められない.頼子1枚の単騎で,任意の2,5,8を待つのは,認められる.
  • 小胡の場合,手にある頼子が1枚か0枚.このとき額面どおりで使っている頼子は数え,カンしている頼子は数えない.小胡を聴牌した手に頼子が1枚あって,頼子をツモったら,上がれる手を維持するためには,どちらか1枚を捨てるかカンしなければならない.
  • 上がる人と他の3人それぞれの間の点数が,あらかじめ決めた下限,例えば8点や16点以上なければ上がりを認めないことが多い.8点,16点でなく3飜,4飜ということもあり,この場合,大胡なら,これらの飜数がなくても上がれる (4飜は16点の同義語なので,大胡なら10点と開口で少なくとも20点はある).後述する紅中發財頼子槓や口口番では,さらに高い32点 (5飜) 縛りがあり,この場合,大胡でも点数に気を付ける必要があるが,実際は損失を抑えるために,どれだけ開口と槓牌を増やさないか気にしなければならないことの方が多い.

対対胡での頼子の単騎待ちのように,どんな牌でも上がれる待ちは,自摸か搶槓(チャンカン)でしか上がれません.
上がり牌を見逃した場合,自分のツモ順を待たないでも上がれます.なお,日本以外のほとんどのルールと同じく,上がり牌を自分で捨てていても振り込みで上がれます(振り聴なし)
同じ捨て牌で2人以上が同時に上がることを認めません.この場合,捨て牌を捨てた人から順番が一番近い人の上がりとなります(頭ハネ).

点数計算

包でなければ,上がった人以外の3人が,それぞれ上がった人に点を払います.支払う点数は,基礎点(起翻)を自分の飜数と上がった人の飜数を合わせた回数だけ2倍した点です.スコアカード,ポーカーチップや点棒の類は使わず1手ごとに精算するので,一分(点0.1)なら10分の1,五厘なら20分の1し,小数点以下を四捨六入した額を現金や現金に見立てたトランプのカードで受け渡しします.
1人あたりの支払い点数には上限(封頂,フォンティン)があり,点数計算の結果が上限以上なら,上限の点を払います.
普通の上限は,
  • 封頂 300点
  • 3人全員が封頂の場合は金頂(チンティン)といい,400点負けにします.
  • 金頂のとき開口していない人は陽光頂(ヤンクワンティン),光明頂(クワンミンティン)などといい,500点負けにします.
  • 3人全員が陽光頂のときは三陽(サンヤン)といい,600点負けにします.

基礎点

  • 小胡(シャオホー):1点
  • 大胡(ターホー):上がった手で該当するもの1つにつき10点

小胡(シャオホー)

  • 平胡または屁胡(ピーホー).大胡でない手.

大胡(ターホー)

  • 碰碰胡: 対対胡(和)です.頭に2,5,8以外の牌も使えます.
  • 風一色(フォンイーソー):風か發か白だけの手.このとき,中と頼子のカンは手に含めないで判定します.14枚がこの条件を満たし1開口あれば,4面子も1雀頭も不要で,風發白の何でも上がれます.他の一色役でもそうですが,化けた頼子を混ぜて構いません.
  • 将一色(チャンイーソー):2,5,8だけの手.このとき,中と頼子のカンは手に含めないで判定します.14枚がこの条件を満たし1開口あれば,4面子も1雀頭も不要で,258の何でも上がれます.
  • 清一色(チンイーソー):数牌1種類だけの手です.このとき,中と頼子のカンは手に含めないで判定します.頭に2,5,8以外の牌も使えます.
  • 海底撈: 山の最後の10枚を除いた最後の4枚の牌どれかでのツモ上がり.繰り返しになりますが,山の最後の4枚は,ツモるだけで,捨てません.また,この牌ではカンできません.このとき碰碰胡などが成立すれば頭が何でも上がれますが,頭が2,5,8でなければ海底撈の役は成立しません.海底撈はツモを含む役なので,ツモの半飜は数えません.
  • 槓上開: カンの補充牌でのツモ上がり.頼子と紅中のカンでの補充を含みます.このとき碰碰胡などが成立すれば頭が何でも上がれますが,頭が2,5,8でなければ,槓上開の役は成立しません.槓上開はツモを含む役なので,ツモの半飜は数えません.
  • 搶槓(チャンカン):ポンに牌を付け加えるカンが上がり牌のとき,その牌であがること.このとき碰碰胡などが成立すれば頭が何でも上がれますが,頭が2,5,8でなければ,搶槓の役は成立しません.
  • 全求人(チェンチウレン):4つ開口しての,裸単騎の振り込み上がり.4開口なので,暗槓すると作れません.このとき碰碰胡などが成立すれば頭が何でも上がれますが,頭が2,5,8でなければ,全求人の役は成立しません.

