2015年8月30日日曜日

長春,大連の「窮胡」麻雀

役がほとんどなくカンを上がりとは無関係に精算する「推倒胡」系のルールです.より古いルールの「窮胡」の条件に由来するかなり厳しい制約が上がり型にあること,「宝(パオ)」というボーナス牌の決め方と発動条件,「亮喜」起源の特殊なカンが特徴です.

はじめは,長春のルールです.

人数と道具

4人.花牌なしの136枚.サイコロ2つ.

配牌

さいころを2度振り,1度目の目の和で誰の山から取るか決め,2度目の目の和で山を分ける位置を決めます

進行

親が上がるか流局したら連荘です.子があがったら,親の下家が次の親です.
上がり>ポン>カン>チーと,ポンがカンより優先されます.
牌の山はカンがなければ7列残します.カン1回なら7列,2回なら8列と伸ばします.この列数には,下ヅモだけが残っている列は含めません.残す牌以外を全部使ったら流局です.これ以外の流局はありません.

カンとカンの点数

カンは,上がりとは別に点数を受け渡します.流局でも,上がらなくてもカンの点はもらえます.暗槓とさらした組に牌を足すカンは,他の3人1人ずつから,手持ちの暗刻で捨てられた牌をもらう明槓は,捨てた人から3人分の点をそれぞれもらいます.カンの点には親の倍はつきません.カンの点数は,明槓,幺九蛋,旋風槓,喜槓はレートの1倍,暗槓はレートの2倍.明大蛋はレートの2倍,暗大蛋はレートの4倍です.

  • 旋風槓.配牌時に,手牌に東南西北があるとき,この4枚をさらし,山の末尾から手牌を1枚補充できます.これで,明槓1回分の点がもらえます.ここに手牌または山から引いた風牌を追加して山の末尾から補充牌を引けます.風牌を1枚追加するごとに,明槓1回分の点がもらえます.
  • 喜槓.配牌時に,手牌に中發白があるとき,この3枚をさらせます.これで,明槓1回分の点がもらえます.ここに手牌または山から引いた三元牌を追加して山の末尾から補充牌を引けます.三元牌を1枚追加するごとに,明槓1回分の点がもらえます.
  • 幺蛋.配牌時に,手牌に一索,一筒,一萬があるとき,この3枚をさらせます.これで,明槓1回分の点がもらえます.ここに手牌または山から引いた1の牌を追加して山の末尾から補充牌を引けます.1の牌を1枚追加するごとに,明槓1回分の点がもらえます.
  • 九蛋.配牌時に,手牌に九索,九筒,九萬があるとき,この3枚をさらせます.これで,明槓1回分の点がもらえます.ここに手牌または山から引いた9の牌を追加して山の末尾から補充牌を引けます.9の牌を1枚追加するごとに,明槓1回分の点がもらえます.
  • 大蛋.配牌時に限らず,一索,一筒,中,發または白4枚をカンしたら,大蛋です.

親の第1手では,さらしたカンに牌を追加できません.
特殊なカンを含むカンをチャンカンできます.配牌時にさらす牌はチャンカンできません.チャンカンされたカンはカンの点を得られません.
聴牌して宝牌を見た後でも,聴牌を崩さず待ちを変えないカンはできます.

宝牌

手で最初に聴牌した人は,聴牌を宣言した次の自分の番に,サイコロ1つを振って,宝牌を決めます.宝牌は,牌の山の末尾から出た目の数だけさかのぼった列にある牌です.1番目でも2番目以降でも聴牌した人は,聴牌を宣言すれば,次の自分の番に,宝牌を他の人に見えないようにのぞき見できます.宝牌を見たら,手牌を変更できません.宝牌が3枚捨てられたら,再度サイコロを振って,新しい宝牌を決め,もとの宝牌はもとの位置に戻します.
宝牌を見たときに,それが待ち牌だったら,宝牌のツモ上がりで上がれます.聴牌後に宝牌をツモったら,宝牌を任意の牌に代替できます,つまり,宝牌で上がれます.
宝牌を交換したとき,交換後の宝牌が待ちなら,自分の順番が来たとき,宝牌での上がりにできます.
聴牌を宣言しないでもあがれますが,その場合,宝牌は見れません.

上がり

上がるには,次の条件をすべて満たす必要があります.

  • 1つの頭と4面子
  • 萬索筒の3種類がすべてある
  • 1,9,字牌のどれかがある
  • 4面子ともに順子のときは,頭は中,發,白のどれか.なお,特殊な槓は槓子とみなす.
  • 裸単騎は,対対胡でなければならない

同時上がりは認められません.捨てた人に一番順番が近い人の上がりとなります(頭はね).
1,9,字牌のない聴牌も認められますが,宝牌を見れず,1,9,字牌であがらなければなりません.

上がりの点数

以下の番数のうち当てはまるものすべての回数だけレートを2倍します.

  • 点炮.1番(x2).放銃のこと.放銃でも3人払いで,放銃した人が払う点にこの倍がつく.
  • 自摸.1番(x2).残り3人全員がそれぞれ払う点につく.
  • カンチャン、ペンチャン、単騎待ち.1番(x2).
  • 門清.1番(x2).門前です.ツモでも振り込みでも該当します.大連と違い,門前でも上がれ,自分が門前のとき,他人の上がりに払う点が倍になることもありません.
  • 荘家.1番(x2).親は,もらう点,上げる点ともに倍払いです.
  • 対宝.2番(x4).宝牌をツモっての上がり,あるいは宝牌を覗いたら待ち牌だったとき.
  • 飄胡.2番(x4).対対胡です.


大連の「窮胡」

上がりの型の制約が長春より役なし手である「窮胡」に近いです.

上がり手の条件


  • 4メンツと頭がある.[特殊な上がり方には役がある]
  • 泣かないと(開門しないと)上がれない.[門清を避ける]
  • 刻子(槓子)がなければならない.三元牌が頭のときだけは,順子4つでもよい.[平胡を避ける]
  • 順子が一つもない手も不可.[対対胡を避ける]
  • 2と8は頭にできない.[将を避ける]
  • 欠門(萬,索,筒のうち1種類以上を欠くこと)してはならない.[欠門を避ける]
  • 一九字牌がなければならない.[断幺を避ける]
  • 裸単騎はできない.[手把一を避ける]
  • 中發白の刻子があってはならないという人がいる.[番牌を避ける]
  • 自分と場の風の刻子があってはならないという人がいる.[番牌を避ける]

同じ牌が4枚手の中にあってはならない(四帰一を避けるため)という人もいます.これを採用すると,カンのボーナスと上がりが両立しなくなります.

手に中發白が1枚ずつあるとき,この3枚の組をカンできます.補充牌は引きません.

2人以上が同時には上がれません.上がり牌を捨てた人に一番順番が近い人の上がりになります(頭ハネ).

長春のルールと同じです.

上がりの点


  • 放銃x2.放銃でも三人払いで,放銃者だけこの倍が付きます.
  • 自摸x2.
  • 荘家x2.親はもらう点も払う点も倍になります.
  • 模宝x2.山から宝牌を引いて上がる.
  • 門清x2.門前.支払い側だけ(門前では上がれない).3人門清ならさらにx2
  • 槓上開花x2
  • 衝宝x4.宝牌を見たら待ち牌だったとき.
  • 偏聴,嵌聴,独聴(単騎).x2.
  • 搶槓.x2


カンの点

上がった人だけがもらえ,自摸なら全員の点に足して払う,放銃なら,放銃した人の点だけに足して払うとする人と,上がりの点とは別にだれでももらえるとする人がいます.中發白のカンもカンに含めます.上がっても,上がらなくても,流局でももらえます.明槓はx2,暗槓はx4です.それぞれx1とx2にする人もいます.

2015年8月29日土曜日

東北地方(旧満洲)の「亮喜(亮喜兒)」麻雀

「亮喜」はリャンシーまたは兒化してリャンシールと読みます.

李金著「麻將一週通」(1993年 北京 人民體育出版社)のルールを20年ほど前にまとめた文章です.非常に複雑,華麗なゲームで,北京や広東の「推倒胡(ぶっ倒れ上がり,ゴミ手,クズ手の意味)」に相当する「窮胡」が流行する以前の姿を知ることができます.中国語が簡潔すぎて解釈に苦しんだ個所は,中庸麻雀ルールの著者になった関兆豪 (Alan Kwan) さんに注解をもらいました.

1. 準備,その他

麻雀牌136枚(花牌なし)を使います.起家は,仮東の人がサイコロ2つを1度振りして決めます.荘家があがるか流局すると連荘,荘家以外があがると,荘家が南家に移動します.使わずに残す牌は14枚,10枚,16枚のどれにするか,事前に決めます.カンの補充牌を引いたら,海底牌が必ず下の段になるように,引いた枚数だけ,残す牌を増やします.何風戦かは,事前に決めます.参考文献は,上級者は四風戦を1時間半前後で打てると書いています.

あがれる最低点数(しばり)は,事前に決めます.多いのは,「点があればあがれる」,「5点しばり」,「10点しばり」,「20点しばり」です.まったく点がないと窮和という満貫役になるので,「点があればあがれる」は,何でもあがれます.20点しばりは,作れる役が清一色などに限定されます.10点しばりは3~4翻しばり相当です.

10~20点のような高いしばりがあるとき,大役に複合する1点役の点数を加算する人としない人がいます.満貫(40点)になったら,それ以上の小役は数えません.参考文献は,「初心者がいるときは,小役を無視することが多いが,計算に慣れるためにも,ちゃんと数えるべきである」と言っています.1~5点しばりだと小役であがれるので,小役の点数計算は不可欠です.

2. 開局

洗牌後,各人17列2段に牌を積みます.荘家がサイコロを2つ振り,出目にあたる人がもう1度サイコロを2つ振ります.荘家の出目にあたる人の山の(その人からみて)右端から,反時計周りに2人の目の合計だけ数えたところの次から牌を取ります(2人の目を合計する以外は,現在日本で広く行われている方式と同じです)。荘家はチョンチョンの2枚目の下の牌を表向きにし,残す牌の山の上にのせます.この牌で「混(ホンまたはホワール)」が決まります.何を混にするかはいくつか流儀があるので,事前に取り決めておく必要があります.
  • 上2枚:一番普通な決め方です.例えば2が出たら3と4,南なら西と北,三元牌の1つなら,残り2つの三元牌が混です.
  • 下2枚:例えば2が出たら1と9,南なら東と北,三元牌の1つなら,残り2つの三元牌が混です.
  • 上下:例えば2が出たら123,南なら東南西,三元牌なら三元牌すべてが混です.

