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2019年1月6日日曜日

武漢の麻雀(省略なし版)

中国各地のローカルルールの中でも個人的に気に入っている武漢の麻雀です.以前に書いたルール紹介は,なぜか他のローカルルールに比べ閲覧数が極端に少ないので,バリエーションの紹介を控え気味にし,また基本的な麻雀のルールを省略しないで書き下しました.メインで紹介するルールは,厳密にいえば「紅中發財頼子槓」です.

道具

136枚の麻雀牌(パイ,またははい).1から9の筒子(この語の中国音はトンヅだが日本語では餅子の中国音ピンヅで呼ばれる),1から9の策子(ソーヅ),1から9の萬子(ワンヅ)の3種類の数牌と東(トン)南(ナン)西(中国音はシーだが習慣的にシャーと呼ばれる)北(ペイ),中(チュン),發(はつ,中国音で呼ばれることはまれ),白(はく,たまに中国名のパイパンも使われる)の字牌からなり,すべての牌が4枚ずつある.
サイコロ2つ.
紙幣・硬貨(を模したもの)を1人あたりの事前に決めた分量(例500単位)×4.

席決め

任意の1人,例えば年長者ではない人が,東南西北を各1枚ずつ抜き取り,裏向きにしてよく混ぜる.この中から1人1枚ずつ好きな牌を取る.東を引いた人はサイコロ2つを振る.自分を1として反時計回りに2つの目の合計まで数えた位置の席に着席する(右隣りが2,向かいが3,左隣りが4,1巡して自分に戻ってきて5のように数える).他の3人は,反時計回りに東南西北の順になるように着席する.
電動卓では,東南西北を1枚ずつ集めるのが面倒なので,次の方法で東南西北を決めてもよい.全員が,自分の前の山から牌を1枚引き,引いた牌の数字が大きい順に東南西北とする.字牌は数牌より下で,上から順に東南西北中發白とする.数が同じなら上から順に筒,索,萬として種類を比べる.同じ牌を引いた人がいる場合,同じ牌を引いた人だけが,もう1枚自分の山から牌を引いて,同点だった人の間の順番を決める.

手の開始

4人で牌を伏せてよく混ぜたら,牌の山を築く. 各人が,机の縁に沿って横17枚の裏向きの牌の列を2列作る.2列の牌を中央に向けて押し出し,自分に近い列を遠い列の上に乗せる. 人によっては,右手側を左手側より前になるように斜めに押し出す.

最初の親は東の人が務める.それ以後は,親が4周して席替えし直すまでは,親が上がるか流局したら親を変えず,親以外の人が上がったら親の右隣りの人が次の親となる.

牌を配る(配牌)

親が2つのサイコロを振る.親を1として反時計回りに2つの目の合計まで数えた席の人が,自分の山を右端を1として右から左へ2つの出目のうち小さい方まで数え,最後に数えた位置と,その次の間に切れ目を作る.切れ目の時計回り側が山の先頭,反時計回り側が山の末尾になる.山はゲームの進行とは逆方向の時計回りに使うことに注意する.また,牌を1枚ずつ取るときは,先頭からでも末尾からでも,上の牌を下の牌より先に取る.親から順に山の先頭から2列4枚の牌を取ることを3回繰り返し,12枚の牌を取る.ついで,親から順に山の先頭から牌を1枚ずつとる.最後に親が山の先頭から1枚牌を取る(全員が1枚ずつ取るときにこの1枚を一緒に先にとる方が普通).
牌は,横1列に並べ,背を相手側に向けて縦向きに起こし,自分以外の人に見えないようにする.

頼子(ライツ)

牌を配り終えたら,山の先頭の牌を表向きにし,山の末尾の近くに全員に見えるようにのせる.この牌は頼子皮(ライツピー)という.頼子皮が筒子,策子,萬子なら,同じ種類で数が1つ大きい牌が頼子,9のときは1,字牌なら,東南西北中發白の順で次の牌,白のときは戻って東が頼子になる.中と發は頼子になれないので,頼子皮が北か中のときは,白が頼子になる.日本のドラのルールに慣れている人は,東南西北と中發白を分けないことと,中發白の順番が日本と逆なことに注意する.
頼子は,上がった手の中に限り,中發以外の何にでも化けられるワイルドカードである.

ゲームの目的

ゲームの目的は上がること.上がるには,カン以外でさらした牌と手の牌に以下のいずれかを加えて頭(あたま)と4メンツを作る.
  • ツモ順かカンの補充で山から引いた牌
  • 他人が捨てた牌
  • ポンにカンで足そうとした牌
ここで
  • 頭は同じ牌2枚
  • メンツは順子(シュンツ)か刻子(コーツ)のいずれか.なお4枚のカンは,ルール上3枚の刻子とカン1枚が一緒になったものとして扱う
  • 順子は同じ種類で数字が続きの牌3枚,例えば3索4索5索.9と1は続きでない
  • 刻子は同じ牌3枚,例えば北北北
例外的な上がり方や上がりの他の条件は,後で説明する.

