2014年12月27日土曜日

天九

ものすごい久しぶりに書いてみます.日本語の記事も探してみると多い香港・広東のドミノのような天九牌という牌を使ったゲームです.

天九牌は,ドミノのように,1-1 から 6-6 までの 2 つのさいころの目が描かれた牌で,21 種中 11 種の牌は 2 枚ずつあります.黒地に白が普通 (古くは白地に黒) で,肉厚でやや縦長,1 と 4 の目および 6 のゾロ目の半分は赤,3 のゾロ目は目が十字形に並んでいます.ドミノのような 2 つの目を区切る線や釘はありません.

左が天九牌,右が西洋ドミノ
この牌はかなり厚いですが,牌九というカジノゲーム用のものはより薄いです
牌と同じ名前の“天九”というゲームのルールを紹介します.牌の強弱を覚えるのが少し面倒ですが,トランプのゲームと似ているようで似ていない不思議な面白さがあります.主な参考資料は,既存の資料と自身の子供時代からの経験を基にルールを整理した Alone in the fart の“天九入門”
(http://aloneinthefart.blogspot.com/2009/02/blog-post_04.html) です.

人と道具


4 人,天九牌 1 式 32 枚,サイコロ 2 つ.

目的


各手の最終周の勝負に勝つことです.

席決め


4 人が好きな席に着き,反時計回りに順にさいころを振ります.出た目の合計が大きい順に,好きな席を選びます.

親決め


 最初の親は,席決めで一番大きな目を出した人がさいころを振って決めます.さいころを振った人を 1 として,反時計回りに 2,3,4 と数えて目の合計に当たる人が最初の親になります.その後は,前の手に勝った人が親になります.

配牌


4 人で協力して,牌を伏せて混ぜます.各人が牌を 4 枚伏せて重ねた山を 2 つ作ります.全員が作った山を場の中央に寄せ集め,親が長い辺に向かい合うように,8 列 4 段の牌の壁を作ります.自分の山をどこにいれても構いません.親の向かいの人が,山の取り方を言い,サイコロを振ります.親決めと同じようにサイコロを振った人から数えて目の合計に当たる人から,反時計回りに,言われた方法でひとり当たり 8 枚の牌を取ります.よくある取り方は,次の通りです.山の取り方を言わなかった場合どれにするかは事前に決めます.
  • 端から順に 2 列ずつ.端は,さいころが止まったところに近い方です.以下も同じです.
  • 上から順に 8 列ずつ
  • 下から順に 8 列ずつ (実際には左隣りから順に時計回りに取る)
  • 端から順に 1 列ずつ
  • 端から順に 1 列目と 3 列目,2 列目と 4 列目,5 列目と 7 列目,6 列目と 8 列目
  • 中央の 2 列から順に中の 2 列ずつ
  • 両端の 2 列から順に外の 2 列ずつ

勝負


1 手の最初の周は,親が先手です.以後の周は,直前の周の勝者が先手です.

先手は牌を手から表向きにして場に出します.先手が出せる牌は 1 枚,ペア,3 枚組み,4 枚組みのいずれかです.他の人は,親の右隣りから順番に,反時計回りに,先手と同じ枚数の好きな牌を手から出します.同じ種類の牌や勝てる牌を持っていても出す義務はありません.表向きで出ている牌のうち一番強いものに勝てないか勝ちたくないときは,伏せて出します.勝てる牌があり,勝ちたいときは,表向きに出します.4 人が牌を出し終ったら 1 周の勝負は終わります.一番強い牌を表向きで出した人が,その周に勝ちます.周に勝った人は,場に出された牌を取ります.取った牌は 4 枚ずつの山にして手元に置きます.

1 枚勝負の勝敗


牌が,他の牌に勝つには,種類が同じ (文なら文,武なら武) で,強さが上でなければなりません.種類と強さが同じときは,先に出た牌が勝ちます.

牌の種類は,文 (中国語で文子) と武 (中国語で武子) の 2 種類です.

文は,同じ牌が 2 つずつあり,同じ牌の強さは同じです.強い順に,(1) 6-6 (天),(2) 1-1 (地),(3) 4-4 (人),(4) 1-3 (鵝,古くは和だったらしい),(5) 5-5 (梅花),(6) 3-3 (長衫),(7) 2-2 (板□(□=登が上,几が下の字)),(8) 5-6 (斧頭),(9) 4-6 (紅頭十,屏封など),(10) 1-6 (高脚七),(11) 1-5 (伶淋六,鈴淋六など,音はリン・ラム・ルッ(ク)だが字は一定しない.2 文字目は広東語の方言字でワ冠に林) です.

文牌.同じ牌が2枚ずつありますが,写真では省略しました.