飜数

基礎点に次のうち上がった人と支払う人の該当する項目をすべて掛け合わせます.
上がりにも支払いにも適用される倍は,自分が上がったときにもらう点を増やすだけでなく,上がられたときの支払も増やします.

(1)上がった人払う人双方の分を数える

  • 開口(カイコウ):1飜(x2) .チー,ポン,明槓.開口が1つ以上あれば1飜.
  • 暗槓,頼子槓:1つにつき2飜(x4).頼子はカンしても捨てても頼子槓になる.
  • 明槓,紅中槓:1つにつき1飜(x2).中はカンしても捨てても紅中槓になる.チャンカンされた槓は成立していないので数えない.
  • 荘家: 小胡なら1飜(x2),大胡なら0飜(x1)

(2)上がった人の分だけを数える

  • 硬胡(インホー): 1飜(x2).頼子が1枚もないか,あってもカンしたか,額面通りに使った手.
  • ツモ: 小胡なら1飜(x2),大胡なら半飜(x1.5).槓上開・海底撈は,ツモを含んだ役なので,この飜はつかない.

(3)払う人の分だけを数える

  • 放銃者:小胡なら1飜(x2),大胡なら半飜(x1.5)

A: 親,開口
B: 放銃,開口
C: 開口,紅中槓1回,頼子槓1回
D: 上がり,小胡,硬胡,開口
とすると,
AからDへ
  1(基本点)x2(Dの硬胡)x2(Dの開口)x2(Aの親)x2(Aの開口)=16
BからDへ
  1(基本点)x2(Dの硬胡)x2(Dの開口)x2(Bの放銃)x2(Bの開口)=16
CからDへ
  1(基本点)x2(Dの硬胡)x2(Dの開口)x2(Cの開口)x2(Cの紅中槓1つ)x4(Cの頼子槓1つ)=64
で,Dは16+16+64=96点を得ます.

包の人は,全員分の点数を1人で肩代わりします.
  • 聴牌していないで,全求人を放銃したら包です.上がりの条件を満たしていない手は聴牌とみなしません.チャンカンか槓上開でないと上がれない手は聴牌ではありません.全求人が成立しなければ包にならないので,将(258)の振込みに限定されます.
  • 3開口以上ある清一色の3つめの開口を泣かせた人は包です.
  • 搶槓された人は包です.

荆州?麻雀(紅中頼子槓の三麻)

三国志でおなじみの荊州のルールとして掲載されていた3人向けバージョンです.荊州は紅中頼子槓の流行地域から少し外れているので,本当に現地で知名度のあるルールなのかわかりませんが,よくできていると思うので,ここに紹介します.4人ルールとの違いだけ書きます.
  • 数牌1種類の1〜9(例えば萬子すべて)と東を除いた96枚を使い,16枚2段の山を作る
  • 後述の發を槓牌にするオプションや口口飜は使わない
  • 8点縛りだが,敗者全員でなく少なくとも1人が縛りを満たせば上がれる
  • 大胡の海底撈はない.したがって最後のツモに関する特別なルールはなく(カンできる,不要牌を捨てる),残り10枚で流局
  • 大胡でも自摸,放銃は1飜
  • 三麻なので手が高くなりやすいが,封頂は変えずに封頂300,金頂400.
  • 風一色と将一色は無条件で金頂

バリエーション

槓牌を増やす.次のように,カンすれば2倍になる牌の枚数を増やす人がいます.
  • 紅中發財頼子槓といって,發も中と同じように扱うルールは広く遊ばれています.
  • 皮子(ピーツ,痞子とも書く)槓.中・發ではなく,頼子表示牌と1つ下の牌を“皮子”として,中のように扱う人もいます.中・發は皮子でない限り普通の牌です.
これらの場合,縛りは16点(4飜)以上が多く,封頂も上げます.
  • 封頂400点
  • 金頂500点
  • 陽光頂600点
  • 三陽700点または800点

口口飜(コウコウファン).開口(チー,ポン,明槓)1つにつき1飜(x2)を与えます.これに対し,開口がいくつでも1飜なのは“開口飜(カイコウファン)”といいます.“口口飜”では,更に封頂を上げ,封頂600,金頂800,陽光頂1000,三陽1200が多いです.