進行

順番の行動

親から始めて,反時計回りに順番がくる.順番はツモ順ともいう.ツモ順には,手に14枚の牌がある親の最初のツモ順でない限り,山の先頭から1枚牌を引く(ツモ).この牌で上がれないか,上がりたくない場合,牌を手の中に入れ,手から不要な牌を1枚捨てる.捨て牌は,何を捨てたか全員に分かるように表向きに置いた後,誰がいつ何を捨てたか覚えていなければ分からないように,机の中央近くに乱雑に集められた中に押し出す.中,發,頼子を捨てたときは,机の中央でなく,自分がチー・ポン・カンした牌の置き場に移す.これは,捨てた中,發,頼子を点数計算でカンと同じように扱うからである.

チー

手の中の牌2枚と左隣りの人が捨てた牌で順子になる場合,チーと発声することで順子を作れる.チーを言ったら手の中の不要な牌を1枚捨て,手の中の牌2枚を表向きにして,左隣りの人が捨てた牌と合わせて3枚をさらす.牌をさらす場所は,手の左側,あるいは右側,あるいは手の背中側のうち使いやすい1個所を選び,一度選んだ場所は変えない.なお牌をさらすとき,誰からどの牌をもらったかは示さない.チーのあと,ツモ順はチーした人の右隣りに移る.チーした順子から牌を手に戻せない.チーした順子に牌を付け加えられない.チーした順子から牌を捨てられない.頼子入りのチーはできない.捨てられた頼子はチーできない.

ポン

手の中に中,發以外の同じ牌が2枚あり,他の3人の誰かがそれと同じ牌を捨てた場合,ポンと発声することで刻子を作れる.ポンを言ったら手の中の不要な牌を1枚捨て,手の中の牌2枚を表向きにして,捨てられた牌と合わせて3枚をさらす.なお牌をさらすとき,誰からどの牌をもらったかは示さない.ポンのあと,ツモ順はポンした人の右隣りに移る.ポンされた牌を捨てた人とポンした人の間の人のツモ順は飛ばされる.同じ捨て牌にチーとポンがあった場合,ポンが勝つ.ポンした刻子から牌を手に戻せない.ポンした刻子から牌を捨てられない.頼子入りのポンはできない.捨てられた頼子はポンできない.

カン

カン(槓)には4通りある.
(1)紅中槓(ホンチュンカン),發財槓(ファーツァイカン),頼子槓(ライツカン).自分の番に,手の中に中,發,頼子があれば(山から引いた牌でもそうでなくてもよい),カンと発声し,この1枚を表向きにさらす.
(2)暗槓(アンカン).自分の番に,手の中に中,發以外の同じ牌が4枚あるとき(うち1枚は山から引いた牌でもそうでなくてもよい),カンと発声し,この4枚を伏せてさらす.この4枚は手が終わったとき表にする.
(3)明槓(ミンカン)その1.手の中に中,發以外の同じ牌が3枚あり,他の3人の誰かがそれと同じ牌を捨てた場合,カンと発声し,手の中の牌3枚を表向きにし,捨てられた牌と合わせて4枚をさらす.なお牌をさらすとき,誰からどの牌をもらったかは示さない.
(4)明槓(ミンカン)その2.自分の番にポンでさらした牌と同じ牌が手にあるとき(普通は山から引いた牌だがそうでなくてもよい),カンと発声し,その牌をポンに加えてさらす.
(1)から(4)のどの場合も,カンをさらしたら,山の末尾から牌を1枚引いて手の枚数を戻してから,不要牌を1枚捨てる.カンのあと,ツモ順はカンした人の右隣りに移る.(3)のときカンされた牌を捨てた人とカンした人の間の人のツモ順は飛ばされる.同じ捨て牌にチーと(3)のカンがあった場合,カンが勝つ.カンから牌を手に戻せない.カンから牌を捨てられない.頼子入りの4枚カンはできない.捨てられた頼子はカンできない.

