2015年3月22日日曜日

カリブ海諸国のドミノ

ドミノは,カリブ海の国々では,一番盛んな伝統ゲームです.国や地域により,ルールの大枠は同じでも,少しずつ違いがあります.一見単純そうに見えますが,奥の深い遊びです.手始めには,ジャマイカかプエルトリコのチバ(完封戦)あるいは国際ドミノ連盟式を試してみるとよいと思います.あとは,牌の枚数が多いだけでなく,使わない牌がある西キューバ式が,他と大きく異なるゲームです.

(2015.3.24)共通なルールはまとめて書き,細かい違いだけを分けて書くようにしました.
(2015.3.25)ドミニカの手詰まり(tranque)で同点のときのルールを修正しました.キューバ東部のルールを追加しました.
(2015.3.27)ベネズエラとコロンビアのルールを追加しました.
(2015.3.31)ドミニカのgeneralとpatioを追加しました.選択肢をアルファベット順に並べました.2~3人の個人戦のバリエーションを追記しました.色分けはうるさく見えるのでやめました.
(2015.4.3)メキシコのルールは,国際ドミノ連盟のルールであることを示すとともに,同連盟の規則に合わせて,手を始める人の決め方(同点でも引き直さない)と,手詰まりで引き分けの後に手を始める人(特別扱いしないで反時計回りに交代する)を修正しました.
(2015.4.6)ゾロ目がなくても手詰まりは起きるので,ゾロ目をすべて除いた遊び方の注記を削除しました.例えば,場に6-0 0-1 1-6 6-2 2-3 3-6 6-4 4-5 5-6と出ると,6の目がある牌はもうないので,手詰まりです.
(2015.4.11)メキシコのルールを追加しました.これまでメキシコと書いていたルールは,国際ドミノ連盟のルールにしました.
(2015.4.12)プエルトリコの手詰まりの勝ち判定に最小点プレーヤーのチーム,点数の丸め方に四捨五入を追加しました.
(2015.5.24)最初の牌の置き方を追記しました.

凡例


[*]: 選択肢に明記していない場合
[C]: コロンビア.
[D]: ドミニカ.“ヘネラル(general)”
(略記[Dg]),“パティオ(patio)”(略記[Dp]),別の資料によるパティオ系の200点戦(略記[D2]),500点戦(略記[D5])があります
[F]: 国際ドミノ連盟(Federación Internacional de Dominó)による世界選手権のルールです.
[H]: ハバナなどのキューバ西部.9-9まである55枚組のドミノを使うのが特徴です.
[J]: ジャマイカ.チーム戦だけでなく個人戦も盛んです.
[M]: メキシコ.
[P]: プエルトリコ.2種類の点数戦(略記[Pp])と,ジャマイカルールに似た完封戦の“チバ(chiva)”(略記[Pch])があります.
[S]: サンティアゴ・デ・クーバなどのキューバ東部.“ドミノー(dominó)”(略記[Sd])と“カピクーア(capicúa)” (略記[Sc])の2種類のルールがあります.
[V]: ベネズエラのタチラ,スリア,メリダ,カラカス,カラボボ,ガイヤナ市など.マラカイボ周辺の変種は[Vm].
[2]: 2人戦.7枚ずつで始めて残りの牌を使う(略記[2a]),10枚ずつで始めて残りの牌を使わない(略記[2b])の2種類の遊び方を紹介します.
[3]: 3人戦.7枚ずつで始めて残りの牌を使う(略記[3a]),0-0だけを除いた27枚を配り切る(略記[3b]),ゾロ目7枚を除いた21枚を配り切る(略記[3c])の3種類の遊び方を紹介します.

道具


  • [*]0-0から6-6のドミノ28枚
  • [H]0-0から9-9のドミノ55枚
  • [3b]0-0から6-6のドミノから0-0をのぞいた27枚
  • [3c]0-0から6-6のドミノからゾロ目7枚をのぞいた21枚.