大胡の基礎点
大胡が複合したときの基礎点を,2つなら20,3つなら40とする人もいます.
風一色,将一色,清一色の基礎点を15点にする人(地域?)がいます.奇数で半飜計算はしづらいので,自摸と放銃はプラス5点の20点から倍々計算します.

包.将一色,風一色に清一色と同様の包を認める人もいます.

更新履歴

(2015.8.25)サイコロの使い方が違うので書き加えました.「頼子」,「飜」の文字づかいを揃えました.上限を整理しました.
(2015.9.8)飜しばり,上限のバリエーション,一色役の包,痞子について書き加えました.
(2015.9.9)全求人の頭の制限について加筆し,全求人の包は258の振り込みでしか成り立ち得ないと書き直しました.点数計算の硬胡の定義で頼子を捨てると認められないと書いてあった誤りを修正しました.上がりのしばりは,飜でなく点数の下限設定に修正しました.小胡の頼子の枚数にはカンした頼子も含まれることを追記しました.食い,泣きを意味する言葉に“開門”と“開口”の両方を使っていたのを“開口”に統一しました.
(2015.12.22)対々胡の頼子単騎のように何でも上がれる待ちは自摸でしか上がれないことを書き加えました.席決めと初めの親の決め方を補足しました.大胡のうち手の形ではなく,上がり方である槓上開,搶槓,海底撈は全求人と同じように頭が258でないと認められないと修正しました.
(2016.3.11)頭が258でなければならない手で,頼子単騎で258を待てるのは全求人だけではないので,全求人だけにあったこの説明の重複を削りました.
(2016.3.14)何でも上がれる手はツモ以外にチャンカンでも上がれることを書き加えました.一色役と小胡の制限で,カンした中と頼子は除いて考えることを明記し,2枚以上頼子があるときは余分な頼子を捨てないと小胡で上がれないとしていたのを改めました.
(2016.3.19)一色役に頼子を混ぜて良いことを明記しました.痞子の表記を皮子に変えました.全求人の258に関するルール記述を他の役に合わせました.
(2016.3.23)主な参考資料に従い,頼子はカンしても捨てても2飜を基本形にするとともに,頼子槓の飜数のバリエーションについて書き加えました.槓上開ではツモの半飜は付かないと改めました.チャンカンされた槓は不成立であることを追記しました.
(2016.3.24)捨て牌は乱雑に置くこと,さらした牌と捨てた中・頼子は左側の隅に置くことを明記しました.
(2016.3.26)金頂の記述が上限の引き上げにも読めたので改めました.海底撈も槓上開と同じくツモを含む役なので,ツモの飜が付かないことを追記しました.
(2016.3.28)包の規則でチャンカンか槓上開の助けを借りないと上がれない手は聴牌とみなさないことを書き加えました.
(2016.3.31)封頂の違いや口口翻の記述をバリエーションに移動しました.
(2016.4.2)頼子表示牌の置き場所について書き忘れていたので,補足しました.
(2016.4.4)中と頼子の使い方に点数計算の記述が混ざっていたのを削除しました.
(2018.9.24)海底撈などの成立条件の説明を誤解の余地が少ないように書き直しました(頭が自由な手なら,258以外の頭だとこれらの役は成立しないが,上がることは可能).
(2018.9.29)荊州?(紅中頼子槓エリアではないので当地で遊ばれているのかどうか怪しいが,ルールそのものは良い三麻アレンジなので)の三麻ルールを追記しました.
(2018.10.1)各種の封頂(満貫)の記述をすべて基本ルールに移動しました.高い縛りだと大胡も縛りの対象になることを追記しました.
(2018.10.4)ドラがないことと,何回カンしても流局しないことを追記しました.
(2018.10.6)点数計算の概要が飜数をかけるとなっていたのを,飜数の回数2倍すると正確な表現に改めました.大胡の基礎点のバリエーションを追加しました(鄂州のもの)
(2018.12.10)皮子の記述を七皮四頼のルールに従って固定槓牌なしに修正しました.実際に牌で遊ぶことを前提にしたルール記述で頼子槓の飜数を2にしていないものがないので,頼子槓の飜数のバリエーションを削除しました.

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