上がり

手の牌とチー・ポンした牌に,
  • ツモ順かカンの補充で山から引いた牌(ツモ上がりという)
  • 他人が捨てた牌(振り込みまたは放銃という)
  • ポンにカンで足そうとした牌(チャンカンという)
のどれかを加えると上がれる場合,上がりを意味する発声とともに,手の牌を倒して公開することで上がれる.ツモのときツモ牌は手に入れないで,手のそばに表向きにして置く.振り込み上がりは,チー・ポン・カンに勝つ.手の勝者は1人だけで,振り込みかチャンカンで同じ牌に対して2人以上が上がりを宣言した場合,上がり牌を捨てた人かカンを試みた人から一番ツモ順が近い人の上がりとなる.上がったら,支払いを行い,次の手を始める.なお,フリテンやそれに類する制限はないので,上がり牌を捨てていても見逃しても,ツモ順が来るか飛ばされるのを待たずに,振り込みでもチャンカンでも上がれる.
上がるには,次の条件をすべて満たさなければならない.
  • 中と發がない.中と發は,すべてカンするか捨てる
  • 1つ以上開口(チー,ポンまたは明槓)する.たとえツモ上がりでも,4メンツと頭が不要な風一色,将一色でも,開口なしに上がろうとしたら反則である
  • 風一色か将一色でなければ,手の牌,カン以外のさらした牌ともう1枚(待ちという)で頭(あたま)と4メンツを作る
  • 一部の役を除き頭は,2か5か8でなければならない.頭にこの制約がある場合,頼子2枚の頭は,頼子の額面が2か5か8でないと認められない.2か5か8と頼子の組は正当な頭である
  • 役がない場合,頼子が1枚か0枚.頼子を額面通りに使ってもこの制限からは逃れられない.頼子が2枚以上あり役がないなら,余分な頼子をカンするか捨てなけば上がれない
  • 誰からもらう点数も16点以上ある.これを16点しばりとも4番(ファン)しばりともいう.この4番は16点の同義語で,役があるときにも4番を要求するわけではない.

また頼子を使った上がり方には,次のような制限がある.
  • 刻子4つが完成していて残りが頼子1枚で頭を待つ場合のように任意の牌で上がれる手は,ツモ(カンの補充牌を含む)でしか上がれない
  • 捨てられた頼子では振り込み上がりできない.頼子入りのメンツを頼子でない捨て牌で完成させて上がることはできる

海底撈と流局

山は頼子皮と(頼子皮を含めないで数えて)10枚を使わずに残す.山の残りが14枚になったら海底撈(ハイティラオ)といい,全員が順番に1枚ずつ山から牌を引き,それで上がれなかったら牌を捨てない.最後の順番の人だけでなく,4人全員が海底撈になったら牌を捨てない.また海底撈になったらカンはできない.4人とも海底撈で上がれなかったら流局(荒荘,ファンチャン)である.流局では,点数の受け渡しはなく,親を変えずに次の手を始める.

上がりの支払い

包(パオ,責任払い)が成立しない限り,上がらなかった3人が,それぞれ,上がった人に支払う.払う額は,上がった人と自分の番数(ファンすう)を足した回数だけ役の点数を2倍した結果を10(1分という)または20(5厘という)で割って1の位へ四捨六入した結果である.例えば小胡の7番だと1分なら128÷10=12.8で13,5厘なら128÷20=6.4で6を払う.なお,ファンは日本では飜の字を当てるが,中国語では,旧字体を使う香港でも番と書く.
役の点数は
  • 小胡(シャオホー):1.役のない上がり
  • 大胡(ターホー):役1つにつき10
  • なお胡の字は正しくは和だが,和は普通にはホー(hu)と読めないので,胡や糊の字を当てることが圧倒的に多い.
役は,次の通り.
  • 風一色(フォンイーソー):カンを除くすべての牌が字牌.頭も4メンツも不要だが開口は必要.額面が字牌でない頼子があってよい.
  • 将一色(チャンイーソー):カンを除くすべての牌が2か5か8.頭も4メンツも不要だが開口は必要.額面が2,5,8でない頼子があってよい.
  • 清一色(チンイーソー):カンを除くすべての牌が1種類の数牌.頭は258でなくてよい.額面の種類が異なる頼子があってよい.
  • 碰碰胡(ポンポンホー):対対胡(トイトイホー)の俗称.4つのメンツがすべて刻子.頭は258でなくてよい.
  • 槓上開(カンシャンカイ):カンで山の末尾から引いた牌で,4メンツと258の頭の形で上がる.このとき対対胡などの役があれば,4メンツと258の頭でなくても上がれるが,槓上開の役は成立しない.
  • 海底撈(ハイティラオ):海底撈の牌で4メンツと258の頭の形で上がる.このとき対対胡などの役があれば,4メンツと258の頭でなくても上がれるが,海底撈の役は成立しない.
  • 搶槓(チャンカン):ポンに付け加えてカンしようとした牌で4メンツと258の頭の形で上がる.このとき対対胡などの役があれば,4メンツと258の頭でなくても上がれるが,搶槓の役は成立しない.
  • 全求人(チェンチウレン):4つのメンツをチーかポンし,258の頭の振り込みで上がる.このとき対対胡などの役があれば,258の頭でなくても上がれるが,全求人の役は成立しない.
番数は,払う人と上がった人の該当するものをすべて加える
(1)全員につく番
  • 開口:1番.ポン,チーしていたら,ポン・チーの数を問わず1番
  • 紅中槓,發財槓:1枚につき1番.捨てた中發にもカンと同様に番がつく
  • 明槓:1つにつき1番.搶槓されたカンは未成立なのでこの番はつかない
  • 頼子槓:1枚につき2番.捨てた頼子にもカンと同様に番がつく
  • 暗槓:1つにつき2番
  • 荘家(おや):親なら小胡では1番,大胡では0番
(2)上がられた人だけにつく番
  • 放冲(ふりこみ):振り込み上がりの上がり牌を捨てた人は,小胡では1番,大胡では半番(1.5倍)
(3)上がった人だけにつく番
  • 自摸(ツモ):ツモ上がりで上がった場合,小胡では1番,槓上開と海底撈では0番,他の大胡では半番(1.5倍)
  • 硬胡(インホー):1番.カン以外の頼子が1枚もないか額面通りに使った手.黑的(ヘイダ)ともいう
例1
A: 親,開口,發財槓1回
B: 放銃,開口
C: 開口,紅中槓1回,頼子槓1回
D: 上がり,小胡,硬胡,開口
とすると,
AからD
  1(小胡)x2(Dの硬胡)x2(Dの開口)x2(Aの親)x2(Aの開口)x2(Aの發財槓)=32
BからD
  1(小胡)x2(Dの硬胡)x2(Dの開口)x2(Bの放銃)x2(Bの開口)=16
CからD
  1(小胡)x2(Dの硬胡)x2(Dの開口)x2(Cの開口)x2(Cの紅中槓1つ)x4(Cの頼子槓1つ)=64