武は,1 枚ずつで,目の合計が同じ牌の強さは同じです.強い順に,(1) 3-6 または 4-5 (九),(2) 2-6 または 3-5 (八),(3) 2-5 または 3-4 (七),(4) 2-4 (六,大鶏(つくりは隹,以下同様)),(5) 1-4 または 2-3 (五),(6) 1-2 (三,山鶏,幺鶏など) です.なお,香港などでは,幺は始めの“く”の下半分がなく“ノ”になっている字を使います.
武牌

ペア勝負の勝敗


ペアが他のペアに勝つには,種類が同じで,強さが上でなければなりません.例えば,文のペア“6-6 と 6-6”は,文のペアである“1-1 と 1-1”には勝てますが,武のペア“2-5 と 3-4”や,混合の“1-3 と 1-4 (または 2-3)”には勝てません.種類と強さが同じときは,先に出た牌が勝ちます.

ペアの種類は,至尊,文のペア,武のペア,混合ペアの 4 種類です.これら以外の 2 枚の牌の組み合わせは,先手で出すことも表向きに出すこともできません.裏向きで出すときは,ペアを構成できるできないに関係なく好きな 2 枚を出せます.

至尊 (しそん,チー・チュン) は,“1-4 と 1-2”の 1 組しかありません.したがって,至尊は,先手で出せは必勝,後手で出せば必敗です.

文のペアは,1 枚の強さが同じ牌からなり,強い順に,(1) “6-6 と 6-6”(天対または双天,以外同様),(2) “1-1 と 1-1”,(3) “4-4 と 4-4”,(4) “1-3 と 1-3”,(5) “5-5 と 5-5”,(6) “3-3 と 3-3”,(7) “2-2 と 2-2”,(8) “5-6 と 5-6”,(9) “4-6 と 4-6”,(10) “1-6 と 1-6”,(11) “1-5 と 1-5”です.

武のペアは,1 枚の強さが同じ牌からなり,強い順に,(1) “3-6 と 4-5”(雑九),(2) “2-6 と 3-5”(雑八),(3) “2-5 と 3-4”(雑七),(4) “1-4 と 2-3”(雑五) です.

混合ペアは,天と九,地と八,人と七,鵝と五からなり,強い順に,(1) “6-6 と 3-6”または“6-6 と 4-5”(天九),(2) “1-1 と 3-5”または“1-1 と 2-6”(地八),(3) “4-4 と 3-4”または“4-4 と 2-5”(人七),(4) “1-3 と 1-4”または“1-3 と 2-3”(鵝五) です.

3~4 枚勝負の勝敗


ある 3~4 枚組みが他の 3~4 枚組みに勝つには,構成が同じで,強さが上でなければなりません.例えば,文 2 武 1 の 3 枚組み“6-6 と 6-6 と 3-6 (または 4-5)”は,同じ文 2 武 1 の 3 枚組み“1-1 と 1-1 と 2-6 (または 3-5)”には勝てますが,文 1 武 2 の“1-1 と 2-6 と 3-5”には勝てません.

3~4 枚組みの構成は,天と九,地と八,人と七,鵝と五で,文 2 武 1,文 1 武 2,文 2 武 2 の 3 種類です.これら以外の 3~4 枚の牌の組み合わせは,先手で出すことも表向きに出すこともできません.裏向きで出すときは,3~4 枚組みを構成できるできないに関係なく好きな 3~4 枚を出せます.

文 2 武 1 の 3 枚組みは,強い順に,(1) “6-6 と 6-6 と 3-6”または“6-6 と 6-6 と 4-5”(三文天九),(2) “1-1 と 1-1 と 3-5”または“1-1 と 1-1 と 2-6”(三文地八),(3) “4-4 と 4-4 と 3-4”または“4-4 と 4-4 と 2-5”(三文人七),(4) “1-3 と 1-3 と 1-4”または“1-3 と 1-3 と 2-3”(三文鵝五) です.

文 1 武 2 の 3 枚組みは,強い順に,(1) “6-6 と 3-6 と 4-5”(三武天九),(2) “1-1 と 3-5 と 2-6”(三武地八),(3) “4-4 と 3-4 と 2-5”(三武人七),(4) “1-3 と 1-4 と 2-3”(三武鵝五) です.

4 枚組みは,強い順に,(1) “6-6 と 6-6 と 3-6 と 4-5”(四天九),(2) “1-1 と 1-1 と 3-5 と 2-6”(四地八),(3) “4-4 と 4-4 と 3-4 と 2-5”(四人七),(4) “1-3 と 1-3 と 1-4 と 2-3”(四鵝五) です.

手の勝者


手の最後の周に勝った人が手の勝者です.これを“結 (広東語でキッ(ト))”といいます.日本語でも“結びの一番”というように,“締め”の意味です.結には,最後の周に取った牌も含め少なくとも 2 山の牌を取らなければなりません.したがって,手が残り 1 枚のとき,1 山も牌を取っていなければ,結の資格がないので,必勝の天や九でも裏向きに出さなければなりません.最終周が 2 枚以上の勝負なら,1 山も牌をとれていなくても,勝負に勝てます.

点数計算


手の勝者は,他の 3 人と点数を受け渡しします.