混の決め方には,この他に,後で説明する混指定があります.

混(ホンまたはホワール,1枚につき1点).ドラと異なり,点を倍にはしません.

混はジョーカーのようなワイルドカードで,何の牌の代りにもなります.ただし,手から混入りの対子,両面,嵌張,辺張などを出してポン,チー,カンはできません.また,混だけの対子,順子,槓子,雀頭は作れません.

全員に有効な混を捨てたら,上がり放棄です.

混指定.限定局(荘家が点棒供託の上,あがりかたを指定する)で,荘家が混を指定することがあります.混が指定された時は,チョンチョンの下の牌による混決めを行いません.

荘家の混指定:荘家は,サイコロを振る前に点棒1本を供託した上で,口頭で混を指定できます.混なしを指定することもできます.

さらし混:荘家が,点棒を供託してさらし混を使うと宣言した局だけ有効です.この場合,荘家は,開局後始めの打牌の前に,1~4枚の同一牌をさらして,自分専用の混にできます.混になるのは,さらした牌だけです.3枚以下をさらした場合,手牌に同じ牌がある/引いても,それは混になりません.

3. 亮喜(リャンシーまたはリャンシール)

喜(シーまたはシール,1点.1枚に付き1点ではなく喜があれば1点).違う四風牌,または種類の違う九,一を3枚さらすことです.喜をさらすと,はじめから配牌が10枚であるかのように,その後のゲームが進行します.たとえば,九喜をさらしての清一色も可能です.喜には,嶺上牌の自模機会を増す,手中のくず牌を減らして手を速める,手の点数を1点高めるなどの効果がある反面,手牌の枚数が10枚になり,喜の牌は手に使えないので,むやみに使うと手を遅らせることもあります.また,喜があると成立しなかったり,作りづらくなる役もあります.

四風牌の喜は風喜(フォンシー),九なら九喜(チウシー),一なら幺喜(ヤオシー)といいます.あと風九喜(フォンチウシー)という喜があります.喜には混を入れても構いません.混は,どの四風牌,九,一の代りにもなります.風牌,九(萬,索,筒)のかわりに一(萬,索,筒)を風喜,九喜に入れられます.一索以外の一は風喜,九喜に入れられないとする人もいるので,事前に決めてください.

喜は,荘家なら開局から最初の自模の直前までの間(喜をさらしての天和も可能),散家なら開局から2度目の自模の直前までの間にさらします.この間に喜しなかったら喜できず,喜したら,喜を変更できません.

回混(ホイホン):喜に混を使ったとき,混で代用させていた牌を引いたら,引いた牌を喜に入れ,喜の混を手牌に戻せます.これを回混といいます.戻さないで下記のように扱っても構いません.

喜と同種の牌が手にあるか自模ったら,喜と種類の同じ牌(複数可)が手牌にあるときは,それを喜にさらして加え,同数の嶺上牌を引きます.複数あるのは,開局直後の場合です.たとえば,配牌に東南西北北とあって,東南西を喜にしたときは,同時/以後の手番に北2枚をさらして,嶺上牌を2枚引きます.さらすのを遅らせても構いませんが,喜の牌が上がった手にあるとチョンボなので,早くさらした方が有利です.

喜に3枚牌が追加されると,3枚ごとに1点です.あがったときに,さらしていない喜の牌があると,チョンボです.ただし,他人から喜の牌を喰うのは認められます.例えば,九喜で,78に9を哭くのは良いが,79で8を哭いたら,その手であがると,チョンボです.

4. 局中の特記事項

限定局の宣言の一部として,荘家は,その局に限り,どこからもチーできる,チーは対面からだけ,チーは下家からだけなど,チーのルールを変更できます.

同時ロンは,窮和(チョンホー.役名です)の人がいれば,窮和優先,そうでなければ,上家の頭ハネです.

リーチ麻雀以外のすべてのルールの共通事項として,振り聴はありません.

ポン,チーして捨て牌を捨てる前に暗槓できます.

喰い替え禁止のような,副露を忌避する目的のルールは,ありません.

最後の一周は,4人とも牌を捨てません.最後の自模の後,槓または喜の牌をさらして嶺上牌を引くことはできます.

三元牌の組(1点).手にある白發中1枚ずつの3枚組を面子にできます.三元牌の組は,順子,刻子のどちらの代りにもできます.

多牌・少牌は,あがり放棄です.牌を隠す,こっそり交換する,三味線などの行為が発覚したら,あがり放棄です.

包,チョンボ,誤自模,または手牌が4枚しかない人に振ったとき(聴牌しているときを除く)は,次局またはその局の点数を1人で払います.それ以外の場合,自摸でも,振込みでも,三人払いです.

5. 限定局

限定局は,荘家がルールをアドリブで決める局です.荘家が,牌を積みおわってから配牌を引きはじめるまでの間に,手の形と点を宣言し,決めた点数を供託することで成立し,その局の間だけ有効です.

限定局には,次の3つのタイプがあります.

(1)特定の面子(小花)を1つ使うことを要求する

小花(シャオファー)は指定した牌1枚ずつからなる3枚組です.ほとんどの場合,吉祥か歴史的な事物になぞらえた順子,刻子にならない組み合わせを指定します.他の面子は,喜と雀頭を除いて,順子か刻子(槓子)でなければなりません.役は不問です.
  • 孔雀東南飛:一索,南,東.
  • 撃鼓罵曹:一筒(太鼓),二索(太鼓の棒),白(顔面蒼白の曹操).
  • 鶴橋相会:一索(織女星)、七筒(7月),七萬(7日)
  • 西湖十景:西(西湖)と和が10になる筒子2枚
  • 西北暇雪:西,北,白
  • 中原逐鹿:中,七筒,發
  • 両風挟一幺:風牌2枚と一萬か一索か一筒
  • 両幺挟一風:一萬か一索か一筒のうち2枚と風牌1枚
  • 丹鳳朝陽:中(赤),一索(鳳凰),一筒(朝日)
  • 借東風:一萬,九萬,東

近現代に取材したものもあり,比較的有名なのは
  • 槍斃東條:七筒(拳銃),東,索子(別名は條子)

(2)手役を限定する

手役の創造や,チーと混に関するルール変更を伴うことがあります.これで作られた役は数十を下らないそうです.例としてあげられているのは,
  • 混吃乱碰手把一(ホンチー・ランポン・ショウパーイー):どこからでも喰いあり(チーでも)で裸単騎.
  • 先碰後吃手把一(シェンポン・ホウチー・ショウパーイー):どこからでも喰いありで裸単騎だが,1度ポンしないとチーできない.
  • 混吃乱碰手把四(ホンチー・ランポン・ショウパースー):どこからでも喰いありで手牌4枚であがる.
  • 三色登記混(サンソー・トンチーホン):数牌3種がすべてある手でないとあがれない.また,荘家がさらし混を使う.
  • 三色窮和対着吃(サンソーチョンホー・トイチャオチー):三色窮和でしか上がれない.チーは(上家でなく)対面からしかできない.似た指定として,下家からしかチーできない倒着吃(タオチャオチー)がある.
  • 小鷄抱蛋(シャオチーパオタン):1索か1筒の裸単騎で,それぞれ,1筒と1索であがる.
  • 全帯幺:チャンタでないとあがれない.三元牌の組を使える.
  • 五色和(ウーソーホー):喜を除いた牌に,筒索萬風三元の5種類が全部そろっていないとあがれない.喜をさらすと手牌が10枚しか残らないので,五色和できない.


(3)その他

(1),(2)どちらにも属さないもの.たとえば,
  • 五餅翻番免混到底(ウーピンファンファン・ミェンホン・タオティー):「五餅翻番」5筒があれば点を倍にする(2枚あれば4倍).餅子(ピンズ)は筒子(トンズ)の別名.「免混」混を使わない。「到底」海底まで誰もあがらなければ,牌の山を残さないで打ち続ける.

6. 点数

荘家は倍払い倍取りです.三人払いで荘倍があるので,古典麻雀と同じように,振り込みと自模に,点数授受の違いがありません.
例えば,子が12点の手で上がったら,振り込みでも自模でも,他の2人の子は各12点,荘家は24点を,それぞれ上がった子に払います.

6.1 大役

役の複合関係が整理されてなく,複合役に別の名前が付いています.

6.1.1 清一色.20点

すべて刻子なら別の役になります(対々和参照).三元牌の組・刻子,四風牌の刻子を入れてもよく,字牌を雀頭にしてもよいです.
字牌を雀頭,刻子に入れたときは,厳格でない清一色として10点減点します.三元牌の組は,入っていても減点しません.混をどこに使っても構いません.喜の内容は問いません.混,喜は,以下特に記さない限り同様です.

例:(風=西北,混=一筒二筒)
[手牌]中二筒白,四萬四萬
[副露]一萬二萬三萬,西西西
[喜]九萬九索一筒
清一色        20
字牌刻子あり     -10
混2枚        2
三元牌の組      1
風(西)        1
喜          1
合計      15

6.1.2 一条龍(一気通貫)

清龍,渾龍,花龍の3種類があります.123,456,789が全部手の内にあるときを活龍,どれか1つでも哭いていると死龍といい点が半分になります.1~9が全部手牌にあれば,残りの1面子を哭いていても死龍になりません.混をどこに使っても構いません.

(1)清龍(活龍40点,死龍20点)

厳格な清一色の一条龍です.字牌の刻子,雀頭がありません.

例:(混=二索三索)
[手牌]中發二索,四萬四萬,三索二萬三萬,四萬五萬六萬,二索八萬九萬

40点=満貫なので,小役は数えません.