例2
A: 開口
B: 親,開口
C: 開口,發財槓1回,碰碰胡,槓上開,自摸
D: 開口,紅中槓2回
AからC
[10(碰碰胡)x1.5(自摸)+10(槓上開)x1(自摸)]x2(Cの開口)x2(Cの發財槓)x2(Aの開口)=200
BからC
[10(碰碰胡)x1.5(自摸)+10(槓上開)x1(自摸)]x2(Cの開口)x2(Cの發財槓)x1(大胡なので親の倍なし)x2(Bの開口)=200
DからC
[10(碰碰胡)x1.5(自摸)+10(槓上開)x1(自摸)]x2(Cの開口)x2(Cの發財槓)x2(Dの開口)x4(Dの紅中槓)=800→封頂400

封頂(フォンティン)

点数の上限を封頂という.封頂以上の点はすべて封頂になる.比較的よく使う封頂は400点である.封頂の点数は常に変わらないが,上がらなかった3人の点数や開口状態によって払う点は次のように変わる.
  • 金頂(チンティン):3人全員が封頂の場合.400点でなく500点を払う.風一色は無条件で金頂にする人がいる
  • 陽光頂(ヤンカンティン)または光明頂(カンミンティン):金頂のとき開口していない人.500点でなく600点を払う
  • 三陽開泰(サンヤンカイタイ):3人全員が陽光頂の場合.600点でなく800点(封頂の倍)を払う

次の人は,3人分の支払いを1人で肩代わりする.
  • 3開口以上ある清一色の3つ目の開口をポン・チーされた人
  • 搶槓された人
  • 聴牌(テンパイ)してないで全求人に振り込んだ人.聴牌は,振り込みかツモで上がれる手のこと.上がりの条件を満たさない手は聴牌でない.チャンカンか槓上開でないと上がれない手は聴牌でない.全求人が成立しなければ包にならないので,258の振込みに限られる

反則

大相公(ターシャンコン),小相公(シャオシャンコン).手の牌が多すぎ(大相公),少なすぎ(小相公)の人は,その手の間ゲームに参加し続けるが,上がれない.
自分のツモ順でないのにツモるか間違った場所の牌をツモった人は,その手の間ゲームに参加し続けるが,上がれない.
間違った上がり(チョンボ)は,上がろうとした手の点を逆方向に払う.