人数


  • [*]2人のチーム2組.同じチームどうしは向かい合って座ります.ほとんどの地域で,これ以外の遊び方はまれです.
  • [2]2人の個人戦
  • [3]3人の個人戦
  • 4人の個人戦

牌の配り方


全員で牌を裏返しにし,1人が裏向きのままかき混ぜます.牌を混ぜ終わったら,全員が自分の牌をつかんで手元に並べます.このとき,牌を混ぜた人は,他の人より先にとらないようにします.全員が自分の牌を取ったら,自分だけに見えるようにします.専用の台か,卓の縁に立てかけることが多いです.なければ牌を立てたり,手で支えて持っても構いません.1人あたりの牌の枚数は,

  • [*]7枚
  • [H]10枚.残り15枚は,伏せたまま場の端に寄せ使わない
  • [2b]10枚.残り8枚は,伏せたままにして使わない.
  • [3b]9枚

手に5枚以上ゾロ目があるとき,公開すれば,牌を配り直しにできるとする人がいます.

手の始め方


手を始める(スペイン語でサリダ(salida),マノ(mano),ジャマイカではpose)人は,ゲームの最初の手は,
  • [*]目の合計が一番大きなゾロ目の牌を持つ人が,そのゾロ目の牌を場に出します.
  • [F]牌を配る前に1人1枚ずつ牌を引き,目の合計が一番大きい牌を引いた人が好きな牌を1枚出します.合計が同点の場合,2つの目のうち大きい方を比べます.
  • [Hの別法,3c]牌を配った後に,あまった牌を1人1枚ずつ引き,目の合計が一番大きい牌を引いた人が好きな牌を1枚出します.同点の場合,同点の人だけが牌を引き直します.引いた牌は,伏せて戻し,ゲームには使いません.
2手目以降は,
  • [*,Sc]前の手に勝ったチームの2人で相談して決め,好きな牌を1枚出します.手の内容を話してはいけません.
  • [F,Mの別法,Sd,V]前の手を始めた人の右隣りの人が好きな牌を1枚出します.
  • [Pの別法,個人戦]前の手に勝った人が好きな牌を1枚出します.

なお,最初の牌がゾロ目のときは,出す人から見て横向きに,そうでないときは,大きい方の目が自分側になるように縦向きに置く習慣があります.

手の進め方


最初の人が牌を場に出したら,反時計回りに,順番に,場に出せる牌が手にあれば,1枚出します.場に出せる牌がなければ,何も出さないでパスします.場に出ている牌の列の両端と同じ目のある牌が,場に出せます.同じ目どうしが隣り合って接するように置きます.列が長くなりすぎたら,反時計回りに曲げて,S字の裏返しのような形にします.牌の列は枝分かれせず,牌をつなげる場所は,常に列の両端2個所しかありませんが,習慣的に,ゾロ目の牌は,他の牌とT字に交わるようにおきます.

[2a,3a]手に出せる牌がなく,配られていない牌が残っているときは,パスでなく,出せる牌を引き当てるまで,配られていない牌を1枚ずつ手に加えます.牌が残っていないときは,パスします.

手の終わり


誰かが手の牌を全部出し切って上がるか,全員が牌を場に出せない手詰まり(スペイン語でシエレ(cierre)またはトランカ(tranca)またはトランケ(tranque),ジャマイカではblock)になったら,その手は終わりです.上がりは上がった人の勝ちです.手詰まりのとき誰/どのチームを勝ちとするかは,場所や人により次のように違います.
  • [*,D25の別法,Pの別法]手の目の合計が一番小さい人(が属するチーム)
  • [Dg,F,M,P,V]チームの目の合計が小さいチーム
  • [Dp25,Pの別法]最後に牌を出した人とその右隣の相手のうち手の目の合計の小さい方が属するチーム
  • [Cの別法]最後に牌を出した人が,相手チーム2人のどちらよりも手の目の合計が少なければ,最後に牌を出した人のチーム,相手のどちらかのほうが少なければ,相手チーム.なお.これは,バホ・カウサ,サラゴサ,アンティオキア県でよく行われるルールです.


手詰まりの目数比べで同点の場合,
  • [*,Mの別法,P]誰も/どのチームも得点しない.次の手を始める人はゲームの最初と同じように決める.
  • [C,P]最後に牌を出した人のチームの勝ち.
  • [D,Mの別法,P,S]手を始めた人に近い人/手を始めたチームの勝ち.
  • [F,V]どちらのチームも得点しない.
  • [M]最後に牌を出した人のチームの負け.
  • [Vm]個人で手の目の合計を比較して,一番小さな人がいるチームの勝ち.

