2013年9月18日水曜日

ブロートまたはブロットまたはベロート(3)

ブロート(ブロット)は,ルールのバリエーションがあまりにも多いゲームなので,主な選択肢を分類・整理しました.時間があれば,シュナプセンに関してwww.psellos.comが行ったような体系的な比較(もともとは大改訂前のpagatが誤っていることを証明するためでした.その甲斐あって,現在のpagatは,オーストリア・ハンガリーで実際に遊ばれているルールを掲載するようになりました.pagatが直ってしまったおかげで,psellosの記事が面白くなくなってしまったのは,少し残念なのですが…)をwww.ludi.com,www.ludicash.com,gameduell.fr,www.beloteenligne.fr,www.belote-en-ligne.frなどのルールを対象にやってみたいのですが,いくらなんでも,選択肢が多すぎですよね…

(2013.9.20) 最大のオプションの1つである切札なし(サン・ザトゥー,sans atout)とすべて切札(トゥ・タトゥー,tout atout)の有無を書き忘れていました.
(2013.9.20) 細かい表現を直しました.

1. ゲームの種類


このゲームのバリエーションの中で最大の相違点は,切札の決め方と手役の有無です.オンラインゲームでは,このそれぞれを異なるゲームとして扱っています.

1.1 切札の決め方

主に地域,プレーヤー仲間による違いです
 - 手札を5枚配って,表向きの切札候補を使う.
 - 手札を8枚配りきって,目標点数を競るときに切札を言う.
 - 手札を8枚配りきって,切札を競る(フランスにはない.ブルガリア,キプロス).

1.2 手役

どちらもよく行われます
 - あり(古い)/なし(新しい)

2. 進行


他の項目の多彩さを見ると,こういうことは,どうでもいいことに思えますが,のせておきます.
 - 反時計回り(普通)/時計回り
 - 配り方は,3枚,2枚,3枚(普通)/2枚,3枚,3枚/3枚,3枚,2枚(コアンシュでないと不可能)

3. 切札の決め方


3.1 表向きのカードを使う場合のせり

 - 2周目に切札なし,すべて切札を: 認めない/認める.
 - 切札指名後,他の人が,切札なしかすべて切札で取って代わることを: 認めない/認める
 - 2周目に誰も切札を指名しなかったら: 配り手を交代して配り直し/配り手が切札を指名する(ヴァシュというバリエーション).
 - 表向きのカードがV(J)のとき: 取らなくてもよい/取らなければならない.

3.2 目標点か切札を競る場合のせり

 - 切札なし,すべて切札を: 認めない/認める
 - コアンシュ(シュール・コアンシュ)を順番を飛び越して: 言える(普通)/言えない
 - より高い目標は,コアンシュ(シュール・コアンシュ)に: 勝てない/勝てる(bridgée(ブリッジ化)というバリエーション).
 - カポ(とジェネラル)にコアンシュを: 言えない/言える
 - ジェネラルを: 認めない/認める

4. 極端に偏った手の除外


 - 手札が11点未満なら: 配り直し/配り直しにできない

5. 手役宣言


 - 最初の手札を出すときに宣言し,1周目の勝負が終わったら手役を公開する /
   手札を8枚手にしたら,なるべく早く宣言・公開する (カジュアルなルール).
 - 切札でない同一の手役の最上位のカードが等しいときは: 引き分け(普通) / 配り手の右隣を最上位としてカードを配られる順が早い方の勝ち
 - 1枚のカードを複数の手役(belote-rebeloteを除く)には: 使えない(普通)/複数の手役に使える(まれ)
 - 8の4枚組は: 手役でない(普通)/その手のすべての手役を無効にする.
 - 7の4枚組は: 手役でない(普通)/その手のすべての手役を無効にする/その手を配りなおしにする.
 - 切札なしの場合,4枚組は: 手役でない/Aの4枚組みだけ200点の手役/Aは200点,10は150点,K,Q,J,9は100点/9は手役と認めない