バリエーション

  • 七皮四頼(チーピースーライ):頼子皮とその1つ前の牌を中發のように扱い,中發は他の字牌と同様に扱う.例えば,頼子皮が5策なら45策,東なら白と東がカン専用牌になる.本文のルールよりカン専用牌が1枚少なくなるが,それほど大きな違いは感じられない.むしろ,使いづらい牌が頼子皮により変わることに慣れが必要である
  • 紅中頼子槓(ホンチュンライツカン):紅中發財頼子槓のもとのルール.中だけが槓牌で,發は他の字牌と同様に扱う.8点(3番)しばり,封頂300,金頂400,陽光頂500,三陽600
  • 口口番(コウコウファン):開口1つにつき1番を与える.それに対し,本文のように,開口したら,開口数を問わずに1番にするのは開口番(カイコウファン)という.32点(5番)しばり,封頂600,金頂800,陽光頂1000,三陽1200

2018年10月6日土曜日

武漢の「紅中頼子槓」麻雀

ルール名は,ホンチュン・ライツカンと読みます.得点計算がユニークで,「頼子(ライツ)」というワイルドカードがある麻雀です.高い手を目指す人は高いリスクを負う公平なインフレシステムが魅力です.ワイルドカードは一般的には「混(ホン)」,北京では「混兒(ホワール)」と呼ばれ,ワイルドカードを使うルールは,北京や浙江・福建・江西省各地などにも分布しています.なお,頼子は癩子と表記する方が多いかもしれませんが,画数も多く,字義も良くないのであえてこうします.

主な参考資料は,「武漢麻將紅中頼子槓超詳細入門教程」です.この資料は,「紅中頼子槓」のインフレ版「紅中發財頼子槓」を解説しているので,上限の点数,大役複合時の点数は他の資料も参考にしました.

道具

麻雀牌136枚.萬子,索子,筒子と東南西北白發中.花牌は使いません.
サイコロ2つ.

席決め

伝統的な方法と,電動卓向けの新しい方法があります.
伝統的な方法は,東南西北1枚ずつ4枚を伏せてよく混ぜ,1人1枚ずつ好きな牌を取ります.東を引いた人がサイコロ2つを振って出た目の合計の席が東の席です.反時計回りに東南西北の順になるように席を変えます.
新しい方法は,自分の目の前の山から牌を1枚とり,数字の大きい順に東南西北にします.字牌は数牌より下で,上から順に東南西北中發白です.数が同じ場合,種類を比べます.上から筒,索,萬の順です.同じ牌を引いた人は,もう1枚自分の山から牌を引いて,同じように比べ,同点だった人の間の順位を決めます.東がサイコロを振る以降は伝統的な方法と同じです.

配牌

サイコロは2つで,牌を取り始める山は2つの目の合計で決めますが,山を分ける位置は,合計でなく小さな方の目だけを使います.例えば,2-5なら,合計の7にあたる親の対面が,小さい方の目が2なので右から2列目と3列目の間に切れ目を作り,親は3列目と4列目を取ります.親がチョンチョンして残った下段の牌を表向きにし,牌の山の上にのせます.山の末尾近くに置くことが多いですが,カン補充牌を多く使うルールなので,特にどこに置くという決まりはなく,全員に頼子が何か分かればよいです.この牌が「頼子」表示牌です.この牌が数牌なら,同じ種類で数が1つ大きい牌,9のときは1,字牌なら,東南西北中發白の順で次の牌,白のときは戻って東が頼子です.風と三元牌を分けないことと,三元牌の順番が日本語と逆なことに気をつけてください.なお中は決して頼子になれないので,表示牌が北のときは,發が頼子です.(決め方が似ている頼子があるので書いていませんでしたが念のため.ドラはありません)

進行

最初の親は,席ぎめで東になった人です.流局か親が上がると連荘です.子が上がると,親の下家(右隣)が次の親です.流局するのは,牌の山を使い切って誰も上がらなかったときだけです.
1回のゲームは,親4周(一荘戦)です.続けるときは,席決めからやり直します.
参考までに,“一分(点0.1元)”のレートで“紅中發財頼子槓”の開口飜の一荘戦を行うと,普通の勝敗は200〜300元,荒れると1000元近くになります.一荘戦を3回すると,普通は500元前後,荒れると800元から1200元,おとなしいと200元前後です.
捨て牌は,誰が何を捨てたか覚えておかないと分からないように,机の中央に乱雑に置きます.
チー・ポン・カンした牌と,1枚でカンするか捨てた中・頼子は,左手側の隅から1列または何列かに分けて並べます.自分に面した縁に沿って並べる人もいます.
チー・ポン・カンで,誰からどの牌をもらったかは示しません.
カンを何回しても,流局になりません.

暗槓は4枚を伏せてさらし,手が終わったときに公開します.
中は,ポンも4枚揃えてのカンもできません.中が手にあるか山から引いたら,1枚でカンのようにさらし,山の末尾から補充牌を引けます.また,中を捨てても構いません.カンしても,捨てても,紅中槓となります.
頼子は,中を除くどんな牌の代わりにもなります.頼子を含むメンツは,チー・ポン・カンできません.上がるときは頼子入りのメンツや頭を捨て牌で完成できますが,捨てられた頼子では上がれません.また頼子は,中と同じように1枚でカンできます.頼子を捨てても構いません.カンしても捨てても頼子槓となります.
牌の山が残り14枚(7列)になったら,1人1回1枚ずつ,順に山からツモるだけで,牌を捨てません.このときカンはできません.牌の山が残り10枚になっても誰も上がらなければ,流局です.これ以外の流局はありません.
武漢での10000人麻雀大会の写真も参考にしてください.中だけでなく發もカンしている人がいるので,“紅中發財頼子槓”であることがわかります.また,牌をさらす場所が人によって違うこと,頼子表示牌を山の中の牌を表に返して決めている卓が1つあるなど,作法の細かい違いにも気づけると思います.