例:
[手牌]中發白,一萬二萬三萬,四萬四萬,四萬五萬六萬
[副露]七萬八萬九萬
死清龍        20
三元牌の組      1
合計      21

(2)渾龍(活龍30点,死龍15点)

厳格でない清一色の一気通貫です.字牌を刻子,雀頭に使っています.

例:(場風=西,混=二萬三萬)
[手牌]一筒二筒三筒,二萬五筒六筒,三萬二萬九筒,中二萬
[副露]西西西
活渾龍        30
混4枚        4
風          1
合計      35

例:(混=一筒二筒)
[手牌]二筒二索三索,七索一筒九索,中中
[副露]四索五索六索
[喜]東南一筒
死渾龍        15
混3枚        3
喜          1
平和(喜は除いて見る) 1
合計      20

(3)花龍(活龍20点,死龍10点)

数牌2種以上を使った一気通貫です.

例:(混=五索六索)
[手牌]一索二索三索,四筒五筒六筒,七萬八萬九萬,中發白,八萬五索
活花龍        20
混1枚        1
8の頭        1
三元牌の組      1
自摸(ツモ上がりとして)1
合計      24

[注]「活花龍」と「三元牌の組」の複合役なら,「平和」と「門清」は必ず含まれているので,後二者は数えられません.

例:(混=五萬六萬)
[手牌]四筒五筒六筒,七索六萬九索,二索二索
[副露]一萬二萬三萬
[喜]南北五萬
死花龍        10
混2枚        2
2の頭        1
喜          1
合計      14

6.1.3 窮和(満貫)

点のない手です.四色窮和,三色窮和,清三色窮和,二色窮和という区別があります.いずれも満貫です.これらの名前は,限定局で手の形を指定するときに使います.

点があってはいけないので,特に断幺,平和,門清にならないように気をつける必要があります.他人の風を頭にすれば断幺を回避でき,他人の風の刻子か自風・場風・三元牌の雀頭があれば,平和と断幺を同時に避けらます.他人の風を哭けば,3つを全部避けられます.

混は1点つく上,切れないので,混が1枚でも来てしまったら,窮和は狙えません.聴牌後に混が来たときの扱いは,人により異なります.窮和聴牌後,手牌を全部伏せれば(=手を変えない),混での自模あがりを認めるだけでなく,混を自模ったら点数を2倍(=80点)にする人と,混を引いたら窮和を認めない人がいます.

(1)四色窮和

数牌3種と四風牌,三元牌のいずれかからなる手です.

例:(窮和だから混は手にない)
[手牌]二索二索二索,三筒四筒五筒,中中
[副露]六萬六萬六萬,一萬二萬三萬

(2)三色窮和

数牌3種からなる手です.字牌の有無は問いません.

例:(西は他風として)
[手牌]三索四索五索,四萬五萬六萬,五筒五筒
[副露]西西西,二筒三筒四筒

字牌の刻子・雀頭があれば,断幺になりません.

(3)清三色窮和

数牌3種からなり,字牌のない手です.

例:
[手牌]七萬八萬九萬,三萬四萬五萬,二筒二筒二筒,四索四索
[副露]一索二索三索

(4)二色窮和

普通は,限定局でしか役として採用しません.1点の小役,欠門が成立するからです.数牌2種からなる手で,字牌の有無は問いません.

例:
[手牌]二索三索四索,五索五索五索,七索七索
[副露]二萬三萬四萬,九萬九萬九萬

6.1.4 対々和

雀頭以外はすべて刻子の手です.三元牌の組も刻子扱いできます.

(1)清一色清対々(満貫=40点)

一九牌を使わない清一色の対々和です.字牌の刻子,雀頭があるときは10点減点します.
三元牌の組は減点対象になりません(以下同様).

例:(混=二筒三筒)
[手牌]八萬八萬,六萬六萬六萬
[副露]二萬二萬二萬,七萬七萬七萬
[喜]東南二筒
満貫なので小役は数えません.

(2)清一色渾対々(30点)

清一色の対々和です.字牌の刻子,雀頭があるときは10点減点します.

例:(混=三萬四萬)
[手牌]一筒一筒一筒,白白
[副露]二筒二筒二筒,
[喜]九萬九索三萬,東南一索
清一色渾対々     30
字牌の頭       -10
混1枚        1
喜          1
喜に3枚追加     1
合計      23

この喜は,風九喜です.喜には,風喜,九喜,幺喜の他に,風九喜があります.なお,風幺喜とか幺九喜という喜はありません.

(3)渾色清対々(20点)

一九牌を使わない対々和です.字牌の刻子,雀頭があるときは10点減点します.

例:(混=一筒二筒)
[手牌]發白一筒,二索二索二索,二萬二萬
[副露]中中中
[喜]南南西,西一筒西
渾色清対々      20
字牌の刻子(中)    -10
三元牌の組      1
三元牌の刻子     1
2の頭        1
混2枚        2
喜          1
喜に3枚追加     1
欠門         1
合計      18

(4)渾色渾対々(10点)

(1)~(3)に相当しない対々和です.字牌の刻子,雀頭があるときは10点減点で0点です.

例:(混=二筒三筒)
[手牌]中發白,一萬一萬一萬,三索三索二筒,八筒八筒
[喜]九萬九索三筒
渾色渾対々      10
(三元牌の組は減点されない)
混2枚        2
8の頭        1
三元牌の組      1
喜          1
門清(喜は門清をくずさない)1
自摸(ツモとして)   1
合計      17

(5)幺九対(90点)

一九牌のみの対々和です.字牌の刻子,雀頭があっても減点しません.

例:(混=二筒三筒)
[手牌]中發二筒,九索九索三筒,一筒一筒
[副露]九萬九萬九萬
[喜]南西北
満貫を超える手なので,小役は数えません.

6.1.5 七小対(20点)

七対子.混を使えます.喜はできません.点数は20点固定で,小役は数えません.

例:(混=一筒二筒)
[手牌]西西,中中,一萬一萬,二索一筒,四索四索,六萬二筒,五筒一筒

6.1.6 全求人(20点)

裸単騎のロンあがりです.混入りの面子は哭けないので,混が2枚以上あると,作れません.

例:
[手牌]二索二索
[副露]中中中,一筒二筒三筒,七萬八萬九萬
[喜]南西北
全求人        20
2の頭        1
中          1
喜          1
合計      23

6.1.7 天和(満貫)

親の配牌での上がりです.喜をさらしても認められます.

例:(混=二萬三萬)
[手牌]中發白,南南,一筒二筒三筒,二索三索四索
[喜]九索九筒二萬

6.1.8 地和(20点)

子が,荘家の第1捨て牌か,自分の最初の自模で上がった場合です.天和と同じく
喜があっても認められます.

6.1.9 十三不靠(満貫)

数牌は,すべて同種の牌と2牌以上(スジ以上)離れていて,雀頭以外には,2つ以上同じ牌がない手です.喜はできません.対子になっていない四風牌,三元牌も使えますが,三元牌の組(中發白)があると成立しません.

例:
南南,西北東發白三萬六萬九萬二索六索一筒五筒

6.1.10 大三元(80点)

三元牌の組が3組ある手です.ワイルドカードが使えるとは言え,哭けない分,難易度が高くなっています.

例:(混=一筒二筒)
[手牌]中發白,中一筒白,二筒發白,二索二索
[喜]南西東

6.1.11 小三元(60点)

三元牌の組2組と三元牌の雀頭がある手です.

例:(混=二索三索)
[手牌]中發白,中二索白,發三索,二筒三筒四筒
[副露]一萬二萬三萬

6.1.12 十三幺(130点)

一九牌字牌だけからなり,雀頭の他の牌は1枚ずつしかない手です.喜はできません.字牌が雀頭でも,減点しません.

例:(混=二萬三萬)
中發二萬東南西北北九索九萬九筒一萬二萬三萬

6.2 小役

  • 混:1枚につき1点
  • 喜:3枚1組で1点
  • 喜に3枚追加すると:1点
  • 三元牌の組(白發中):1点
  • 三元牌の刻子:1点
  • 自・場風の刻子:1点
  • 平和:1点.チーしてよく,ペンチャン,カンチャン,単騎待ちでもよいです.自風,場風,三元牌の雀頭があると成り立ちません.三元牌の組があっても認められます.
  • 将:数牌の2か8が頭の手.1点.
  • 刻子3つ:1点
  • 断幺:1点
  • 門清:1点.一度も哭かない上がりです.自摸でもロンでも認められます.
  • 搶槓:1点.ポンしてある牌に追加してのカンまたは喜への追加が待ち牌だったとき,その牌で上がれ,1点つきます.喜に追加する牌はポンもできて,これも1回につき1点です.
  • 槓上開:1点.カンの補充牌での上がりです.喜の補充牌でも認められます.
  • 手把一:1点.裸単騎です.手牌が1枚での上がりです.
  • 自模:1点.山から引いた牌での上がりです.門前でなくてもよいです.
  • 欠門:1点.数牌1種を欠く手です.混は,額面でなく置きかえた牌とみなします.多くの役と異なり,喜の牌も含めて見ます.
  • 海底撈月:1点.山の最後の牌での上がりです.
  • 槓:1組1点
  • 嵌張(カンチャン):1点
  • 単騎:1点
  • 辺張(ペンチャン):1点
  • 一般高:1点.イーペーコーです.
  • 半条龍(またの名を連六):1点.同じ数牌の連続した順子がある手です.たとえば,123456,234567.
  • 老少副:1点。同じ数牌の123と789がある手です.


(おわり)

2015年8月27日木曜日

香港・マカオの雀荘ルール

香港・マカオの麻雀館(雀荘)は,2007年に斜陽化を食い止めるため,大陸客を狙って大陸のルールである跑馬仔(大陸牌,碰槓牌,深圳麻雀などともいう)を導入する前は,50年以上変わらない古い広東ルールを使っていました.


香港ルールとして知られる旧章(清章)との違いは,お金の授受法と,役の番(飜)数です.