6. カード勝負


 - 相手のカードが勝っていて,先手と同じ印も勝っているカードより強い切札もないとき: 負ける切札があれば出さなければならない/好きなカードを出せる

7. 得点


 - 1手ごとに得点を: 丸めない/10点単位に五捨六入する/5点単位に丸める
 - 点数を丸める場合: 2チームの合計が160点になるように丸め方を工夫する/しない
 - 勝敗判定に使う点は: 最後の10点も含めたカード点だけ/カード点+belote-rebelote/
   カード点+belote-rebelote+手役
 - 点数を競る場合: 勝敗判定用の点数が競り落とした点以上なら成功とする/勝敗判定用の点数が競り落とした点以上でかつ相手の点より大きかったら成功とする
 - belote-rebelote の点は: 引き渡し対象にならず常にもらえる/失敗したら相手に渡す
 - 手役の点は: 失敗したら相手に渡す/カポ負けのときは相手に渡す/引き渡し対象にならず常にもらえる
 - 切札なしのときの点は: そのまま/2倍にする
 - 切札なしのときのカード点(最後の10を含む)は: そのまま/Aを19点にする/162をかけて130で割る
 - すべて切札のときの点は: そのまま/2倍にする
 - すべて切札のときのカード点(最後の10を含む)は: そのまま/162をかけて258で割る
 - 9とAの4枚組の点は: 150点と100点(普通)/140点と110点(まれ)
 - 2チームが同じ手で目標点を超えたら: 合計点の高いチームの勝ち(普通)/最後の手に勝ったチームの勝ち
 - カポ負けの手で得た点で勝つことを: 認める/認めない
 - (シュール)コアンシュの倍は: 競った目標点だけにつく/勝ったチームが得るすべての点につく
 - せりで目標点を決める場合,勝ったチームは: ゲームの点と競った目標点の合計を得る(普通)/競った目標点だけを得,ゲームの点は成否判定にしか使わない

2013年9月6日金曜日

ブロートまたはブロットまたはベロート(2)

フランス語版Wikipediaから,ブロート(ブロット)の戦術とマイナー(?)な変種を紹介します.
 

切札について

 

切札は,ブロートで一番大事な印で,“古典的”戦略も,切札にまつわるものです.普通は,複数の最強のカード (V と 9)があり,相手チームより枚数の多い印を切札に選びます.こうすれば,切札を狩って,相手チームの切札をなくせます.相手に切札がなければ,切られるリスクなしに,A を出せます.切札を指名するとき,パートナーと勝算を検討できないので,パートナーとその癖をよく知って,手札を読む必要があります.

切札を指名したチームの相手は,なるべく切札を守り,相手を切り,無駄なく相手の切札を使わせるよう務めます.

 

切札の選び方

 

切札を選ぶときは,8枚の手札のうち,5枚しか配られていないので,偶然に左右されると思いがちです.古典ルールよりコアンシュを好む人も,このことを理由に挙げることが多いです.しかし,カードをシャッフルしないルールがあるので,配りきるルールより,古典ルールのほうが,より技術的な面もあります.

配り手の右隣りの人は,後で配られる手札が,表向きのカードと同じ印になりやすいと期待できます.カードを混ぜないので,表向きのカードと後から配られる手札は,直前の手で同じカード勝負に出されたカードの可能性があるからです.自分の味方が配り手の右隣りのときも,同様です.

前の手でカードがどう出されたか憶えていると,表向きのカードにより,配られたカードとこれから配られるカードをある程度読めるので,切札の選択に役立ちます.カードをどれだけ憶えられるかは,人により違いますが,10を取ったA,Aを切った7のように決め手となる勝負は憶えやすいです.

表向きのカードがV(J)のときは,取るメリットが大きいです.切札のV(J)は最強のカードなので,カポ負けを必ず回避できます.また,手に他のV(J)がないとき,相手がV(J)4枚組の手役を作るのを防げます.

誰も仮の切札を受け入れなかったら,2周目には,表向きのカードが切札でない手札になることを考慮します.Aが最も良く,次は10です.
最後の人に順番が来たときは,表向きの印に誰も興味がなく,カードを取るリスクが少ないことを当てにできます.相手チームの失敗を期待する戦法を取られたときは,例外です.しかし,この戦法は,長い目でみれば,勝利の機会を捨てているので,損です.手がよいときは,ためらわずにカードを取るべきです.取らないチームは,ゲームにあまり勝てません.