上がり

上がるには,次の条件を満たす必要があります.
  • 手に中がなく,あった中はすべてカンするか捨ててある.
  • 少なくとも1つ“開口(カイコウ)”している.“開口”は,食い,泣きのことで,チー・ポンまたは明槓のどれでもよい.暗槓,紅中,頼子のカンは開口に数えない.
  • 風一色でも将一色でもない場合,4つのメンツと1つの頭がある.
  • 対対胡,風一色,将一色,清一色のどれでもない場合,頭が2か5か8.頼子2枚の頭は,額面が2,5,8でなければ認められない.頼子1枚の単騎で,任意の2,5,8を待つのは,認められる.
  • 小胡の場合,手にある頼子が1枚か0枚.このとき額面どおりで使っている頼子は数え,カンしている頼子は数えない.小胡を聴牌した手に頼子が1枚あって,頼子をツモったら,上がれる手を維持するためには,どちらか1枚を捨てるかカンしなければならない.
  • 上がる人と他の3人それぞれの間の点数が,あらかじめ決めた下限,例えば8点や16点以上なければ上がりを認めないことが多い.8点,16点でなく3飜,4飜ということもあり,この場合,大胡なら,これらの飜数がなくても上がれる (4飜は16点の同義語なので,大胡なら10点と開口で少なくとも20点はある).後述する紅中發財頼子槓や口口番では,さらに高い32点 (5飜) 縛りがあり,この場合,大胡でも点数に気を付ける必要があるが,実際は損失を抑えるために,どれだけ開口と槓牌を増やさないか気にしなければならないことの方が多い.

対対胡での頼子の単騎待ちのように,どんな牌でも上がれる待ちは,自摸か搶槓(チャンカン)でしか上がれません.
上がり牌を見逃した場合,自分のツモ順を待たないでも上がれます.なお,日本以外のほとんどのルールと同じく,上がり牌を自分で捨てていても振り込みで上がれます(振り聴なし)
同じ捨て牌で2人以上が同時に上がることを認めません.この場合,捨て牌を捨てた人から順番が一番近い人の上がりとなります(頭ハネ).

点数計算

包でなければ,上がった人以外の3人が,それぞれ上がった人に点を払います.支払う点数は,基礎点(起翻)を自分の飜数と上がった人の飜数を合わせた回数だけ2倍した点です.スコアカード,ポーカーチップや点棒の類は使わず1手ごとに精算するので,一分(点0.1)なら10分の1,五厘なら20分の1し,小数点以下を四捨六入した額を現金や現金に見立てたトランプのカードで受け渡しします.
1人あたりの支払い点数には上限(封頂,フォンティン)があり,点数計算の結果が上限以上なら,上限の点を払います.
普通の上限は,
  • 封頂 300点
  • 3人全員が封頂の場合は金頂(チンティン)といい,400点負けにします.
  • 金頂のとき開口していない人は陽光頂(ヤンクワンティン),光明頂(クワンミンティン)などといい,500点負けにします.
  • 3人全員が陽光頂のときは三陽(サンヤン)といい,600点負けにします.

基礎点

  • 小胡(シャオホー):1点
  • 大胡(ターホー):上がった手で該当するもの1つにつき10点

小胡(シャオホー)

  • 平胡または屁胡(ピーホー).大胡でない手.

大胡(ターホー)