  • 飜縛りはありません.
  • 花牌を使うオプションはありません.
  • 自摸でも放銃でも支払いは同じです.3人が上がった人に支払い,払う人か受け取る人が親の場合,金額を倍にします.
  • 自摸の1番はありません.
  • 刻子にすると番がつく字牌が頭の場合,平糊(平和)と認められません.
  • 清一色と上限役以外の役は混一色,対対糊,小三元も1番です(連風牌の刻子は2番).
  • 1950年代の上限は3番で清一色も十三么も3番でしたが,香港の雀荘では,上限を1番,あるいは1人あたりの支払額の上限を子から子への鶏糊の4倍(レート表示の上の数字の2倍)に設定します.マカオ政府が1991年に布告した麻雀法定博彩規則(麻雀法定博技規則)の「伝統麻雀」では2番が上限でした.
  • 上がりの見逃しは認められません.
  • チョンボはチョンボした人が上限の手で勝った場合の金銭授受と逆方向にお金を払います.
  • 包のルールは雀荘によって違います.


レートは“$50/$100”のように表示します.

  • 子が鶏糊(役なし)で上がったら,振り込みでも,自摸でも,他の2人の子は$50ずつ,親は$100を上がった子に払います.
  • 親が鶏糊(役なし)で上がったら,振り込みでも,自摸でも,3人の子は$100ずつ上がった親に払います.
  • 子が1番の手で上がったら,振り込みでも,自摸でも,他の2人の子は$100ずつ,親は$200を上がった子に払います.
  • 親が1番の手で上がったら,振り込みでも,自摸でも,3人の子は$200ずつ上がった親に払います.

お金をもらった人は,レートの大きい方の金額の2割を抽水(テラ銭)として,例えば,$50/$100なら$20を雀荘に払います.


2015年8月22日土曜日

深圳・香港の「跑馬仔」麻雀

「跑馬仔」は広東語でパウマーチャイと読みます.競馬の「レース」の意味です.「大陸牌」,「碰槓牌(プンコンパイ,北京音だとポンカンパイ)」ともいいます.大陸に多い「推倒胡」系のルールを一層シンプルにしたもので,役も何も関係なく,上がりとカンでの得点を目指します.単純なルールなのに,意外に繊細で技巧的なゲームです.

(2015.8.24)加槓の点は,ツモった牌によるカンでないともらえないことを追記しました.
(2015.8.30)多牌,少牌とカンに関して書き加えました.海底の自摸上がりでの馬について書き加えました.

道具


麻雀牌136枚.萬子,索子,筒子,東南西北白發中.花牌は使いません.
サイコロは香港では3つ使います.2つでもよいでしょう.

席ぎめ


席ぎめは東南西北1枚ずつを抜き出し,混ぜてから,つかみ取りで決めます.東を引いた人はそのまま着席し,あとは,反時計回りで東南西北になるように座り直します.

配牌


ドラがないことを除けば,日本の麻雀と全く同じなので,省略します.ただし,最初の手の親を仮東がサイコロで決める以外は,前の手で上がった人が親です.前の手で2人以上が同時に上がったときは,振り込んだ人が次の手の親です.

ゲームの進行


ポン,カンはできますが,チーはできません.

牌の山を残さないなら牌の山を使い切ったら,残すなら残り14枚で流局です.それ以外の流局はありません.ドラはないので,カンの回数に上限がないことに留意してください.流局は,連荘します.
旧章,新章のような頭ハネでなく,二人,三人の同時上がりを認めます.
上がれる捨て牌を見逃した時は,自分のツモ順が来るまで,同じ牌では上がれません.待ちが複数あるとき,見逃した現物でなければ,上がれます.これ以外の振り聴に類するルールはありません.
誰が何を捨てたか覚えておくのは技術だと考えられているため,捨て牌は,普通は,綺麗に並べません.同様に,ポン・チー・カンした牌を誰からもらったかも示しません.大陸流だと,カンは1枚の牌を3枚の中央にのせて山の字のようにします.明槓暗槓も区別しません.

大相公(多牌),小相公(少牌)になったら,上がり放棄なだけでなく,ポン・カンもできません.

カンの点数


カンした人は,直ちに点をもらえます.暗槓なら,他の3人から,1人2点ずつの計6点,暗刻を持っていて捨て牌をカンした場合,捨て牌を出した人から3点,ポンした牌と同じ牌を山から引いてカンした場合,他の3人から,1人1点ずつの計3点です.ポンに牌を足すカンの点は,山から引いたばかりの牌でなく手牌をポンに足した場合は,認められません.

なお,この点は上がる上がらないに関係ないので,上がらなくても,流局になっても,返す必要はありません.カンの後,大相公(多牌),小相公(少牌)になっても,返す必要はありません.

上がりの点数


頭と4面子の手なら,何でも上がれます.実際にはほぼありえませんが,唯一の例外として,国士無双でも上がれます.上がった人は,振り込み上がりの場合,振り込んだ人から2点(1点にする人もいる),ツモ上がりの場合,他の3人から2点ずつの計6点をもらえます.
カンの補充牌での上がりは,大明槓の場合も含め,すべてツモです.
搶槓(チャンカン)は,カンした人が1人で6点を上がった人に払います.点数はツモ扱いですが,馬はありません.搶槓できるのは,ポンでさらしてある牌にツモ牌を加えるカンだけです.香港旧章(清章)ルールと同様に,十三么(国士無双)は,例外的に暗槓を搶槓できます.


ツモで上がったときに限り,上がった人は牌の山の次の牌を表にします.この牌が自席の「馬」であったら,上がりでもらえる点が倍になります.香港の雀荘の「牌例(ルール掲示)」や携帯ゲームに見られる例だと,
  • 親の馬は,東,1,5,9
  • 南家の馬は,南,中,2,6
  • 西家の馬は,西,發,3,7
  • 北家の馬は,北,白,4,8
です.数牌は3種類あるので,親だけ馬が多くなります.これは不公平なので,マカオのカジノのように,全員の馬の枚数を揃えて,
  • 親の馬は,東,1,5,9
  • 南家の馬は,南,中,發,白,2,6
  • 西家の馬は,西,中,發,白,3,7
  • 北家の馬は,北,中,發,白,4,8
とする人もいます.

海底での自摸上がりには,馬はないとする人と,必ず馬が的中したものとして扱う人がいます.

馬の効果は,掛け算でなく一定の点を加算する人もいます.人によりさまざまなので,事前に決めてください.

2015年8月16日日曜日

香港の「旧章」・「新章」麻雀

ルール名は,「章」の字が広東語では(北京語でも)「張」と同音なので,「古い/新しい牌(つまり麻雀)」とも,「党章」などの「章」の意味から「古い/新しいルール」とも解釈できます.結局はどちらでも麻雀のルールになるので,些細な問題かもしれません.香港で麻雀書で有名だった作家(って阿佐田哲也みたいですね),簡而清氏に従って旧章を「清章」(ピュアなルール)という人も多いです.

個人的な趣向---より面白いと思うから---で,本文は少し古め(1970年代前後)のルールを紹介します.現代の主流のルールは,その後に紹介します.

(2015.8.24)旺牌16枚もあるという記述は,台湾ルールとの混同によるものなので削除しました.花牌による槓上開花の文章が変だったので直しました.リーチ麻雀ルールの類推で誤解される余地があるので,3翻縛りに花牌の翻が入ることを追記しました.面子の中国語の話は蛇足なので削除しました.
(2015.8.29)「飜」と「翻」の字が混在していたので,「飜」に揃えました.
(2015.8.30)広東語では「チー」といわず「シェン」,字も「吃」でなく「上」なことを追記しました.ついでに他の発声の広東語音がカタカナでどんな感じになるかも書きました.
(2015.9.4) 「和」の字が普通には使われないことと,ツモ上がりに対する感覚について書き加えました.

使うもの

麻雀牌(パイ,はい),136枚.136枚の内訳は,萬子(マンズ),銅銭を縄で連ねた形が起源の索子(ソーズ),銅銭の形から来た筒子(ぴんず)の3種類の1から9,東南西北白(はく)發(はつ)中(チュン)7つの字牌(じはい,ツーパイ)で,すべての牌は4枚ずつあります.さいころは,3つが普通です.なければ,2つでもかまいません.手ごとに直ちに精算するので,点数を記録する道具はありませんが,ポーカーチップなどを1点単位で,各人100~300点程度持ってお金の代わりにしてもよいでしょう.

席決め

東(トン)南(ナン)西(北京音は“シー”だが日本の麻雀用語では“しゃー”と読む)北(ペー)各1枚ずつをとり,よく混ぜてから,伏せて4枚積み上げます.年長者など,任意に決めた人がサイコロ3つ(古くは2つだったらしい)を振り,出目の合計を,振った人の席を1として,反時計回りに数えた位置にいる人から,山の上から順に牌(パイ,または,はい)を取ります.4枚を伏せて混ぜてから,サイコロを使わず,好きな牌をつかみ取りしてもよいです.東を引いた人はそのまま着席します.それ以外の人は,反時計回りに東南西北の順になるように座ります.

山を作る

4人で協力して,全ての牌をなるべく伏せて混ぜます.4人ともに,横1列に17枚の牌を,テーブルの縁に短いほうの辺が接するように伏せて並べます.もう1列17枚の牌を並べた牌に接するように並べます.2列の牌を伏せたまま,4人の列がかみ合った井桁のようになるように,机の中央に押し出します.このとき,右手は机の中央に近く,左手は遠くなるように,斜めにします.手前の列を,遠い側の列の上に乗せて,2階建てにします.

最初の親決め

東を引いた人は,サイコロを3つ(2つ)を振ります.席決めと同じように数えた席に座っている人が,最初の親になります.

開門

親は,サイコロ3つを振ります.席決めと同じように,振った人を1として,反時計回りに数え,出目の合計の位置に座っている人の山を,そこに座っている人から見た右端を1として,出目の合計まで左に数えます.その位置の列と,その1つ先の列の間にすき間を空けます.山を数えつくした場合,時計回りに隣の山へと数え続けます.牌の山だけは,他のゲーム進行と異なり,時計回りであることに注意してください.なお,ドラはありません.