ゲームの勝敗


(1) 勝ち数による方式


  • [J,Pch]勝った人/チームは勝ち点1を得ます.0勝の人/チームがいる状態で[J]6勝/[Pch]4勝した人/チームの勝ちです.全員が1勝以上したら,ゲームを最初からやり直します.
  • [Jの別法]0勝の人/チームがなくても,6勝した人/チームの勝ちとします.

(2) 合計得点による方式


負けた人の手の目の合計を得点するルールと,全員の手の目の合計を得点するルールがあります.
  • [C,Dg2,H,V]勝った人/チームは,自分(たち)以外の人の手の目の合計を得点します.
  • [Dp5,F,Vm]勝ったチームは,自分たちを含む全員の手の目の合計を得点します.
  • [M]負けたチームは,自分たちの手の目の合計を得点します.
  • [Pp]勝った人/チームは,自分(たち)を含む全員の手の目の合計を1の桁を切り捨てて/四捨五入して得点します.
  • [S]勝ったチームは,自分たちを含む全員の手の目の合計の1の位を切り上げ10で割った点を得点します.ただし1点は2点にします.したがって目の合計が3~20点なら,すべて2点です.

次の目標点に先に達した人/チームの勝ちです.
  • [C,V]100点
  • [Dgp]100点または200点
  • [D2]200点または250点
  • [D5]500点
  • [F]200点または300点
  • [H]150点または100点または200点
  • [M]100点(に達したチームの負け)
  • [Pp]200点または500点
  • [S]20点

特別な点数


ジャマイカ


  • [J]全員/両チームが1勝のときは,ゲームをやりなおしにしないで,次の手を始める人をゲームの始めと同じように決め,勝った人/チームを2勝,他の人/チームを0勝にする人がいます.
  • [J]手詰まりの目数比べで同点だったとき,次の手に勝った人/チームは2勝にする人がいます.

キューバ東部


  • [S]ゲーム(手ではなく)で最初に相手をパスさせたチームに2点.この2点は0点のチームは得られず,パスさせたチームは,その手が終わるまでに,手に勝ったことによる点を得なければなりません.
  • [Sc]では,上がり牌が,牌の列のどちらの端にもつなげられる(カピクーア(capicúa))なら,そのとき得られる点を倍にします.ただし,ゾロ目では認められません.

ドミニカ


次の場合にボーナス点が得られます.
  • [D2]手の最初に出した牌で相手がパスしたら10点.ただし,味方もパスしたら取り消し.
  • [D5]手の最初に出した牌で相手がパスしたら25点.ただし,味方もパスしたら取り消し.
  • [Dp]手の最初に出した牌で相手がパスしたら25/30点.
  • [D25]3人を連続でパスさせたら25点.
  • [Dp]3人を連続でパスさせたら25/30点.
  • [D25]上がり牌が,牌の列のどちらの端にもつなげられるなら25点.ただし,ゾロ目と0のある牌では認められない.
  • [Dp]上がり牌が,牌の列のどちらの端にもつなげられるなら25/30点.ただし,ゾロ目では認められない.

プエルトリコ


200点勝負で次のボーナス点を認める人がいます.
  • [Pp]相手をパスさせたとき,手で最初のパスなら20点,それ以後は1回10点.


500点勝負のボーナス点は次のとおりです.
  • [Pp]最初の手に勝ったら100点,2つ目の手に勝ったら75点,3つめの手に勝ったら50点,4つ目の手に勝ったら25点のボーナス点.5つ目以後の手にはボーナスはつかない.
  • [Pp]上がり牌が,牌の列のどちらの端にもつなげられるなら100点.ただし,ゾロ目では認められない.
  • [Pp]上がり牌が,0-0なら100点.
  • [Pp]上がったときに,牌の列の両端が1なら100点を与える人がいます.
  • [Pp]ゲームで最初に手詰まりで勝ったとき100点を与える人がいます.