  • 碰碰胡: 対対胡(和)です.頭に2,5,8以外の牌も使えます.
  • 風一色(フォンイーソー):風か發か白だけの手.このとき,中と頼子のカンは手に含めないで判定します.14枚がこの条件を満たし1開口あれば,4面子も1雀頭も不要で,風發白の何でも上がれます.他の一色役でもそうですが,化けた頼子を混ぜて構いません.
  • 将一色(チャンイーソー):2,5,8だけの手.このとき,中と頼子のカンは手に含めないで判定します.14枚がこの条件を満たし1開口あれば,4面子も1雀頭も不要で,258の何でも上がれます.
  • 清一色(チンイーソー):数牌1種類だけの手です.このとき,中と頼子のカンは手に含めないで判定します.頭に2,5,8以外の牌も使えます.
  • 海底撈: 山の最後の10枚を除いた最後の4枚の牌どれかでのツモ上がり.繰り返しになりますが,山の最後の4枚は,ツモるだけで,捨てません.また,この牌ではカンできません.このとき碰碰胡などが成立すれば頭が何でも上がれますが,頭が2,5,8でなければ海底撈の役は成立しません.海底撈はツモを含む役なので,ツモの半飜は数えません.
  • 槓上開: カンの補充牌でのツモ上がり.頼子と紅中のカンでの補充を含みます.このとき碰碰胡などが成立すれば頭が何でも上がれますが,頭が2,5,8でなければ,槓上開の役は成立しません.槓上開はツモを含む役なので,ツモの半飜は数えません.
  • 搶槓(チャンカン):ポンに牌を付け加えるカンが上がり牌のとき,その牌であがること.このとき碰碰胡などが成立すれば頭が何でも上がれますが,頭が2,5,8でなければ,搶槓の役は成立しません.
  • 全求人(チェンチウレン):4つ開口しての,裸単騎の振り込み上がり.4開口なので,暗槓すると作れません.このとき碰碰胡などが成立すれば頭が何でも上がれますが,頭が2,5,8でなければ,全求人の役は成立しません.

飜数

基礎点に次のうち上がった人と支払う人の該当する項目をすべて掛け合わせます.
上がりにも支払いにも適用される倍は,自分が上がったときにもらう点を増やすだけでなく,上がられたときの支払も増やします.

(1)上がった人払う人双方の分を数える

  • 開口(カイコウ):1飜(x2) .チー,ポン,明槓.開口が1つ以上あれば1飜.
  • 暗槓,頼子槓:1つにつき2飜(x4).頼子はカンしても捨てても頼子槓になる.
  • 明槓,紅中槓:1つにつき1飜(x2).中はカンしても捨てても紅中槓になる.チャンカンされた槓は成立していないので数えない.
  • 荘家: 小胡なら1飜(x2),大胡なら0飜(x1)

(2)上がった人の分だけを数える

  • 硬胡(インホー): 1飜(x2).頼子が1枚もないか,あってもカンしたか,額面通りに使った手.
  • ツモ: 小胡なら1飜(x2),大胡なら半飜(x1.5).槓上開・海底撈は,ツモを含んだ役なので,この飜はつかない.

(3)払う人の分だけを数える

  • 放銃者:小胡なら1飜(x2),大胡なら半飜(x1.5)

A: 親,開口
B: 放銃,開口
C: 開口,紅中槓1回,頼子槓1回
D: 上がり,小胡,硬胡,開口
とすると,
AからDへ
  1(基本点)x2(Dの硬胡)x2(Dの開口)x2(Aの親)x2(Aの開口)=16
BからDへ
  1(基本点)x2(Dの硬胡)x2(Dの開口)x2(Bの放銃)x2(Bの開口)=16
CからDへ
  1(基本点)x2(Dの硬胡)x2(Dの開口)x2(Cの開口)x2(Cの紅中槓1つ)x4(Cの頼子槓1つ)=64
で,Dは16+16+64=96点を得ます.

包の人は,全員分の点数を1人で肩代わりします.
  • 聴牌していないで,全求人を放銃したら包です.上がりの条件を満たしていない手は聴牌とみなしません.チャンカンか槓上開でないと上がれない手は聴牌ではありません.全求人が成立しなければ包にならないので,将(258)の振込みに限定されます.
  • 3開口以上ある清一色の3つめの開口を泣かせた人は包です.
  • 搶槓された人は包です.

荆州?麻雀(紅中頼子槓の三麻)

三国志でおなじみの荊州のルールとして掲載されていた3人向けバージョンです.荊州は紅中頼子槓の流行地域から少し外れているので,本当に現地で知名度のあるルールなのかわかりませんが,よくできていると思うので,ここに紹介します.4人ルールとの違いだけ書きます.
  • 数牌1種類の1〜9(例えば萬子すべて)と東を除いた96枚を使い,16枚2段の山を作る
  • 後述の發を槓牌にするオプションや口口飜は使わない
  • 8点縛りだが,敗者全員でなく少なくとも1人が縛りを満たせば上がれる
  • 大胡の海底撈はない.したがって最後のツモに関する特別なルールはなく(カンできる,不要牌を捨てる),残り10枚で流局
  • 大胡でも自摸,放銃は1飜
  • 三麻なので手が高くなりやすいが,封頂は変えずに封頂300,金頂400.
  • 風一色と将一色は無条件で金頂

バリエーション

槓牌を増やす.次のように,カンすれば2倍になる牌の枚数を増やす人がいます.
  • 紅中發財頼子槓といって,發も中と同じように扱うルールは広く遊ばれています.
  • 皮子(ピーツ,痞子とも書く)槓.中・發ではなく,頼子表示牌と1つ下の牌を“皮子”として,中のように扱う人もいます.中・發は皮子でない限り普通の牌です.
これらの場合,縛りは16点(4飜)以上が多く,封頂も上げます.
  • 封頂400点
  • 金頂500点
  • 陽光頂600点
  • 三陽700点または800点

口口飜(コウコウファン).開口(チー,ポン,明槓)1つにつき1飜(x2)を与えます.これに対し,開口がいくつでも1飜なのは“開口飜(カイコウファン)”といいます.“口口飜”では,更に封頂を上げ,封頂600,金頂800,陽光頂1000,三陽1200が多いです.