配牌(はいパイ)

4人は,親から順番に反時計回りに,山を割った位置の*時計周り側*から,2列4枚の牌を時計周りに取って手元に横1列に並べます.最初の2列は親,次の2列は親の右隣,その次の2列は親の向かい,その次は親の左隣が取ります.これを3周して,全員が12枚の牌を取ったら,親は,左隣の人が9~12枚目の牌を取った次の位置から上段の1枚目と3枚目の牌を取ります.親の右隣の人は,1枚目の下段,ついで,親の向かいは2枚目の上段,親の左隣りは,2枚目の下段の牌をそれぞれ取ります.これにより,親は14枚,子は13枚の牌を手にします.親の枚数が1枚多いのは,最初に山からとる牌を先に引くからです.

手の進行

親は,1枚の不要牌を4つの山に囲まれた中央部に表向きに捨てます.それ以降は,反時計回りに,順番に,山の次の牌を1枚とり,手から不要な牌を1枚捨てることを繰り返します.山は,配牌で使った残りの個所から順番に時計回りに,親以外の人が最後の一枚の牌を引いたときと同じように使います.捨て牌は,誰が何を捨てたか覚えておかなければ分からないように,乱雑に置きます.そのため,何を捨てたかはっきり声に出して言うことが多いです.

上がり

手と山から引いた牌または他の3人の誰かが捨てた牌を合わせた14枚が,同じ牌の2枚組(頭(あたま)または雀頭(ジャントウ))1つと,4つの面子(メンツ)になったら上がりです.上がる人は,そのことを宣言しなくてはなりません.日本語だと,山から引いた牌で上がるときは“ツモ”,人が捨てた牌で上がるときは“ロン”といいます.広東語だと,前者は“チモ”,後者は“シクゥ[食糊]”といいます.

面子は,順子(シュンツ),刻子(コーツ),槓子(カンツ)のいずれかです.順子(シュンツ)は,同じ種類で数字が連続した数牌3枚(9から1はつながらない),刻子(コーツ)は,同じ牌3枚,槓子(カンツ)は,宣言してさらした同じ牌4枚です.

2人以上の人が同時に上がりを宣言した場合,牌を捨てた人から反時計回りにみて順番が一番早い人の上がりになります(頭ハネ).ただし,十三么(日本での通称は国士無双,広東語音サップサムイウ,北京語音シーサンヤオ)だけは,頭ハネに勝ちます.上がり牌に関する制限はありません.上がり牌を見逃したとき,自分の番が来る前に同じ牌で上がることを禁じる人もいます.

ポン[碰]

手に同じ牌が2枚あり,それと同じ牌を他の3人の誰かが捨てたとき,ポン(広東語ではプン)と宣言することにより,捨て牌と手牌2枚で1つの刻子を作れます.ポンする人は,2枚の手牌ともらう捨て牌1枚を,手牌の左端に表向き倒してさらし,1枚手牌を捨てます.ポンに使った牌とポンでもらった牌は,手牌と交換できません.次の番は,ポンをした人の右隣りになります.左隣以外の人が捨てた牌でポンする場合,その人とポンをする人の間の順番は飛ばされます.上がりとポンが同時に宣言された場合,上がりが優先されます.

捨て牌の捨て方同様に,誰が何を捨てたか覚えておくのは技術だという考え方があるので,牌をさらすときにも,誰から牌をもらったか明示しません.これは,これから説明するチーとカンでも同じです.

チー[吃]

左隣りの人が捨てた牌と手にある数字の牌2枚で順子が作れる場合,チー(広東語ではシェン[上])と宣言することにより,捨て牌と手牌2枚で1つの順子を作れます.チーする人は,2枚の手牌ともらう捨て牌1枚を,手牌の左端に表向き倒してさらし,1枚手牌を捨てます.チーに使った牌とチーでもらった牌は,手牌と交換できません.次の番は,チーをした人の右隣りになります.チーとポンが同時に宣言された場合,ポンが優先されます.チーと上がりが同時に宣言された場合,上がりが優先されます.

カン[槓]

カンには,3種類あります.
  • 自分の番で手牌に同じ牌が4枚ある場合(暗槓,アンカン)
  • 手牌に同じ牌が3枚ありそれと同じ牌が捨てられたとき(大明槓,だいミンカン)
  • ポンした牌と同じ牌を山から引くか手牌にあるとき(加槓,チャーカン)
どの場合も,カン(広東語ではコン)と宣言することで,槓子を作れます.カンする人は,4枚の牌を手牌の左側にさらし,開門位置から牌を1枚補充してから,1枚手牌を捨てます.カンで補充する牌は,開門位置から,反時計まわりに1枚ずつ使います.「ドラ」はないので,何回カンしても,流局になりません.この“自分の番”は,チー,ポン宣言したときでも構いません.上がりは,捨て牌に対するカンより優先されます.捨て牌に対するカンは,チーより優先されます.どのカンでも,カンした牌は,4枚を表向きにしてさらします.人によっては(大陸のルールか?),4枚の中1枚を,3枚の中央の上にのせます.

手の終了

誰かが上がるか,山の牌が残り14枚になったら,その手は終了します.カンがあっても,山を必ず14枚残すことに注意してください.残す牌は,ワンパイ(広東語だとウォンパイ.ウォンの字は明らかでなく,旺牌,皇牌などと書く)といいます.手の途中で流局することはありません.親が上がるか,流局の場合,親は移動しません.親以外の人が上がったら,親の右隣の人に親が移動します.山を築くところから,親決めを除いた手順を繰り返します.これで,4人全員が4回目の親を終えるまで打ち続けます.

“旧章(旧ルール)”の役と得点計算

特定の形の手には,飜(ファン.中国語では旧字体を使う香港・台湾を含め「番」)数が付きます.飜数と,上がりかたが山から引いた牌による自摸(ツモ)か,捨て牌による振り込みかで得点が決まります.後で説明する包(パオ,責任払い)が成立していない場合,残りの3人が上がった人に点数を支払います.振り込みの場合,捨てた人,自摸の場合,全員が倍の点数を,それぞれ上がった人に支払います.4~5飜,6~7飜,8飜~は同じ点数です.
例えば,レートは1として,役のない手を振り込みで上がると,振り込んだ人から1の倍の2点,後の2人から1点ずつの合計4点をもらえます.また,平和をツモで上がると,平和とツモ上がりで2飜なので,全員から4の倍の8点ずつ,合計24点をもらえます.
自摸の点の高さは,香港(や台湾)の麻雀に深く定着しています.自摸がお得でないとつまらないという感覚は,リーチ麻雀で,多くの人が,ドラ,リーチ,一発,裏ドラの倍(に比べると自摸3倍はささやかですが)がないとつまらないと思っているのと非常に似ています.

点数は次の通りです.“勒(ラーク)”は,点数が高くなり過ぎないように,一定範囲の飜数を同じものとして扱います.日本の“満貫”とよく似ています.“勒”は,“辣(ラーッ)”ともいいます.
  • 0飜(鷄糊): レートx1
  • 1飜: レートx2
  • 2飜: レートx4
  • 3飜: レートx8
  • 4飜〜5飜(=1勒[ラーク]): レートx16
  • 6飜〜7飜(=2勒): レートx32
  • 8飜〜(=3勒): レートx64

(参考)古いルールでは,親が上がったときは自摸のパターン,子が上がったときは放銃のパターンで点数を支払っていました.子の上がりで倍払うのは親でした.

1飜役

  • 平和(ピンフ): 順子4組.チーできます.待ち,雀頭も何でもよいです.刻子で飜がつく牌の雀頭は認めない人もいます.なお,香港では,上がりの意味で「和」の字を使わず(そもそも発音が合わない),「糊」と書くことが多いです.大陸だと「胡」の方が普通です.
  • 自摸(ツモ): 山から引いた牌での上がり.ポン・チーできます.
  • 白(はく),發(はつ),中(チュン)の刻子・槓子.1組につき1飜.
  • 自分の風の刻子・槓子.親は東,子は親から反時計回りに南,西,北.
  • 場の風の刻子・槓子.親が1巡するまでは東,2巡目は南,3巡目は西,4巡目は北.自分の風と場の風が同じ人は,刻子・槓子1組で2飜付きます.
  • 海底(ハイテー): 山の最後の牌での上がり.必ずツモの1飜もつきます.最後の捨て牌での振込みは,役になりません.
  • 槓上(開)花(カンシャン(カイ)ファー): 嶺上です.槓の補充牌での上がり.必ずツモの1飜もつきます.振り込みになることはありません.
  • 搶槓(チャンカン): 捨てたら上がれる牌を,ポン+1枚の形でカンしたら,その牌を待っていた人は上れます.カンした人の振込み扱いとなります.国士無双だけは,暗槓(手牌4枚の槓)も搶槓できます.
  • 花么(ファーヤオ): 混老頭(ホンロートー)です.字牌と一九牌だけからなる手.必ず対対和の3飜もつきます.

3

  • 対対和(トイトイホー): 4組の刻子.刻子は槓子でも可.
  • 混一色(ホンイーソー): 字牌と1種類の数牌からなる手.
(参考)古くはこの2つの役は2飜で,清一色は4飜,点数の上限も4飜でした.

4飜役

  • 槓上槓(カンシャンカン): 槓の補充牌でまた槓してその補充牌での上がり.常にツモ扱いです.槓上開花,ツモとは複合しません.
  • 小三元(しょうさんげん): 三元牌の刻子(槓子)2つともう1つの三元杯の雀頭を含む手.三元牌の刻子(槓子)2つの2飜とは複合しません.

6飜役

  • 清一色(チンイーソー): 数牌1種類だけからなる手.

8飜(上限)役

“*”は認めない人もいます.
  • 大三元(だいさんげん): 三元牌の刻子(槓子)3つを含む手.6翻にすることもあります.三元牌の刻子(槓子)3つの3飜とは複合しません.
  • 字一色(ツーイーソー): 字牌(東南西北白發中)だけからなる手
  • 四喜和(スーシーホー): 東南西北がそろった手.大四喜(だいスーシー)は,すべてが刻子か槓子の場合.小四喜(しょうスーシー)は1つが雀頭の場合.小四喜は,6飜にする人もいます.
  • 十三么(シーサンヤオ): 国士無双(こくしむそう)です.一九牌と字牌13種類がそろい,そのうち1種が雀頭として2枚ある手.13面待ちで頭を待っても,1つ欠けている牌を待ってもよいです.
  • *坎坎胡(広東語でカンカンウー,音が合わないが刻刻胡とも書く),四暗刻(スーアンコー): 4つの刻子か槓子を1度もポンせずに作り,雀頭をツモ上がりしたとき.待ちを限定せず,すべてのツモ上がりに認める人もいます.大明槓と暗槓はしても構いません.
  • *清么九(チンヤオチュウ): 清老頭(チンロートー)です.一九牌だけからなる手.
  • *十八羅漢: 四槓子(スーカンツ)です.槓子が4つある手.
  • 九子連環(広東語カウチーリンカン): 九蓮宝燈(チューレンポートー)です.1種類の牌の1112345678999の9面待ちで上がったとき.9面待ちの場合に限られる.
  • 天和(テンホー): 親が配牌で上がっていたとき.
  • 地和(チーホー): 親の最初の捨て牌で上がったとき.子の最初のツモでの上がりには,特別な役や点はありません.