勝たず (アンパス Les impasses)


勝たず (アンパス) とは,最上位の勝てる手札を故意に出さないことです.そのすぐ下のカードも出ないことを期待して,そのカードを後のカード勝負で取ることを目指す作戦です.

例: 
  • Aさんがダイヤの8を出し,Bさんがダイヤが手にないので別の印のカードを捨て,CさんがダイヤのD(Q)を出したとき,ダイヤのAとV(J)を持つDさんは,10がまだ出てないので,次のダイヤの周にAで10を取ることを期待してV(J)を出しました.
  • 手に2または3枚ある印にAがあるとき,後にこの印の周でAで10を取ることを期待して,Aでないカードを先手で出しました.
  • 手役を認めるゲームで,10を含む3枚続きをさらしたとき,Aを持つ味方が,その印の数札を出したら,故意に弱いカードを出したことが分かるので,10でその勝負に勝ちます. 
 
アンパスには,2つのリスクがあります.1つは,アンパスの2周目を切られること,もう1つは,アンパスした周に相手に10を出されることです.
 
アンパスするかどうかは,これまでに出されたカードによります.切札を全部狩った後か,相手に切札がなくなったときは,自分たちの勝てるカードを切られるリスクはなくなります.しかし,相手に10で勝たれるリスクは残ります.アンパスを試みる印がそれまで一度も出されていないときは,相手も含めた全員がその印を持っている可能性が高いです.普通,取って攻めるチームは,相手の切札を狩るので,慣れたプレーヤーは,そのあと残っているカードによって,リスクを判断します.
 

最後の10点 (ディス・ド・デール Le dix de der)

 

最後のカード勝負は,10 点を追加で得られるので重要です.この 10 点だけでなく,カード勝負も,よくディス・ド・デールと呼ばれます.

この勝負では,10点を超えるカード点を得られることが多いです.1勝を期待して持っていたAなどが残って,ディス・ド・デールが,20,30,または40点にもなることが珍しくありません.したがって,可能なら,最後まで切札を温存するとよいです.
 

Wikipedia(など)に紹介されているバリエーション

 

カードの配り方

  • 2枚ずつ,3枚ずつと配る人もいます.コアンシュでは,3枚-3枚-2枚,2枚-3枚-3枚という配り方もあります. 
  • 配り間違えたら,配り手を変えずに配りなおしにする人と,配り手の相手のチームに162点を与えて,配り手を変えて配りなおす人がいます.

 

切札の決め方

  • 表向きのカードがV(J)なら,配り手の右隣が取らなくてはならないとする人がいます.
  • 誰かが切札を選んだら,他の人が,切札をせり上げることを認める人がいます. 
  • 11点未満しか手になく切札もない場合,ゲームを無勝負にできるとする人がいます. 
  • 手札が11点未満の人がいたら,手を流す人がいます. 

 

カード勝負

点数の高いカードというあいまいな内容を含むルールなので,実戦で揉めごとをおこす可能性がありますが,フランス語版 Wikipedia には,こんな記述がありました.
  • 先手の印が手になく,相手チームのカードが勝っているとき,それに勝てる切札がなかったら,点数の高いカードを捨てなければならないとする人がいます(アルカレット,alcarette). 

 

手役

  • 7か8の4枚組を宣言すると,味方・相手のすべての手役を無効にできるとする人がいます.
  • 7の4枚組を宣言すると,その手を流せるとするところがあります. 
  • 手役の点も,失敗しても奪われないとする人がいます. 
  • 1枚の手札を複数の手役に使うことを認める人がいます(フランス語Wikipedia以外で見たことがないので,まれなバリエーションである可能性があります).
  • 手役が引き分けのとき,カードを配られる順が先の人が勝ちとする人がいます(www.pagat.comの英語記事でしか見たことがないので,まれなバリエーションである可能性があります).
 

点数計算

  • 点数を5点単位で丸める人もいます.
  • 両チームが同じ手で目標点を超えた場合,最後の手に勝ったチームの勝ちとする人がいます.  
  • 手役の点を成功・失敗の判定に使う場合に,カポ負けしたチームは,その手で相手を失敗させることも,ゲームに勝つこともできないとする人がいます.