大胡の基礎点
大胡が複合したときの基礎点を,2つなら20,3つなら40とする人もいます.
風一色,将一色,清一色の基礎点を15点にする人(地域?)がいます.奇数で半飜計算はしづらいので,自摸と放銃はプラス5点の20点から倍々計算します.

包.将一色,風一色に清一色と同様の包を認める人もいます.

更新履歴

(2015.8.25)サイコロの使い方が違うので書き加えました.「頼子」,「飜」の文字づかいを揃えました.上限を整理しました.
(2015.9.8)飜しばり,上限のバリエーション,一色役の包,痞子について書き加えました.
(2015.9.9)全求人の頭の制限について加筆し,全求人の包は258の振り込みでしか成り立ち得ないと書き直しました.点数計算の硬胡の定義で頼子を捨てると認められないと書いてあった誤りを修正しました.上がりのしばりは,飜でなく点数の下限設定に修正しました.小胡の頼子の枚数にはカンした頼子も含まれることを追記しました.食い,泣きを意味する言葉に“開門”と“開口”の両方を使っていたのを“開口”に統一しました.
(2015.12.22)対々胡の頼子単騎のように何でも上がれる待ちは自摸でしか上がれないことを書き加えました.席決めと初めの親の決め方を補足しました.大胡のうち手の形ではなく,上がり方である槓上開,搶槓,海底撈は全求人と同じように頭が258でないと認められないと修正しました.
(2016.3.11)頭が258でなければならない手で,頼子単騎で258を待てるのは全求人だけではないので,全求人だけにあったこの説明の重複を削りました.
(2016.3.14)何でも上がれる手はツモ以外にチャンカンでも上がれることを書き加えました.一色役と小胡の制限で,カンした中と頼子は除いて考えることを明記し,2枚以上頼子があるときは余分な頼子を捨てないと小胡で上がれないとしていたのを改めました.
(2016.3.19)一色役に頼子を混ぜて良いことを明記しました.痞子の表記を皮子に変えました.全求人の258に関するルール記述を他の役に合わせました.
(2016.3.23)主な参考資料に従い,頼子はカンしても捨てても2飜を基本形にするとともに,頼子槓の飜数のバリエーションについて書き加えました.槓上開ではツモの半飜は付かないと改めました.チャンカンされた槓は不成立であることを追記しました.
(2016.3.24)捨て牌は乱雑に置くこと,さらした牌と捨てた中・頼子は左側の隅に置くことを明記しました.
(2016.3.26)金頂の記述が上限の引き上げにも読めたので改めました.海底撈も槓上開と同じくツモを含む役なので,ツモの飜が付かないことを追記しました.
(2016.3.28)包の規則でチャンカンか槓上開の助けを借りないと上がれない手は聴牌とみなさないことを書き加えました.
(2016.3.31)封頂の違いや口口翻の記述をバリエーションに移動しました.
(2016.4.2)頼子表示牌の置き場所について書き忘れていたので,補足しました.
(2016.4.4)中と頼子の使い方に点数計算の記述が混ざっていたのを削除しました.
(2018.9.24)海底撈などの成立条件の説明を誤解の余地が少ないように書き直しました(頭が自由な手なら,258以外の頭だとこれらの役は成立しないが,上がることは可能).
(2018.9.29)荊州?(紅中頼子槓エリアではないので当地で遊ばれているのかどうか怪しいが,ルールそのものは良い三麻アレンジなので)の三麻ルールを追記しました.
(2018.10.1)各種の封頂(満貫)の記述をすべて基本ルールに移動しました.高い縛りだと大胡も縛りの対象になることを追記しました.
(2018.10.4)ドラがないことと,何回カンしても流局しないことを追記しました.
(2018.10.6)点数計算の概要が飜数をかけるとなっていたのを,飜数の回数2倍すると正確な表現に改めました.大胡の基礎点のバリエーションを追加しました(鄂州のもの)
(2018.12.10)皮子の記述を七皮四頼のルールに従って固定槓牌なしに修正しました.実際に牌で遊ぶことを前提にしたルール記述で頼子槓の飜数を2にしていないものがないので,頼子槓の飜数のバリエーションを削除しました.