包(パオ=責任払い)


9枚ざらし(三副露)の包

清一色,字一色,清么九を作っている人が3組の牌をさらし,9枚さらしたことを宣言したとき,危険牌を捨てて振り込んだ人は,全員分の点数を責任払いします.危険牌は,清一色なら,萬子,索子,筒子のうち集めている種類の牌,字一色なら字牌,清么九なら一か九です.

大四喜,小四喜を作っている人が,東南西北のうち3組の牌をさらし,9枚さらしたことを宣言したとき,東南西北の残り1種を捨てて振り込んだ人は,全員分の点数を責任払いします.

同様に,大三元を作っている人が,白發中のうち2組の牌をさらし,2組さらしたことを宣言したとき,白發中の残り1種を捨てて振り込んだ人は,全員分の点数を責任払いします.

12枚ざらし(四副露)の包

清一色,字一色,清么九を作っている人が3組の牌をさらし,9枚さらしたことを宣言したとき,危険牌を捨てて4組目の牌をポン・チーされたら,役を作っている人がツモ上がりしたとき,全員分の点数を責任払いします.また,振り込み上がりの場合,4組目の牌をポン・チーされた人と振り込んだ人の2人(この両者が同じ人の場合1人)で,全員分の点数を折半して支払います.

大四喜を作っている人が3組の牌をさらし,9枚または12枚さらしたことを宣言したとき,危険牌を捨てて4組目の牌をポンされたら,大四喜をツモ上がりしたとき,全員分の点数を責任払いします.また,振り込み上がりの場合,4組目の牌をポンされた人と振り込んだ人の2人(この両者が同じ人の場合1人)で,全員分の点数を折半して支払います.

同様に,大三元を作っている人が,白發中のうち2組の牌をさらし,2組さらしたことを宣言したとき,白發中の残り1種を捨ててポンされたら,大三元をツモ上がりしたとき,全員分の点数を責任払いします.また,振り込み上がりの場合,3組目の牌をポンされた人と振り込んだ人の2人(この両者が同じ人の場合1人)で,全員分の点数を折半して支払います.

包の宣言

9枚ざらし,12枚ざらしの包が成立するためには,清一色,大三元,字一色,四喜和,清么九を作っている人の宣言が必要とする人と,そうでない人がいます.宣言は,広東語だと,9枚さらしたという意味の“九張落地(カウチェンロックテイ)”,“九張在地(カウチェンチョイテイ)”を発声します.宣言を要求する場合,ポン・チー・カンの直後に宣言しなくても構いません.また,宣言を要求する場合,包の条件に当たるのに宣言しないで上がると,責任払いになるはずの人は,他の人の分の支払いを拒否でき,他の2人は,責任払いを主張して支払いを拒否できます.

やむを得ない捨て牌の免除

包が成立するためには,危険牌でない捨て牌が可能でなければなりません.したがって,手に危険牌しかない人が危険牌を捨てても包になりません.ただし,包の宣言の後に,ポン・チーした場合は,自分で手牌を減らしているので,包になります.

先を包し後を包せず(包先不包後)

例えば,Aさんが萬子とBさんが筒子の清一色に走り,まずAさん,ついでBさんが9枚なきの宣言をしたとき,手に萬子と筒子しかないCさんが,萬子を捨ててAさんの清一色に振り込んだら包(責任払い)になりますが,筒子を捨てて,後に宣言したBさんに振り込んでも,包にはなりません.

残り5枚での生牌(ションパイ)の包(五子包生)

旺牌14枚を残して,牌の山から引ける牌が残り5枚以下になったとき,生牌(ションパイ),つまり1度も捨てられてなく,さらされてもいない牌を捨てて振り込み上がりされた人は,全員分の点数を責任払いします.残り牌の枚数を5枚以下でなく4枚以下とする人もいます.

反則

  • 錯和(ちょんぼ): 上がれない手で上がった人は,他の3人に,上限点x2を払います.
  • 手牌の数が多い・少ない(大相公,小相公): 手牌とさらしている牌の合計が13枚でなくなったら,あがり放棄です.他の人が上がるか,流局まで,そのまま打ち続けます.

花牌

春夏秋冬,梅蘭菊竹の8枚の花牌を加えた144枚で遊ぶ人もいます.

手の進行

牌の山を築くとき,17枚でなく18枚の列を作ります.

花牌が配牌時に手にあったら,親が最初の牌を捨てる前に,親から順番に,手の花牌をさらし,さらしたのと同数の牌をカンと同じ位置から補充します.山から花牌を引いたときも,同様にさらして補充します.補充牌が花牌なら,花牌でない牌を引くまで,さらして補充しつづけます.花牌の補充牌での上がりは,槓上開花と認めない人と認める人がいます.海底牌が花牌だったときは,補充しないで流局です.

  • 無花(ウーファー): 花牌を1枚も引かないで上がると,1飜.
  • 正花(チョンファー): 自分の花牌1枚につき1飜.東(親)は春と梅,南は夏と蘭,西は秋と菊,北は冬と竹.
  • 一台花(イータイファー): 花牌4枚1組につき1飜.組となるのは春夏秋冬または梅蘭菊竹.必ず正花と複合する.なので,一台花を2飜役として,正花とは複合しないとする人もいる.
  • 花胡(ファーホー): 花牌7枚を1人で集めたとき.3飜のツモとみなす.花牌7枚を集めたとき,この役で上がらないでもよい.
  • 大花胡(ターファーホー)または八仙過海(パーシェンクオハイ,はっせんかかい): 花牌8枚を1人で集めたとき.点数は上限.

現代流の旧章

香港の若い(というか老人でない)世代に行われているルールです.役満狙いでない限り,対対和,混一色,清一色の3つの役でしか上がれない縛りがあります.興味深いことに,広東麻雀とは無関係な現代の上海ルールは,この3役と字牌染めしか認めず流局が多いという特徴を共有しています.今まで説明したルールとの相違点は,次の通りです.
  • 3飜縛り.3飜ないと上がれません.したがって,必ず対対和か混一色/清一色,まれに役満を狙うことになります.なお,花牌を使う場合,花牌関連の翻も含めて3飜あれば上れます.
  • 旺牌を14枚(16枚)残さないで使い切ります.
  • 一部の役(例: 清一色7飜)の飜数を引き上げる人がいます.
  • 新章の役の一部(例: 門清)を採用する人がいます.
  • 二人以上同時に上がることを認める人がいます.
  • “全銃制”といって,包でなくても,振り込みを放銃者ひとりの責任払いにする人がいます(というか多数派になりました).伝統的な支払い方法は,これに対して“半銃制”といいます.全銃制には,勝者視点でレートを設定するとき,金額を4で割り切れる数字にする必要がないというメリットがあります.デメリットは,捨て牌の作法や包の規則との相性の悪さと,ベタ下りを促すことです.

 “新章 (新ルール)”の役

新章は旧章に役を追加したものです.追加する役には,“六独”,“十八番”,“無奇不有”の3グループがあります.人により,これ以外の様々な役を挙げる人もいます.中国の文科省に相当するお役所が決めた“国標麻将”(国家標準麻雀の意味)も,点数計算の体系は異なりますが,この一種です.新章(国標も含め)は,存在はよく知られていますが,役が多すぎるので,ほとんど普及していません.

六独

すべて1飜です.
  • 断么.一九字牌を使わない.
  • 不求人.一度もポンとチーをしないでツモで上がる.門清,自摸と必ず複合します.
  • 門清.一度もポンとチーをしないで上がる.
  • 欠門.数牌だけの手で,萬策筒のうち1種類がない.
  • 将眼.258のどれかを頭にする.
  • 独聴.ペンチャン,カンチャン,単騎待ち.

十八番

六独に,次の手を加えます.飜数に定説はありません.役の数が18にならないのは,六独に平和(平糊)を含めるからですが,それだと,六独が7つになってしまいます…
  • 一般高(イーパンカオ).日本ではこの名前がなまってイーペイコーと呼ばれるようになりました.
  • 全帯么.字の通りチャンタです.
  • 五門斉(ウーメンチー).萬索筒風三元の五種類の牌がすべてある手.
  • 一条龍(イーティャオロン).一気通貫です.
  • 四帰一(スークイイー).同じ牌4枚を1つまたは2つの面子で使った手.
  • 全求人(チュエンチウレン).裸単騎で振り込み上がり.
  • 清帯么.ジュンチャンです.
  • 三相逢(サンシャンフォン).三色同順です.清帯么もそうですが,漢字を使ったネーミングセンスの圧倒的な違いを感じないではいられません.
  • 老少(ラオシャオ).同じ種類の牌の123と789
  • 老少碰(ラオシャオポン).同じ種類の牌の111と999
  • 大七対(ターチートイ).名前に反し,リャンペーコーのことです.