手の勝者以外の 3 人は,自分が取った 1 山 4 枚の牌の山の数が 0 なら 5 点,1~3 なら“山数 - 4”点に,親の倍,勝ち方の倍,完封の倍をかけた点数を勝者に払います.5 と 6 の場合,それぞれ入一 (ヤップ・ヤット),入二 (ヤップ・イー) といい,“山数 - 4”点に親の倍だけをかけた点数を勝者から受け取ります.親が入一,入二で負けたときは,例外的に,親の倍もつきません.

(親の倍) 点を支払う人か受け取る人が親の場合,点数に親の倍がかかります.例えば,親が手に勝てず取った山が 1 山の場合,(4 - 1)×2=6 点を手の勝者に払います.なお,ハイリスク・ハイリターンの親をおいしく辞めることを認めないために,親が入一,入二で負けたときにもらう点には,親の倍はつきません.親を続けて務めたときは,この倍を 2 度目の親では 3 倍,3 度目の親では 4 倍と親が続く限り増やします.

(勝ち方の倍) “至尊”での結を包尊 (パウ・チュン) といい点数が倍になります.4 枚組みでの結を四大包 (セイ・タイ・パウ) といい,点数が 4 倍になります.最弱の武“1-2”での結を幺結 (イウ・キッ)といい,点数が倍になります.包尊,四大包,幺結による倍は,勝者に払う点だけにつき,勝者から点をもらう入一,入二にはつきません.
最終周に 1-2 を先手で出して,2-4 が結なら,擒 (カム) といい,1-2 を出した人は,勝者への支払いをひとりで肩代わりします.そのうえ,払う点数が 2 倍になります.擒のときも,入一,入二の人は,勝者から擒の倍なしに点をもらいます.

(完封の倍) 8 山すべてを取って勝ったとき,結の 2 山縛りの助けなしに勝てなかった場合は七支 (チャッ・チー) といい点数が倍になります.それ以外の完封勝ち,つまり 2 枚以上か,確実に勝てる 1 枚で最終周を勝った場合は八支 (パッ・チー) といい点数が 4 倍になります.

祝儀


最終周以外で至尊の先手と 4 枚組みの勝負があったら,すぐに祝儀を受け渡しします.親が受け取る点と払う点には,親の倍がつきます.

(1) 賀尊 (ホー・チュン)

至尊“2-4 と 1-2”を先手で出したら,他の 3 人から 2 点ずつもらえます.最終周の場合,包尊の倍になり,この祝儀はありません.

(2) 四大賀 (セイ・タイ・ホー)

4 枚組みの周に勝った人は,他の 3 人から 4 点ずつもらいます.最終周の場合,四大包の倍になり,この祝儀はありません.

文武尊


文武尊を認めるか認めないかは事前に決めます.

文の最弱牌である 1-5 のペアを“文尊 (ぶんそん,マン・チュン)”,“2-4 と 1-2”を“武尊 (ぶそん,モウ・チュン)”とし,ともに至尊扱いします.

最終周の勝ち方による倍の条件に,1-5 (文で最弱の牌) 1 枚の先手を追加します.

最終周の先手で 1-5 を 1 枚で出し,1-6 を出した人に勝たれたら,先手は 勝者への支払いを肩代わりします.最終周の先手の 1-2 が 2-4 に負けたときと同じ倍を適用します.

バリエーション


ネットにある天九のルールは少ないのに,内容が記事によって大きく違います.これが地域や遊び手による違いなのか,情報源の記事が指摘するような衰退に伴うルール伝承の混乱なのかは不明です.

情報源以外のルール記述は,入一,入二を特別扱いしません.しかし,情報源の作者の知る限り,天九を遊ぶ人でこのルールを使わない人はいないとのことです.入一,入二を特別扱いしない場合,親でも子でも親の倍と勝ち方の倍がつきます.

親が始めの周に天,九,至尊を出したら八支を認めない人がいます.この場合に七支も認めない人もいます.

文尊を認めるとき,文尊が高脚対(1-6のペア)だけには負けるとする人がいます.これを認める場合,文尊の先手に高脚対で結を取ったら擒とみなす人がいます.

結でも賀尊と四大賀を認める人がいます.

四大賀を 4 枚組みを出した人全員に認める人がいます.先手で出した人,先手で出して勝った人だけに認める人もいます.

擒の倍を 4 倍にする人がいます.情報源が 4 倍は成功の難易度と失敗時のペナルティが釣り合わないと 2 倍にした理由を説明しているので,4 倍の方が多いかもしれません.

4 枚組みに擒を認める人がいます.

配牌に手役があったら,役に応じて,七支または八支として扱う人がいるとする記事があります (Alan Chan さんの天九遊戯規則.中国語版 Wikipedia の記述は明らかにこの引用).しかし,手役を説明している人は,手役が一般的でないと明記しています.

戦術


一番大切なのは,親に結を取らせないことです.そのために,親が牌を取るのを防げるなら防ぐ,最初の三順で他の子が勝っている牌に勝たないなどします.

親のとき,安全策を取って,先手のうちに取れる牌を取る人もいます.こうすると,手に勝つ可能性は減りますが,損失も減らせます.

0 件のコメント:

コメントを投稿