無奇不有

十八番に次の(ようなさまざまな)手を加えます.
  • 清四碰.4つポンして上がる.
  • 三暗刻.
  • 小七対.七対子.同じ牌4枚を2組の対子として扱ってよい.
  • 太般高(タイパンカオ).イーペーコーにもう一つ同じ順子を追加.
  • 満庭芳(マンティンファン).頭と4面子の全てに同じ数が含まれる手.
  • 三数.3つの数だけの手.東南西北は1つ,三元牌はもう1つの数としてそれぞれ数えます.
  • 二数.2つの数だけの手.
  • 四帰三.同じ牌4枚を3つの面子で使った手.
  • 四帰四.同じ牌4枚を3つの面子で使った手.
  • 全大.789だけの手.
  • 全中.456だけの手.
  • 全小.123だけの手.
  • 清龍.一条龍(一気通貫)のこと.
  • 花龍.三色一通.
  • 混龍.二色一通.
  • 双龍会.一気通貫のうちの1面子が2組ある手.
    三結義.三色同刻です.
    自搶自槓.自分自身を搶槓.
  • 十八羅漢.
  • 歩歩高.同じ種類の牌で,234 345 456のように1つずつ大きい順子を3組作る.
  • 十三不搭.

2015年8月15日土曜日

広東の「鶏平和」麻雀

広東省の珠江デルタ地区で最も普及,流行しているルールです.このルール名は,広東語では「カイピンウー(鷄平糊)」と読みます.飜なし手と平和の意味です.広東のメジャーなルールとしては,この他に,推倒胡系のルール(跑馬仔),香港ルールとして著名な旧章,香港では上海,台湾では広東と呼ばれる新章があります.鶏平和は,香港「旧章」の古い形である「二二制(混一対対二飜清一四飜)」をインフレさせない方向で発展させたようなルールで,現代の旧章のように安上がりを禁じる(三飜縛りが普通です)代わりに,比較的簡単な役の組み合わせでは,高い点が取れないようにしています.
ルール名と役の名前の「和」について.広東語で実際に使われる発音が「和」の広東語音と合わないため,上がりを意味する「和」は「糊」,「胡」などで表記されることが圧倒的に多いのですが,この記事は日本語なので,あえて「和」に置き換えます.

道具

麻雀牌136枚.萬子,索子,筒子,東南西北白發中.花牌は使いません.
サイコロ2つ.
中国の多くのルール同様に,点棒やポーカーチップは使わないのが普通ですが,もちろん使ってもよいでしょう.

席ぎめ

席ぎめは東南西北1枚ずつを抜き出し,混ぜてから,つかみ取りで決めます.東を引いた人はそのまま着席し,あとは,反時計回りで東南西北になるように座り直します.

配牌

ドラがないことを除けば,日本の麻雀と全く同じなので,省略します.

ゲームの進行

東南西北の一荘戦です.
牌の山が残り14枚になったら流局です.それ以外の流局はありません.特に,ドラがないので,カンの回数に上限がないことに留意してください.流局は,連荘します.
旧章,新章のような頭ハネでなく,二人,三人の同時上がりを認めます.なお,三人同時上がりのときは,振り込んだ人1人の責任払いになります.
上がれる捨て牌を見逃した時は,自分のツモ順が来るまで,同じ牌では上がれません.待ちが複数あるとき,見逃した現物でなければ,上がれます.これ以外の振り聴に類するルールはありません.
細かい相違ですが,誰が何を捨てたか覚えておくのは技術の一部だと考えられているため,捨て牌は,普通は,綺麗に並べません.同様に,ポン・チー・カンした牌を誰からもらったかも示しません.カンは1枚の牌を3枚の中央にのせて山の字のようにします.

役と点数

上がった人は,手にある役の点をもらいます.振り込み上がりの場合,振り込んだ人は2倍,残りの2人はそのままの点を,ツモ上がりの場合は,上がった人以外の3人が2倍の点を,それぞれ上がった人に払います.役の点は,レートに2の飜数乗をかけたものです.符点計算はありません.例えば,レートを1とすると,役なしの手を振り込み上がりしたら,役の点は1x1=1点なので,振り込んだ人は,1 x 2 = 2点,それ以外の2人は1点をそれぞれ上がった人に払います.平和をツモアガリしたら2飜なので,役の点は1x4=4点,したがって,他の3人は4x2=8点を上がった人に払います.
包(パオ,責任払い)のときは,包の人が,全員の点数を1人で肩代わりします.
役の点数は飜(ファン)で表します.中国語では,旧字体を使う香港でも大陸でも「番」の字を使いますが,音も意味も日本の麻雀とそっくりなので,あえて「飜」にします.
役の点数には爆和(広東語でバウウー,北京語でバオフー)という上限があります.爆和は3翻です.これを超える翻数は,特別な役でない限り無視されます.特別な役は,爆和を超えられるますが,特別な役以外の役の翻がつきません.

並の役

チー,ポン,カンは,どの役でもできます.

  • 鶏和 0飜 役なし.なんでも上がれる.
  • 平和 1飜 順子4つ.頭はなんでもよい.待ちもなんでもよい.
  • 対対和 2飜 刻子(槓子でもよい)4つ.
  • 混一色 2飜 字牌と数牌1種だけ.
  • 自摸 1飜 爆和未満のみ認められる.
  • 自風の刻子(槓子でもよい) 1飜 爆和未満のみ認められる
  • 場風の刻子(槓子でもよい) 1飜 爆和未満のみ認められる
  • 三元牌の刻子(槓子でもよい) 1飜 爆和未満のみ認められる

特別な役


  • 清一色 4飜 数牌1種だけ.
  • 混対 4飜 混一色+対対和
  • 清対 5飜 清一色+対対和
  • 混么九 5飜 混老頭
  • 小三元 5飜
  • 小四喜 5飜
  • 字一色 6飜
  • 清么九 6飜 清老頭
  • 大三元 6飜
  • 大四喜 6飜
  • 九子連環 6飜 九蓮宝燈の9面待ち.清一色の飜はつかない.
  • 十三么 6飜 国士無双

特別なケースと包(責任払い)


  • 三人同時上がり.振り込んだ人の責任払い.爆和以下の手は爆和として,爆和を超える手はそのまま採点する.
  • 槓上開花(嶺上開花).爆和以下の手は爆和として,爆和を超える手はそのまま採点する.暗槓とポンにツモ牌を加えてのカンではツモ扱い,暗刻を持っていて捨て牌でカンしたときは,捨て牌を捨てた人の責任払い.
  • 海底撈月(海底摸月).海底牌のツモ上がり.爆和以下の手は爆和として,爆和を超える手はそのまま採点する.
  • 裸単騎自摸の包.4組の副露で裸単騎待ちになり,その人がツモ上がりしたら,4組目を泣かせた人が責任払いする.1人の人が2人以上を裸単騎にした場合,最初に裸単騎になった人がツモ上がりしたときだけが包で,2人目以降は責任払いにならない.これは「包先不包後」といい,すべての包に適用される原則.
  • 大三元自摸の包.中・白・發のうち2つをポン・カンしている人に,残りもう1つをなかれた人は,大三元をツモられたら,責任払い.
  • 大四喜自摸の包.東南西北のうち3つをポン・カンしている人に,残りもう1つをなかれた人は,大四喜をツモられたら,責任払い.
  • チャン槓.カンした人の責任払い.ポンにツモ牌を加えるカンだけに認められる.爆和以下の手は爆和として,爆和を超える手はそのまま採点する.
  • 天和,地和,人和も,上限役.地和は,香港旧章とは異なり,子の第1ツモでのツモ上がりで,先にチー・ポン・カンがあったら成立しない.

2015年8月14日金曜日

四川の「血戦到底」麻雀

(2015.8.18)上がったときの進行と配牌の始め方を訂正しました.
(2015.9.4)カンしたときの補充牌を引く位置が他の麻雀と違うことを強調しました.七対子,海底,絶張の記述が不親切だったので,書き変えました.
(2015.9.5)単釣(裸単騎)の複合と,上がったあとの順番について,加筆しました.
(2018.9.29)上がりのあとのツモ順を修正しました.

四川省成都起源のローカルルールです.「到底」は,中国語で「最後まで」,麻雀では牌の山を残さずに使い切ることなので,訳せば「徹底血戦」です.
四川ルールは,四川,重慶,貴州などで遊ばれる独特な麻雀で,字牌なしの108枚の牌を使い,チーを許さず,上がりには1種類の牌を欠くこと(欠門)を要求します.「血戦到底」は,そこに,1人が上がっても手を終わりにせず,3人が上がるか山を使い尽くすまで打ち続けるルールを加えたことにより,ゲーム展開の多様さをもたらしています.

人数と道具


4人.東南西北白發中を除いた数牌だけの麻雀牌108枚.サイコロ2つ.中国語によるルール記述では,しばしば点数計算にそのものズバリの「元」を使っていますが,トランプのカード,ポーカーチップや碁石などをやりとりし,終わってから精算してもよいと思います.

席決め・親決め・配牌


席は好きな方法で決めます.

牌をすべて伏せ,4人で協力して混ぜあわせます.各人が,牌を伏せたまま,牌の短い辺を自分に向け,テーブルの縁に沿って,同じ長さの牌の列を作り,それに接するように同じ長さの列をもう1列作ります.列の長さに決まりはありませんが,長すぎたり短すぎたりしないようにします.なお,108枚を4人で分けると1人あたり27枚と奇数になるので,全員の列を同じ長さにはできません.牌の列ができたら,2列のまま,テーブルの中央に押し出し,4人の牌が口の字になるようにします.そして,手前の列を中央に近い列の上にのせ,2段の牌の山をつくり,山の位置を微調整します.
ゲームの最初は,年長者などが,牌に囲まれた中でサイコロ2つを振り,出た目の合計の席の人が親です.サイコロを振った人を1として,反時計回りに,右隣が2,向かいが3,左隣が4,自分が5のように数えます.2手目以降は,前の手で最初に上がった人が親です.前の手の最初の上がりが2人以上同時の振り込みだった場合は,それに振りこんだ人が親です.誰も上がらないで流局したときは,前の手の親が引き続き親です.

親が2つのサイコロを牌に囲まれた中で振ります.出た目の合計の席の人は,目の前にある牌の山を,右端を1として,時計回りに,2つの目のうち小さい方の分だけ数え,その列と次の列の間にすき間を開けます.親から反時計回りに,牌の山を2列2段の4枚ずつ,分け目から時計回りに取っていきます.取った牌は,自分の前に,1段の横一列に伏せて置きます.これを3周続けて,全員が12枚の牌を取ったら,親は,次に牌を取る位置の上の段の1枚目と3枚目の2枚の牌を取り,ついで,反時計回りに,順番に,下の段の牌1枚,次の列の上の段の牌1枚,下の段の牌1枚を取ります.これで,親には14枚,残り3人には13枚の牌が行き渡ります.親だけ1枚多いのは,山から引く牌をあらかじめ取っているからです.全員が牌を取り終わったら,各人が,自分だけに見えるように,牌を起こします.

なお,ドラはありません

ゲームの目的と上がりの形


山から牌を引くか,他人の捨て牌をもらい,不要牌を捨てることを繰り返し,上がりを目指します.
上がるには,萬子,索子,筒子の3種類のうち,少なくとも1種類を欠く手でなければなりません.これを欠門(チュエメン)といいます.欠門でないと,上がれないだけでなく,上がった人が2人以下のとき,高い点数を他の3人に払わなければなりません.
また上がるには,自分の手と,山から引いた牌または他人が捨てた牌で,組4つと頭1つまたは同じ牌のペア7組を作らなければなりません.組は,同じ牌3枚,カンした同じ牌4枚,または同じ種類で数字が連続した3枚の牌です.1と9は連続していないので,912は組になりません.頭は,同じ牌2枚です.
下叫(シャーチャオ).聴牌(テンパイ)のことです.上がれる状態,つまり,待っている牌を山から引くか捨てられたら上がれる状態を言います.下叫でないともらえない点,下叫でないと払わされる点があります.

手の進行.親は,手牌のうち不要な牌を1枚捨てます.捨て牌は,自分の前の牌の山よりテーブルの内側に捨てます.ついで,反時計回りに順に,山から1枚牌を引き,手から不要牌を1枚捨てることを繰り返します.山は,ゲームの進行と異なり,時計回りに使います.手の最初は,親が1枚おきに取った残りの下段,後は,上,下,次の列の上,下の順に使い,山を使い終わったら,時計回りで隣の山に移ります.

ポン.手に同じ牌が2枚あり,その牌が捨てられたとき,ポンと発声すれば,手の2枚と捨てられた1枚で3枚組を作れます.ポンした人は,この3枚を表向きにさらし,不要牌を1枚捨てます.次の順番はポンした人の右隣りになります.ポンされた牌を捨てた人とポンした人の間の順番は飛ばされます.ポンと上がりが同時にあったときは,上がりが優先されます.

カン.同じ牌4枚1組のセットを作ります.
直槓(チーカン).大明槓(だいミンカン)です.手に同じ牌が3枚あり,その牌が捨てられたとき,カンと発声すれば,手の3枚と捨てられた1枚で4枚組を作れます.カンした人は,この4枚を表向きにさらし,牌の山の末尾ではなく,次のツモ位置から1枚手に補充し,不要牌を1枚捨てます.次の順番は,カンした人の右隣りになります.カンと上がりが同時にあったときは,上がりが優先されます.
面下槓(メンシャーカン)または弯槓(ワンカン).加槓(チャーカン)です.すでに自分がポンしている牌と同じ牌を山から引いたとき,カンと発声して,引いた牌をポンした牌に加えてさらし,牌の山の末尾ではなく,次のツモ位置から1枚手に補充してから,不要牌を1枚捨てます.このカンは,搶槓(チャンカン)されることがあります.
暗槓(アンカン).手に同じ牌が4枚あるとき,カンと発声してこの4枚の1枚を表,残りを裏向きにしてさらし,牌の山の末尾ではなく,次のツモ位置から1枚手に補充してから,不要牌を1枚捨てます.

なお,チーはありません

上がり.手とさらした牌に今他人が捨てた牌または山から引いた牌を合わせると上がれるなら,上がりを意味する発声とともに,捨て牌または山から引いた牌を手の右側に表向きに置いて上れます.捨て牌での上がりは,日本語では振り込み,放銃など,中国語でも点炮,出銃など火器に因んだ表現をつかいます.山から引いた牌での上がりは,自摸(ツモ)といいます.上がっても,手が終わるまでは,手を公開しません.捨て牌で上がる場合,一度見逃した牌は,自分の順番が来る前には上がれません.なお,ポン・カンで順番が飛ばされたときは,順番が来たものとみなします.これ以外に振り聴のような上がりを制限するルールはありません.発声は,振り込みで上がる場合,四川では“割了(コーラ)”,“割牌(コーパイ)”といいます.日本語の“ロン”でもいいでしょう.同じ捨て牌で2人,3人が同時に上がることもできます.自摸のときは,“自摸(ツモ)”と発声します.上がった人は,その手から抜け,手が終わるまで何もしません.次のツモ順は,上がった人の次の人,2人同時に上がったときは,2人のうち捨て牌から順番が遠い方の人の次の人です.3人が上がるか,牌の山がなくなったら,その手は終わりです.なお,牌の山を一定枚数残すことはしないで,最後の1枚まで使い切ります.

上がりの点数授受


振り込み上がりは,上がり牌を捨てた人が,上がった人に手の点数を払います.2人,3人が同時に上がった場合,上がった人ひとりずつに支払います.ツモのときは,他の上がっていない人全員が,それぞれ手の点数を払います.したがって,手の最初のツモ上がりは,振り込みの3倍の点が得られます.ツモの点が高いのは,中国各地のルールに共通の特徴です.さらにツモを優遇する“自摸加底”というオプションもあり,上がるならツモでないと損です.

手の役と点数


上がった手は,手の中にある役で点数をつけます.点数は,番数または倍数または倍数にレートをかけた金額で示します.番数は,番数から1を引いた回数だけ2倍することを意味することもあれば,レートを1としたときの点数を指すこともあるので,注意してください.この記事では,2倍の方の意味で使います.1番なら,1を引くとゼロなので倍なし,4番なら,1を引くと3なので,3回2倍して8倍です.番数は2倍の回数より1多いので,役が2つ複合する時,番数をそのまま足すと1番余計になります.そのため,複合役に,例えば,清一色+対対和なら清対という名を付けて,4番(x8)役にしています.倍数を使えば,清一色のx4と対対和のx2で8倍なので,ここでは,複合役を列挙しません.
満格(マンゴー)/封頂(フォンディン)/極品(ジーピン).役による点の上限です.満貫と訳すと,これ以上の点数もあるように誤解されるので,四川話の満格/標準語の封頂,極品のままがよいと思います.普通は4番(x8)に設定します.
*は,一般的とはいえないので,認めるかどうか事前に相談してください.


1番(x1)
  • 平胡.屁胡.平和にかぎらず,役のない手はなんでもこれです.「和」をhu2と読むのはまれなので,「胡」,「糊」などの字がよくあてられます.
2番(x2)
  • 対対胡.4つの刻子か槓子と頭.大対子(タートイツ),対子胡(トイツホー)ともいう.
3番(x4)
  • 清一色.萬子だけ,索子だけ,または筒子だけ.
  • 暗七対(ガンチートイ).七対子.同じ牌2枚のペア7組.同じ牌4枚をペア2組としてよく,その場合,下記の槓または帰の倍が付く.ただしカンしたら七対子にならない.
  • *将対(チャントイ).2,5,8だけの対対胡.対対胡と複合しない.
  • *帯么.4つの組と頭すべてに1か9がある.
  • **単釣.4つの組をポン,カンして,手牌1枚で頭を待って上がる.対対胡と複合しない.
上がり方による2倍
  • 槓上花(カンシャンファー).槓の補充牌での上がり.カンが直槓(チーカン)/大明槓(だいミンカン)なら,カンした人の振り込みで,ツモ扱いされません.ただし,カンの補充牌でもう一度カンして上がった場合は,ツモです.
  • 槓上炮(カンシャンパオ).槓の捨て牌で振り込み.
  • 搶槓(チャンカン).待ち牌を面下槓(加槓)したとき.カンした人の振り込み扱い.
  • 槓または帰(クイ).手に同じ牌が4枚あれば,カンしてもしなくてもつく.
  • *海底(ハイテイ).山の最後の牌での自摸上がり,および最後の牌を引いた人の捨て牌での振り込み.
  • *絶張(チュエチャン).待ち牌が1枚以外すべて捨てられるか,ポン,カンで公開されているとき,残りの1枚での上がり.

自摸加底.自摸の場合,手役の点に(x1)を加える人がいます.例えば,対対胡をツモったら,レートが1なら,1x2+1x1=3点ずつ上がってない人からもらいます.
天和,地和は極めてまれですが,認めるなら,満格/封頂/極品にします.

カンのボーナス


下雨(シャーユー,雨降り)刮風(グワフォン,風吹き)といいます.カンがあったらメモしておき,手の終わりに精算します.役の満点とは無関係に授受します.この点は上がるか下叫(聴牌,上がりを待っている状態)でなければ,もらえません.死叫(スーチャオ,待ち牌がすべて捨てられたかポン・カンされている)で認める人と認めない人がいるので,事前に決めてください.

  • 下雨.暗槓は,上がっていない人から2番(x2)ずつ.
  • 刮風.加槓は,上がっていない人から1番(x1)ずつ.大明槓は,喰われた人から喰った人に2番(x2).


槓の捨て牌で振ったら,その槓でもらう下雨,刮風の点を振り込んだ人に渡します.2人以上に同時に振り込んだ場合,振り込んだ人が,2人目以降にも,同じ点数を渡します.

欠門と下叫の罰金


3人が上がらずに手が終わった時には,査花猪(チャーファーチュ),査叫(チャーチャオ)を行います.

査花猪(チャーファーチュ).欠門のチェックです.さらした牌も含めた手に3種類の牌がある人は,上がった人も含む他の3人に,それぞれ満格/封頂(!)分の点数を払います(賠花猪,ペイファーチュ).満点を設けない青天井なら,10点など事前に別途決めた点数を払います.

査叫(チャーチャオ).下叫(聴牌)のチェックです.下叫(聴牌)していない人は,聴牌している(が上がっていない)人に,その手で上がったときの最小または最大の点数を払います(賠叫,ペイチャオ).最小か最大かは,事前に決めてください.死叫(スーチャオ,待ち牌が全部捨てられたか食われている場合)を下叫と認めるかどうかも,事前に決めてください.
このルールに関連して,最後の4枚の自摸及び捨て牌で上がれるときは,上がらなければなりません.